デジタル化・AI導入補助金の業務プロセスとは|数で変わる補助の上限と数え方
- 公式情報の確認日
- ✓通常枠の補助の額は、ITツールが担う業務プロセスの数で決まり、1〜3つなら5万〜150万円、4つ以上なら150万〜450万円です。
- ✓業務プロセスは機能一覧ではなく、自社が実際にツールを使う業務で数えます。上限を上げるためだけに増やすと、自己負担と使われない機能が残ります。
- ✓補助率は1/2以内が基本で、最低賃金に近い賃金の事業者は2/3以内です。1次締切は過ぎているため、次の公募までに業務の書き出しを済ませておきます。
デジタル化・AI導入補助金の通常枠では、申請するITツールが会社のどの仕事を担うのか、つまり「業務プロセス」の数によって、補助を受けられる額の幅が変わります。業務プロセスが1〜3つなら5万〜150万円、4つ以上なら150万〜450万円です。数が一つ違うだけで上限の幅が大きく変わるため、申請の相談の場で「4つにできませんか」という話が出ることもあります。この記事では、業務プロセスとは何か、自社でどう数えるか、上限のためだけに数を増やさない判断、そして補助率1/2と2/3の違いを、製造業・建設業の事務の流れに沿って整理します。なお、2026年度の1次締切は2026年9月29日17時で終わっており、2次以降は事務局から公表されていません。次の公募を待つ間の準備として読んでください。
1. 業務プロセスとは何を指すのか
業務プロセスは、会社の仕事を「受注」「在庫」「請求」のようなまとまりに分けたときの、一つひとつのまとまりだと考えると分かりやすくなります。補助金の通常枠では、導入するITツールがこのまとまりのうちいくつを担うかを数え、その数で補助の額の幅が決まります。区分の名前や細かな数え方は事務局の公募要領で定められていて、公募の回ごとに見直されることもあります。この記事では考え方を整理し、最終的な判定は支援事業者と公募要領で確かめる前提で書きます。
- ・受注・見積(注文書の受け取り、見積書の作成、受注台帳への記入)
- ・生産計画・工程管理(製造指示、工程表、現場の段取り)
- ・在庫・購買(材料の発注、入庫・出庫、棚卸し)
- ・出荷・納品(納品書の発行、出荷の記録)
- ・請求・入金(請求書の発行、入金の消し込み)
- ・会計・経理(仕訳、帳簿、決算の準備)
- ・勤怠・給与(出退勤の記録、給与計算)
- ・顧客・問い合わせ管理(取引先の情報、問い合わせの履歴)
ここで押さえておきたいのは、「ツールの機能一覧に載っている業務」と「自社がそのツールで実際に回す業務」は別だという点です。たとえば販売管理のソフトには、見積・受注・在庫・請求の機能がそろっていることがよくあります。しかし自社では見積はこれまでのExcelのまま、在庫は現場の棚札で管理を続ける、というのであれば、ツールが担う業務は受注と請求だけです。申請書で数えるのも、本来はこの「実際に使う業務」です。
2. 業務プロセスの数で補助の上限が変わるしくみ
| 業務プロセスの数 | 補助の額(通常枠) | 補助率 |
|---|---|---|
| 1〜3つ | 5万〜150万円 | 1/2以内(最低賃金に近い賃金の事業者は2/3以内) |
| 4つ以上 | 150万〜450万円 | 1/2以内(最低賃金に近い賃金の事業者は2/3以内) |
表の金額は「必ずもらえる額」ではなく、補助を受けられる額の幅です。実際の補助の額は、対象になる経費に補助率をかけて出し、その結果が幅の上限を超えた分は補助されません。逆に、経費が小さければ、4つ以上の業務プロセスを数えても補助の額は小さいままです。上限の幅が広がることに意味があるのは、もともと導入の経費が大きく、1〜3つの幅の上限に届いてしまう場合に限られます。
また、通常枠のほかにも枠があります。会計や受発注のソフトで、主な目的がインボイスへの対応であれば、インボイス枠も候補になります。社内のパソコンやネットワークの守りを固めるのが目的なら、セキュリティ対策推進枠があります。どの枠で出すかによって、業務プロセスの数え方が関係するかどうかも変わるため、目的を先に決めてから枠を選ぶ順番が迷いにくくなります。
- ・インボイス枠:〜350万円
- ・セキュリティ対策推進枠:5万〜150万円
- ・各枠の要件と対象経費は、公募の回ごとに事務局の発表で確認します
3. 自社の業務プロセスを数える手順
業務プロセスの数は、ツールのカタログから逆算するのではなく、自社の仕事の流れから数え始めます。注文が来てから入金されるまで、あるいは工事の依頼から請求までを、紙・Excel・FAX・電話で何をしているか、順番に書き出すところが出発点です。総務・経理の責任者と、工場長や工事部長が一緒に書き出すと、事務所と現場の間で抜けている作業が見えます。
- 01今の仕事の流れを書き出す受注から入金まで、誰が何を使って何をしているかを、ホワイトボードや模造紙に順番に並べます。
- 02困りごとのある業務に印をつける同じ内容を二度打ちしている、探すのに時間がかかる、担当者が休むと止まる、という業務に印をつけます。
- 03ツールが担う業務を当てはめる支援事業者から示された登録ITツールの機能と、印をつけた業務を照らし合わせます。
- 04使う人と場面を決めるその業務で、誰が、いつ、何を入力し、何を見るのかを一つずつ決めます。決められない業務は数えません。
- 05公募要領の区分で数を確定する支援事業者と一緒に、社内のまとまりを事務局の区分に当てはめ、申請で数える業務プロセスを確定します。
数えるときに迷いやすい場面
- ・一つのツールで複数の業務を担う場合:受注と請求を同じソフトで回すなら、業務としては二つと考えられます。区分上どう数えるかは公募要領で確認します。
- ・機能はあるが使わない場合:在庫の機能があっても、現場の管理を続けるなら数えません。
- ・複数のツールを組み合わせる場合:会計ソフトと勤怠のクラウドを一緒に申請するときは、それぞれが担う業務を合わせて数えます。重なる業務は二重に数えません。
- ・一部をExcelに残す場合:見積だけExcelに残すなら、見積は数に入れず、受注以降の業務で数えます。
4. 上限を上げるためだけに数を増やさない判断
書き出してみたら、本当に変えたい業務は3つだった。けれども4つにすれば上限の幅が広がる。こうしたときに、もう一つ業務を足すかどうかは、補助の額ではなく、自社の負担と現場の使い方で判断します。補助金は経費の一部を後から補うものなので、ツールを増やせば、補助の対象であっても自社で払う額も増えます。
- ・自己負担が増える:補助率は経費の一部なので、残りは自社の持ち出しになります。
- ・利用料は補助の後も続く:クラウドサービスの月額料金は、補助の対象期間が終わったあとも毎月かかります。
- ・現場が使わずに元へ戻る:慣れたExcelや紙の台帳に戻ると、二重管理だけが残ります。
- ・効果の報告で説明できない:導入後には効果の報告が求められます。使っていない業務の効果は書けません。
- ・急いで決めると対象外になる:交付の決定より前に契約・支払いをしたものは対象になりません。数を増やすために慌てて追加の契約をすると、かえって全体が崩れます。
| 確かめること | 足してよい場合 | 見送る場合 |
|---|---|---|
| 担当者の困りごと | 担当者が今まさに手間だと言っている | 困っている人が社内にいない |
| 使う人と場面 | 誰が、いつ入力するか決まっている | 導入してから考えるつもりでいる |
| 今のやり方の置き換え | 紙やExcelをやめる日を決められる | 今のやり方も並行して続ける |
| 補助の後の費用 | 月額料金を払い続ける理由がある | 補助期間が終わったら解約しそう |
| 効果の報告 | 変わった点を具体的に書ける | 何が変わるか説明できない |
表の「足してよい場合」が全部そろう業務なら、もともと変えるべき業務を見落としていたということです。その場合は堂々と4つ目として数えて構いません。一方で、一つでも「見送る場合」に当てはまるなら、今回は3つで申請し、残りは社内の準備が整ってから次の機会に回すほうが、結果として使われるしくみになります。上限の幅が狭くても、実際の経費が1〜3つの幅に収まるなら、受け取る補助の額は変わりません。
5. 補助率1/2と2/3の違いと確認のしかた
通常枠の補助率は1/2以内が基本です。最低賃金に近い賃金で働く従業員がいる事業者は、2/3以内になります。補助率が2/3以内になると、同じ経費でも自社で払う割合が小さくなります。上限の幅は業務プロセスの数で決まり、補助率は賃金の状況で決まるので、この二つは別々に確認します。
- ・業務プロセスの数:補助の額の幅(上限)を決める
- ・賃金の状況:補助率(1/2以内か2/3以内か)を決める
- ・対象経費:補助の額の元になる。登録されたITツールの利用料や導入の支援費用など
自社が2/3以内に当たるかどうかは、従業員の賃金と、事業所のある地域の最低賃金との関係で判断されます。具体的な基準や、どの時点の賃金で見るかは公募要領で定められます。確認には、賃金台帳と、愛知・岐阜・三重・静岡それぞれの地域別最低賃金の額を手元に用意しておくと、支援事業者との相談が早く進みます。パートやアルバイトの時給も含めて見る必要があるため、総務・経理の担当者が準備しておくと確実です。
6. 次の公募に向けた申請の段取りと注意点
この補助金は、自社だけで申請するものではありません。事務局に登録された支援事業者と一緒に申請し、対象になるのも事務局に登録されたITツールだけです。1次締切はすでに過ぎているため、2次以降の発表を待ちながら、社内でできる準備を先に済ませておくと、公募が出てから慌てずに済みます。
- 2026年9月29日17時1次締切(終了)
- 次の公募が出るまで仕事の流れを書き出し、変えたい業務と使う人を決める。賃金台帳を用意する
- 2次以降の発表後支援事業者と登録ITツールを選び、業務プロセスの数と枠を確定して申請する
- 交付の決定後ここで初めて契約・支払いをする。決定前の契約・支払いは対象外
- 導入後事務局に効果を報告する
- ・事務局に登録されていないツールは対象になりません。気になる製品があれば、登録されているかを支援事業者に確かめます。
- ・交付の決定より前に契約・支払いをしたものは対象外です。見積の取り寄せまでにとどめ、発注は決定を待ちます。
- ・導入後に効果の報告が求められます。導入前の作業時間や手順を記録しておくと、変化を説明しやすくなります。
- ・2次以降の締切や要件は事務局の発表で確認します。前回の要領のまま進めず、新しい要領を読み直します。
- 支援事業者が勧めるツールの機能一覧から業務を数える
- 上限の幅を広げるために業務を足す話になる
- 誰がどの画面を使うか決まらないまま申請する
- 導入後、現場は元のExcelに戻り二重管理になる
- 効果の報告で何が変わったか説明に困る
- 自社の仕事の流れから、変えたい業務を先に決めて持ち込む
- 必要な業務の数に合った枠と上限の幅で申請する
- 業務ごとに使う人と入力の場面が決まっている
- 紙やExcelをやめる日を決めて切り替える
- 書き出しの記録をもとに、変わった点を報告できる
まず今週できることは、受注から入金まで、または工事の依頼から請求までの流れを一枚に書き出すことです。そのうえで、困りごとに印をつけ、使う人と場面を決められる業務がいくつあるかを数えます。その数が、次の公募で相談するときの出発点になります。数が3つ以下であれば、それに合った規模で十分です。4つ以上が自然に出てきた場合だけ、上の幅の枠を検討します。
