東海DX伴走室
見積・積算

図面の拾い出しを時短するには|紙・PDF・CAD別の数量拾いの手順とツール

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この記事の要点
  • ✓拾い出しの手間は「測る」よりも、図面をそろえる・縮尺を確かめる・集計表へ写す・見直すといった前後の作業にかかっています。
  • ✓紙・スキャンPDF・CADから出したPDF・CADデータで拾い方と時短のねらい所が違うため、自社に届く図面の形から道具を選びます。
  • ✓速くしても拾い漏れを出さないために、図面リストとの照合、色のない所の確認、特記仕様書の読み込みなど、見る所を決めた確認手順を持ちます。

1. 図面の拾い出しで時間がかかっているのはどこか

見積や積算の担当者に一日の作業を聞くと、拾い出しの時間の多くは、スケールを当てて「測る」ことそのものよりも、その前後にかかっています。図面を探して机に並べる、縮尺を確かめる、どこまで拾ったかを色鉛筆で塗る、拾った数字を集計表に写す、別の人が見直す。こうした細かな作業が積み重なって、一件の見積に何日もかかってしまいます。

時短を考えるときは、いきなり道具を探すのではなく、まず作業を段階に分けて、自社ではどこに時間を取られているかを確かめるところから始めます。下の表は、拾い出しの作業を段階ごとに分け、手間の元になりやすいところを整理したものです。

表1 拾い出しの段階と、手間の元になりやすいところ
段階主な作業手間の元
図面をそろえる意匠図・構造図・設備図、改訂版の確認最新版がどれか分からない、必要な図面が足りない
縮尺・単位を確かめる縮尺、寸法の単位、縮小コピーかどうかA3縮小やPDFの拡大表示で縮尺が狂う
測る・数える長さ・面積・個数を拾う同じ形の部屋や部材を何度も測っている
印をつける拾った所の塗りつぶしやチェック印のつけ方が人によって違い、途中で分からなくなる
集計表に写す拾い表から内訳書・見積の様式への転記写し間違い、単位の換算ミス
見直す別の人や本人による確認見る所が決まっておらず、全部を拾い直すような見直しになる
出典:東海DX伴走室編集部の整理
ポイント測る作業を速くする道具は多くありますが、「写す」「見直す」の手間は道具を替えただけでは減りません。拾った数字を手で集計表に写しているなら、そこが最初の見直し先になります。

また、届く図面の形によって、手間のかかり方も変わります。紙で届くのか、PDFで届くのか、CADデータまでもらえるのか。次の表で、図面の形ごとの拾い方と、時短をねらう所を並べておきます。

表2 図面の形ごとの拾い方と時短のねらい所
図面の形主な拾い方時短のねらい所
紙の図面スケールで測り、電卓で計算し、拾い表に書く拾う順番と色分けを決め、拾い表への書き写しを減らす
スキャンしたPDF画面上で縮尺を合わせ、目で位置を合わせてなぞる拾った数字を一覧で書き出し、転記をなくす
CADから出したPDF線に吸い付くように測り、記号を数える測る速さと、改訂前後の比べやすさを生かす
CADデータ記号の数・線の長さ・面積をソフトで集計する任せてよい項目を見極め、手で拾う所を絞る
出典:東海DX伴走室編集部の整理

2. 紙の図面での拾い方と、道具を替えずにできる時短

紙の図面では、スケールを当てて長さを測り、電卓で掛け算をして、拾い表に書き込むのが基本の流れです。紙のよさは、図面全体を広げて見渡せることと、書き込みが自由なことです。一方で、縮小コピーした図面では縮尺が合わなくなり、測った長さをいちいち換算しなければなりません。複数の図面を見比べるのにも、机の広さが要ります。

紙のまま時短するには、新しい道具よりも「拾い方の決まり」を社内でそろえるほうが効きます。担当者ごとにやり方が違うと、引き継ぎや見直しのたびに、まず相手のやり方を読み解く時間がかかるからです。

  • ・拾う順番を工種ごとに決める(例:躯体、仕上げ、建具、設備の順に、図面の左上から時計回り)
  • ・色鉛筆の色を項目ごとに固定する(床は青、壁は赤など)。誰が見ても、どこまで拾ったかが分かる
  • ・拾い表の様式を社内で一つにし、部屋名・通り芯・寸法・数量の列をそろえる
  • ・同じ形の部屋や繰り返しの部材は、一つだけ拾って「×個数」で書く
  • ・縮小コピーした図面には、実際の縮尺を余白に大きく書いておく

紙の拾い出しで見落とされがちなのが、手書きの拾い表からExcelの集計表へ打ち直す作業です。拾い表をはじめからExcelの様式にしておき、測ったその場で打ち込む形にするだけでも、写す回数が一回減ります。打ち直しが減れば、転記のミスを探す見直しも減ります。

注意紙の図面をスキャンしてPDFにする場合、スキャンの設定によって縮尺がずれることがあります。通り芯の間隔など、寸法が書いてある線で一度測って、数字が合うかを確かめてから使ってください。

3. PDF図面での拾い方|画面の上で測る・数える

元請や設計事務所から届く図面は、PDFが多くなっています。PDFの図面は、計測の機能を持つPDFソフトや拾い出し用のソフトを使うと、画面の上で線をなぞって長さを、範囲を囲んで面積を、記号をクリックして個数を数えられます。紙を印刷して広げる手間もなくなります。

図1 PDF図面で数量を拾う流れ
  1. 01縮尺を合わせる寸法が分かっている線の両端を指定し、ソフトに実際の長さを覚えさせる。ページごとに縮尺が違う図面は、ページごとに合わせる
  2. 02拾う項目と色を決める床・壁・天井・建具など、拾う項目ごとに線の色と名前を分けて登録する
  3. 03測る・数える線をなぞる、範囲を囲む、記号をクリックする。拾った所は画面上に色が残る
  4. 04一覧を書き出す項目ごとの合計をExcelやCSVに書き出し、集計表や見積の様式に貼る
  5. 05図面と並べて確かめる図面全体を縮小表示し、色が付いていない部屋や部材がないかを見る
最初の縮尺合わせを飛ばすと、すべての数字がずれます。この手順だけは省かないでください。

PDFでの拾い出しのよさは、拾った所が画面に色で残り、拾った数字がそのまま一覧になることです。紙のように拾い表へ書き写す作業がなくなるので、転記のミスが起きにくくなります。改訂図面が届いたときに、前の版と重ねて違う所だけを表示できる道具もあり、全体を拾い直す手間を減らせます。

気をつけたいのは、同じPDFでも中身が「画像」か「線のデータ」かで扱いが変わる点です。CADから直接書き出したPDFは線の情報を持っていて、線に吸い付くように測れます。紙をスキャンしたPDFは写真と同じなので、なぞる位置は人の目で合わせます。届いたPDFを大きく拡大して、線がくっきりしたままならCADから出したもの、ぼやけてくるならスキャンしたもの、とおおよそ見分けられます。

ポイント画面での拾い出しは、モニターが小さいと図面全体を見渡せず、かえって疲れます。拾い出しの担当者には、大きめのモニターか2画面で作業できる環境を用意すると、図面と一覧を並べて見られます。

4. CADデータがあるときの拾い方と、任せてよい範囲

設計側からCADデータ(DXF・DWG・JWWなど)をもらえる場合は、拾い出しの手間をもう一段減らせます。CADの図面は、線や記号が「データ」として入っているので、同じ記号の数を数える、ある色や種類の線の長さを合計する、囲まれた範囲の面積を出す、といった作業をソフトに任せられます。

  • ・照明器具・コンセント・スイッチなど、記号の数をまとめて数える
  • ・配管・配線・巾木・見切り材など、線の長さを種類ごとに合計する
  • ・部屋の面積を、壁で囲まれた範囲から出す
  • ・改訂の前後のデータを重ねて、変わった所を見つける

ただし、CADデータがあれば全部を自動で拾える、というわけではありません。設計者によって線の色やレイヤー(図面の層)の分け方がばらばらで、一本の壁が何本もの短い線で描かれていることもよくあります。記号が部品としてではなく、ただの線の集まりで描かれていると、数を数える機能が使えません。設備図と意匠図で同じ物が二重に描かれていて、そのまま集計すると数が倍になることもあります。

注意CADデータで自動集計した数字は、図面の描き方に左右されます。最初の数件は、手で拾った数字と並べて比べ、どの項目ならソフトに任せてよいか、どの項目は人が拾うかを決めてから使ってください。

CADデータをもらえるかどうかは、相手先に聞いてみないと分かりません。見積の依頼を受けるときに「CADデータがあれば一緒にいただけますか」と一言添える習慣をつけるだけでも、拾い出しの手間が変わる案件が出てきます。もらえた案件ともらえなかった案件を記録しておくと、どの元請・設計事務所なら頼めるかが見えてきます。

5. 数量拾いに使えるツールの種類と、選ぶときに見ること

拾い出しの道具は、大きく分けて次の種類があります。ここでは特定の製品を比べるのではなく、どの種類が自社に届く図面と、今の作業の流れに合うかという見方で整理します。

表3 拾い出しに使えるツールの種類
ツールの種類できること向いている会社
計測機能つきのPDFソフト画面上で長さ・面積・個数を測るPDFの図面が多く、まず紙から画面へ移りたい
拾い出し専用のソフト項目ごとの拾い、一覧の書き出し、改訂前後の比較拾い出しの件数が多く、担当者が複数いる
CADソフトの集計機能記号の数、線の長さ、面積の集計CADデータを受け取れる案件が多い
積算ソフト拾った数量に単価を掛け、内訳書まで作る拾いから見積書まで一続きで進めたい
自社の拾い表と取り込みのしくみ書き出した数量を自社の見積様式へそろえて入れる様式や単価表が社内で固まっている
出典:東海DX伴走室編集部の整理

道具を選ぶときは、機能の多さよりも、自社の作業の前後とつながるかを見ます。拾い出しが速くなっても、書き出した数字を見積の様式へ手で打ち直しているなら、時短は途中で止まります。

  • ・自社に届く図面は、紙・PDF・CADデータのどれが多いか
  • ・拾った数字を、今の集計表や見積の様式にそのまま入れられるか(書き出しの形式)
  • ・縮尺合わせや項目の色分けを、担当者が迷わずにできるか
  • ・何人で使うか。担当者が一人なら、その人が慣れた道具の延長で考える
  • ・拾い出しの後、内訳書や見積書をどこで作っているか
ポイント道具を先に決めるより、「どの図面で」「何を拾い」「拾った数字をどこへ渡すか」を紙一枚に書き出してから選ぶと、合わない道具を入れてしまう失敗を避けられます。お試し期間がある道具は、サンプルではなく自社の実際の図面一件で試してください。

6. 拾い漏れ・拾い過ぎを防ぐ確認手順

拾い出しを速くすると、心配になるのが拾い漏れです。速さと正確さを両立させるには、全部を最初から拾い直すのではなく、見る所を決めた確認の手順を持つことです。手順が決まっていれば、ベテランでなくても同じ順番で見直せます。

図2 拾い出しの確認手順
  1. 01図面リストと照らす受け取った図面の一覧と、拾った図面を突き合わせ、手を付けていない図面がないか確かめる
  2. 02色の付いていない所を探す図面を縮小して全体を見て、印や色がない部屋・部材を探す
  3. 03大きい項目から見る数量や金額の大きい項目から順に、桁・単位・掛け算の間違いがないか確かめる
  4. 04過去の似た工事と比べる延床面積あたりの数量など、似た工事と比べて極端に多い・少ない項目を探す
  5. 05特記仕様書を読む図面に描かれず、仕様書や見積要項にだけ書かれている工事がないか確かめる
  6. 06改訂の反映を確かめる最新版の図面で拾っているか、改訂の印がある箇所を拾い直したかを確かめる

とくに漏れやすいのは、図面に線として描かれないものと、別の書類にだけ書かれているものです。次のような項目は、確認表に一行ずつ載せておくと見落としにくくなります。

  • ・図面に描かれない仮設・養生・運搬・撤去・処分
  • ・特記仕様書や見積要項にだけ書かれた項目
  • ・「同上」「同仕様」とだけ書かれた別の階・別の部屋
  • ・開口部を差し引くか差し引かないかの社内の決まり
  • ・改訂図面で追加・変更された箇所
  • ・ロスや割増を見込むかどうか、見込む場合の決まり

確認は、拾った本人ではない人が見るのが理想ですが、人手が足りない会社では、本人が日を改めて上の手順で見直すだけでも違います。拾い表の端に「確認した日」と「確認した人」を書く欄をつくっておくと、後で数量の違いが分かったときに、どの段階で漏れたかをたどれます。漏れた原因を確認表に書き足していけば、確認表そのものが社内の知恵として育っていきます。

図3 拾い出しのやり方を変える前と後
導入前
  • 紙の図面にスケールを当てて測り、電卓で計算する
  • 拾い表に手書きし、あとでExcelに打ち直す
  • 拾った所の印のつけ方が人によってばらばら
  • 見直しは、別の人が最初から拾い直す
  • 改訂図面が届くと、全体を拾い直す
導入後
  • PDFの画面上で縮尺を合わせ、なぞって測る
  • 拾った数量を一覧で書き出し、集計表に貼る
  • 項目ごとの色と拾う順番が社内で決まっている
  • 確認手順に沿って、見る所を絞って見直す
  • 改訂の前後を重ねて、変わった所だけを拾い直す

7. 自社で拾い出しの時短を始める順番

拾い出しの時短は、一度に全部を変えようとすると、繁忙期の見積と重なって止まってしまいます。今の仕事を回しながら、小さく試して広げる順番で進めます。下の流れは、見積の担当者が数人の会社を想定した進め方の一例です。

図4 拾い出しの時短を進める順番の例
  1. はじめの2週間最近の見積を数件選び、図面をそろえる・測る・写す・見直すの各段階にかかった時間を、担当者に書き出してもらう
  2. 1か月目拾い表の様式、項目ごとの色、拾う順番、確認表を社内で一つに決める
  3. 2か月目PDFで届いた図面を1件、計測機能のある道具で拾い、手で拾った数字と比べる
  4. 3か月目書き出した数量を、集計表や見積の様式へそのまま入れられる形に整える
  5. それ以降CADデータを受け取れる案件で集計機能を試し、ソフトに任せる項目と人が拾う項目を決める

最初に時間を書き出してもらうのは、担当者を評価するためではなく、どこから手を付けるかを決めるためです。その目的を先に伝えておくと、ありのままの数字が集まります。書き出した結果、写す作業が重いと分かれば様式と書き出しの見直しから、測る作業が重いと分かればPDFやCADでの拾い方から、というように、自社に合った入口が決まります。

注意道具の導入に補助金を使う場合、交付の決定より前に契約・支払いをしたものは対象外になる制度があります。無料の試用で確かめる段階と、本契約の段階を分けて計画しておくと、制度の時期に合わせやすくなります。

8. よくあるご質問

Q
紙をスキャンしたPDFでも、画面の上で拾い出しはできますか。
A
できます。最初に寸法が分かっている線で縮尺を合わせれば、長さ・面積・個数を画面上で拾えます。ただし線のデータを持たないため、なぞる位置は目で合わせます。スキャンの際に縮尺がずれることがあるので、通り芯の間隔などで一度測って確かめてから使ってください。
Q
CADデータをもらえない案件が多いのですが、それでも時短できますか。
A
できます。拾い出しの手間は、測る作業より、集計表への書き写しや見直しにかかっていることが多いためです。拾い表の様式と色分けを社内でそろえ、拾った数字を一覧で書き出せる形にするだけでも、写す回数と見直しの手間を減らせます。
Q
図面からの拾い出しをAIに任せることはできますか。
A
図面の記号を読み取って数えるなどの技術はありますが、図面の描き方や画質によって結果が変わります。任せる場合も、最初は手で拾った数字と並べて比べ、任せてよい項目を見極めてください。最終の数量は人が確認する前提で使います。
Q
拾い出しの道具の導入に補助金は使えますか。
A
国の「デジタル化・AI導入補助金(通常枠)」は、事務局に登録されたソフトやクラウドサービスの導入が対象です。1次の締切はすでに過ぎており、2次以降は事務局の発表を待つことになります。登録されていない道具は対象にならず、交付の決定より前の契約・支払いも対象外なので、導入の時期は制度の発表を確かめてから決めてください。
編集部
この記事を書いた人
東海DX伴走室編集部
東海4県の製造業・建設業のDXを支援しています。制度の内容は、公開日時点の公的機関の資料をもとにしています。
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