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見積・積算

材料の値上がりを見積に反映するには|Excel単価表の更新ルールと担当の決め方

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この記事の要点
  • ✓値上がりが見積に入らない原因の多くは、単価表が人ごと・ファイルごとに散らばり、いつの単価か分からないことにあります。単価表は一か所にまとめ、適用開始日を必ず残します。
  • ✓見積書には有効期限と単価の基準日を書き、期限を過ぎた見積は単価表を引き直してから受注します。下書きは単価表を参照し、発行時に値として確定させます。
  • ✓更新は「通知を受ける人」「単価表を直す人」「見積で確かめる人」を分けて決め、改定通知が届いてから見積に入るまでの手順を紙1枚にしておくと、担当が休んでも止まりません。

鋼材の値上げ通知が届いたのに、営業が手元に持っている古いExcelで見積を出してしまい、受注してから材料を発注したら利益がほとんど残らなかった。建設業でも、資材の仕入先から改定の連絡があったのに、積算担当の単価表が去年のままだった。こうした話は、東海の製造業・建設業の現場でよく聞きます。この記事では、材料の値上がりを見積に確実に反映させるために、Excelのままでもできる単価表の更新ルールと、担当の決め方を順に書きます。新しいシステムを入れる前に、まず社内の決めごとで止められる赤字を止める、という内容です。

1. 値上がりが見積に反映されない会社で起きていること

値上がりが見積に入らないとき、担当者の不注意だけが原因であることはまれです。多くの場合、単価の情報が社内のあちこちに分かれていて、どれが最新か誰にも分からない状態になっています。仕入先からの改定通知は購買や工場長の机に届き、見積を作る営業や積算担当には伝わらない。伝わっても、各自が自分のExcelを直すので、直した人と直していない人が混ざる。こうして、同じ部材なのに見積を作る人によって単価が違う、ということが起きます。

  • ・単価表が営業ごと・部署ごとに別のファイルになっていて、どれが正本か決まっていない
  • ・過去の見積書をコピーして新しい見積を作るので、古い単価がそのまま引き継がれる
  • ・単価を上書きしているため、いつ・いくらから変わったのかが残っていない
  • ・見積書に有効期限がなく、半年前の見積で注文が来ても、そのまま受けてしまう
  • ・仕入先の改定通知を受け取る人と、単価表を直す人と、見積を出す人の間の連絡が決まっていない

どれか一つでも当てはまれば、値上がりの反映漏れは起こり得ます。逆に言えば、単価表を一つにする、改定日を残す、見積に期限を書く、連絡の順番を決める、の四つをそろえれば、Excelのままでもかなりの漏れは防げます。以下、その順に具体的な作り方を書きます。

2. 単価表を一か所にまとめ、正本を一つに決める

最初の仕事は、社内に散らばっている単価表を集め、正本のファイルを一つに決めることです。共有フォルダの決まった場所に「単価表」というファイルを一つ置き、ほかのファイルは使わないと社内に宣言します。各営業の手元にある単価表は、集め終わったら古いものとして別フォルダに移し、ファイル名の頭に「旧」と付けておきます。消してしまうと過去の見積の確認に困るので、移すだけにします。単価表の列は、次のように持たせると、後で改定を重ねても崩れにくくなります。

表1 単価表に持たせる列と、その理由
列の名前入れる内容持たせる理由
品目コード社内で決めた番号(材質・規格・寸法ごと)品名の書き方の揺れで別物扱いになるのを防ぐ
品名・規格材質、板厚、寸法、メーカー指定の有無など見積を作る人が目で見て選べるようにする
仕入先主に買っている仕入先の名前改定通知がどこから来るかを追えるようにする
仕入単価仕入先からの最新の単価売価の元になる数字を一か所に置く
単位kg、本、枚、m、式など単位違いによる計算間違いを防ぐ
適用開始日その単価が有効になる日いつの単価かを見積と突き合わせられるようにする
更新者・根拠直した人と、改定通知の日付や書類名後で理由をたどれるようにする
出典:東海DX伴走室編集部の整理

ここで品目コードを付けるのは、同じ鋼材を「SS400 t9」「SS400-9t」「SS 9ミリ」のように人によって書き分けていると、単価を直したつもりでも別の行が古いまま残るからです。コードは凝ったものにする必要はなく、材質の頭文字と連番程度で足ります。また、仕入単価と売価は列を分けておきます。売価を直接書き込むと、仕入が上がったときにどこまで売価に乗せたかが分からなくなります。売価は見積側で、仕入単価に自社の掛け方を当てて出す形にしておくと、仕入単価を一か所直すだけで見積に反映されます。

ポイントExcelの「テーブルとして書式設定」で単価表をテーブルにしておくと、行を足しても見積側の参照範囲が自動で広がります。品目コードの列には「データの入力規則」で重複を入れられないようにし、単価表のシートは更新担当以外が直せないように保護をかけておくと、うっかり上書きされる心配が減ります。

3. 改定日と履歴を残す書き方

単価を上書きで直していると、「この見積を出したとき、単価はいくらだったか」が後から分かりません。値上がりの反映漏れに気づくのは、たいてい受注後の原価の締めや、仕入の請求書が届いたときです。そのとき履歴がなければ、どこで漏れたのか確かめようがありません。そこで単価は上書きせず、改定のたびに新しい行を足していく形にします。同じ品目コードに、適用開始日の違う行が複数並ぶ形です。

  • ・単価を変えるときは、古い行を消さずに、新しい単価と適用開始日の行を下に足す
  • ・適用開始日は、通知が届いた日ではなく、仕入先が示した「この日の出荷分から」の日付を入れる
  • ・まだ正式な単価が決まっていない予告だけの段階は、備考に「予告」と書き、単価の列は空けておく
  • ・見積側は、品目コードと見積日から「見積日以前で最も新しい適用開始日の行」を引く(XLOOKUPやMAXIFSで組めます)
  • ・単価表のシートとは別に、改定の通知書をPDFで保存するフォルダを作り、更新者・根拠の列にファイル名を書く

見積側の式が難しく感じるなら、まずは単価表に「現行」という列を一つ足し、最新の行にだけ印を付けるやり方でも構いません。見積は印の付いた行だけを引くようにすれば、式は品目コードで探すだけで済みます。改定のときは古い行の印を外し、新しい行に印を付けます。大事なのは、古い単価が消えずに残り、いつから変わったかが表の上で見えることです。

注意見積の下書きは単価表を参照して作り、客先に出す時点で単価を「値」として貼り付けて確定させます。参照のままにしておくと、後で単価表を改定したときに、すでに出した見積書の金額まで変わってしまいます。確定した見積書には、使った単価表の基準日(最も新しい適用開始日)を欄外に書いておきます。

4. 見積の有効期限と価格の条件を見積書に書く

単価表をどれだけ整えても、出した見積に期限がなければ、古い価格での注文を断る根拠がありません。見積書の定型の欄に「有効期限」を設け、日付で書きます。「発行日より〇日」と書くより、「〇年〇月〇日まで」と日付で書くほうが、客先も社内も迷いません。期間の長さは、扱う材料の値動きと、見積から注文までにかかる日数を見て、自社で決めます。値動きの大きい鋼材を多く使う見積は短めに、加工賃が中心の見積は長めに、と品目の性格で分けても構いません。

  • ・有効期限:日付で書く。期限を過ぎた注文は再見積とする旨を添える
  • ・単価の基準日:どの時点の材料価格で計算したかを書く
  • ・材料価格の変動時の扱い:期限内でも、主要材料の価格が大きく変わった場合は協議のうえ見直す、という一文を入れる
  • ・納期と材料手配の時期:受注から材料手配まで間が空く案件は、手配時点で価格を確定させる条件を検討する
  • ・支給材・指定材の有無:客先が材料を支給する場合や、メーカー指定がある場合は明記する

こうした条件は、営業が見積のたびに書き足すのではなく、見積書のひな形の下段にあらかじめ入れておきます。客先との取引基本契約に価格の見直しの取り決めがある場合は、その内容と見積書の文言が食い違わないように、一度、総務か経理の責任者が両方を並べて確かめておくと安心です。建設業で工期の長い工事を請ける場合も、契約書の変更協議の条項と見積条件を合わせておきます。

ポイントExcelの見積書のひな形に、有効期限のセルを置き、条件付き書式で「今日の日付が有効期限を過ぎたら赤く塗る」ようにしておくと、古い見積をコピーして使い回したときにすぐ気づけます。同じように、単価表の基準日が見積日から大きく離れていたら色が変わるようにしておくと、古い単価表を開いたままの見積も見つけやすくなります。

5. 誰が更新するかを決める:担当の分け方

単価表のルールを作っても、更新する人が決まっていなければ、忙しい月にはすぐ止まります。よくあるのは、見積に詳しいベテランが一人で単価表を直していて、その人が休んだり現場に出たりすると改定が止まる形です。更新の仕事は、通知を受ける、単価表を直す、見積で確かめる、の三つに分け、それぞれに主担当と代わりの人を決めておきます。小さな会社で人数が足りなくても、少なくとも「直す人」と「確かめる人」は別にします。自分で直した単価を自分で確かめても、間違いには気づきにくいからです。

表2 単価の更新にかかわる役割と担当の例
役割主な仕事担当になりやすい人
通知の受け手仕入先からの改定通知・見積回答を受け取り、決まったフォルダに保存して更新担当へ知らせる購買・資材の担当、工事部の発注担当
単価表の更新担当通知をもとに単価表へ新しい行を足し、適用開始日と根拠を書く総務・事務の担当(見積を出さない人が向く)
確認担当更新後の単価表を通知書と突き合わせ、影響の大きい品目を営業・積算に知らせる営業課長、積算の責任者
見積作成者有効期限内の見積かを確かめ、期限切れの見積は単価を引き直す営業、積算担当
最終判断値上がり分を売価にどこまで乗せるか、客先への再見積を決める経営者、工場長、工事部長
出典:東海DX伴走室編集部の整理

単価表の更新担当には、見積を出さない総務・事務の担当を当てるのが向いています。営業が自分で単価を直すと、受注したい案件の前では値上げを入れるのをためらう、といったことが起こりがちです。仕入単価は事実として機械的に入れ、売価にどこまで乗せるかは別の人が判断する、と分けておくと、単価表そのものはいつも正しい状態に保てます。

6. 改定通知が届いてから見積に入るまでの手順

担当を決めたら、通知が届いてから見積に反映されるまでの流れを紙1枚にまとめ、単価表のファイルと同じフォルダに置いておきます。手順が文字で残っていれば、担当が替わっても同じように回せます。流れの例は次のとおりです。

図1 価格改定の通知から見積への反映までの流れ
  1. 01通知を受け取る購買・発注担当が改定通知を受け取り、通知書をPDFで決まったフォルダに保存。更新担当に知らせる
  2. 02単価表に新しい行を足す更新担当が品目コードごとに新単価と適用開始日の行を追加し、根拠のファイル名を書く。古い行は消さない
  3. 03突き合わせて確かめる確認担当が通知書と単価表を見比べ、桁や単位の間違いがないかを確かめる
  4. 04影響を知らせる確認担当が、改定された品目を使う出し中の見積と、受注済みで材料未手配の案件を洗い出し、営業・積算に伝える
  5. 05売価と再見積を決める経営者・工場長・工事部長が、売価への反映と、客先への再見積や価格協議の要否を決める
  6. 06見積のひな形で確かめる見積作成者が新しい単価で下書きを作り、有効期限と単価の基準日を書いて発行する
通知が来なくても、主要な鋼材・資材は月に一度など決まった日に仕入先へ単価を確かめる日を設けると、通知の見落としを拾えます。

この流れで見落とされやすいのが、四つ目の「出し中の見積と、受注済みで材料が未手配の案件」の洗い出しです。単価表を直しても、すでに客先に出ている見積や、受注したばかりで材料をまだ買っていない案件には、値上がりは自動では反映されません。見積の控えを一覧にしておき、品目コードで検索できるようにしておくと、どの案件が影響を受けるかをすぐに拾えます。過去の見積の保存のしかたは、別の記事「過去の見積書の探し方」でも扱っています。

7. 受注の前後で赤字を止める確認の場面

単価表と見積書を整えても、最後に赤字を止めるのは、受注の前後で誰かが一度立ち止まって確かめる場面があるかどうかです。確認の場面を増やしすぎると現場が回らなくなるので、見積から材料の手配までの間に、確かめる場所を決めておきます。

図2 見積から材料手配までの間に置く確認の場面
  1. 見積の作成時単価表の基準日が新しいか、ひな形の色の警告が出ていないかを見積作成者が確かめる
  2. 見積の発行時単価を値として確定し、有効期限・単価の基準日・価格変動時の条件が入っているかを確かめる
  3. 注文を受けたとき注文日が有効期限内か、見積後に単価表の改定がなかったかを受注担当が確かめる
  4. 材料を手配するとき発注単価と見積に使った単価を購買担当が見比べ、差が大きければ営業と最終判断者に知らせる
  5. 月末の締め見積単価と実際の仕入単価の差が出た案件を一覧にし、単価表の更新漏れがなかったかを振り返る

とくに効くのは、注文を受けたときの確認です。有効期限を過ぎた見積への注文や、見積後に単価表が改定された品目を含む注文は、受注担当がその場で営業に戻すと決めておきます。客先に対しては、見積書に書いた有効期限と条件があるので、再見積をお願いする根拠になります。月末の締めで見積単価と仕入単価の差を並べる作業は、最初は手間に感じますが、どの品目で更新が遅れがちかが見えてくるので、単価表の運用を直す材料になります。

8. 明日から始める順番と、整えた後の姿

全部を一度にそろえようとすると、日々の見積を回しながらでは手が止まります。最初は、値上がりの影響が大きい主要な鋼材・資材だけを対象にし、品目を絞って始めます。そこで回し方が固まってから、副資材や外注加工賃へ広げていきます。

  • ・社内にある単価表のファイルをすべて集め、正本の置き場所とファイル名を決める
  • ・主要な鋼材・資材に品目コードを付け、適用開始日と根拠の列を足した単価表を作る
  • ・見積書のひな形に、有効期限・単価の基準日・価格変動時の条件の欄を入れる
  • ・通知の受け手・更新担当・確認担当と、それぞれの代わりの人を決める
  • ・通知から見積への反映までの流れを紙1枚にし、単価表と同じフォルダに置く
  • ・月末の締めで、見積単価と仕入単価の差が出た案件を振り返る日を決める
図3 単価表の更新ルールを決める前と後
導入前
  • 営業ごとに別の単価表があり、どれが最新か分からない
  • 改定通知は購買の机に届いたまま、見積を作る人に伝わらない
  • 単価を上書きするので、いつから変わったか残らない
  • 過去の見積をコピーして、古い単価のまま新しい見積を出す
  • 期限のない見積で、半年後の注文をそのまま受ける
導入後
  • 共有フォルダの単価表が一つだけで、全員が同じ単価を引く
  • 通知は決まった人が受け、更新担当と確認担当を通って見積に入る
  • 改定のたびに行を足し、適用開始日と根拠が残る
  • ひな形の色の警告で、古い単価や期限切れにすぐ気づく
  • 有効期限と条件が見積書にあり、期限切れの注文は再見積に回す

ここまでの仕組みはExcelで組めますが、品目が増え、見積を作る人が増えてくると、単価表の行が膨らんで探しにくくなったり、ファイルの同時編集で上書きが起きたりします。そうなったら、単価表と見積の控えを一つのしくみにまとめることを考える時期です。その場合も、この記事で決めた品目コード・適用開始日・有効期限・担当の分け方は、そのまま新しいしくみの土台になります。先にルールを決めておくことが、後の移行を楽にします。

9. よくあるご質問

Q
仕入先から改定の予告だけが来て、正式な単価がまだ決まっていないときはどうすればよいですか。
A
単価表には予告であることを備考に書き、単価の列は空けておきます。そのうえで、予告の対象品目を使う見積には、有効期限を短めにするか、正式な単価が決まった時点で見直す旨を条件に書いておきます。正式な通知が来たら、通常の手順で新しい行を足します。
Q
見積を出した後に値上がりした場合、客先に再見積をお願いしてもよいのでしょうか。
A
見積書に有効期限と、材料価格が大きく変わった場合の協議の一文が入っていれば、それを根拠に相談できます。期限や条件がない見積だと話がしにくくなるので、まずはひな形にこれらの欄を入れるところから始めてください。取引基本契約に取り決めがある場合は、その内容に沿って進めます。
Q
単価表の更新担当を総務・事務の人にすると、材料の知識が足りず間違えませんか。
A
更新担当は、通知書に書かれた単価と適用開始日を、品目コードに合わせて写すことに役割を絞ります。材料の知識が要る判断(どの品目に当たるか、売価にどう乗せるか)は確認担当と最終判断者が受け持ちます。品目コードと品名・規格の列が整っていれば、写し間違いは確認担当の突き合わせで拾えます。
Q
過去の見積書をコピーして新しい見積を作るのをやめられません。どうすればよいですか。
A
コピーそのものをやめるより、コピーしても古い単価が残らない形にします。見積書の単価欄を単価表の参照に戻すボタンや手順を用意し、発行前に必ず引き直すことをひな形の手順に書きます。有効期限のセルの色の警告を入れておけば、古い見積をそのまま使ったときに気づけます。
編集部
この記事を書いた人
東海DX伴走室編集部
東海4県の製造業・建設業のDXを支援しています。制度の内容は、公開日時点の公的機関の資料をもとにしています。
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