eラーニングの生成AI研修に助成金は使える?上限15万円と年1回の制限
- 公式情報の確認日
- ✓eラーニングも人材開発支援助成金の対象になりますが、経費の上限は中小企業の1人1研修で15万円です。時間数で上限が上がる集合研修とは扱いが違います。
- ✓受講は1人あたり1年度に3回まで、そのうちeラーニングは1回までです。合計10時間以上の要件と、業務に直結した内容であることも求められます。
- ✓eラーニングで基礎をそろえ、集合研修で自社の書類を使う組み合わせにすると、回数・内容の条件に収めやすくなります。計画届は研修開始の6か月前から1か月前までに出します。
1. eラーニングの生成AI研修も助成金の対象になるか
動画で学ぶeラーニングの生成AI講座は、現場を止めずに受けられるため、交代勤務の工場や、日中は現場に出ている社員の多い建設会社では使いやすい形です。厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、DXなど事業の変化に伴って新しく必要になる知識・技能を身につける研修を対象にしており、eラーニングもその中に含まれます。ただし、集合研修とまったく同じ扱いではありません。研修経費の上限が別に決められているほか、1人が1年度に受けられる回数のうち、eラーニングは1回までという制限があります。
答えを先に言うと、「eラーニングでも助成金は使える。ただし使える枠は小さく、回数も限られる」です。この記事では、上限15万円と年1回の制限の中身、合計10時間以上の要件、内容の面で対象外になりやすい講座、そして集合研修との組み合わせ方を、計画届を出す前に社内で決めておく順番に沿って整理します。
2. 経費の上限は15万円|集合研修は時間数で上限が変わる
このコースの研修経費の助成は、中小企業で経費の75%です。ただし、もとになる経費には上限があり、中小企業の場合は1人1研修あたりで次のように決まっています。集合研修などは研修の時間数が長いほど上限が上がりますが、eラーニングは時間数にかかわらず15万円です。
見落としやすいのは、上限が「1人1研修」ごとにかかる点です。受講料の高い講座を選んでも、上限を超えた部分は自社の負担になります。反対に、受講料が上限より安い講座なら、上限いっぱいまで使えるわけではなく、実際に払った経費がもとになります。講座を選ぶ前に、1人あたりの受講料と上限のどちらが小さいかを確かめておくと、あとで「思ったより助成が少なかった」ということになりません。講座の比較では、次の点をそろえて見てください。
- ・1人あたりの受講料と、教材費などを含めて何が経費になるか
- ・受講期間と総時間数(動画の再生時間か、課題を含む学習時間か)
- ・受講の記録が出せるか(ログイン履歴・学習時間・修了証・テスト結果)
- ・内容が受講者の業務に直結しているか
研修中の賃金の助成(中小企業は1人1時間あたり1,000円)は、社員が勤務時間の中で研修を受けた時間に対して出ます。eラーニングの場合に賃金の助成がどう扱われるかは、受講する時間帯や記録の残し方によって変わることがあるため、計画届の前に労働局か社会保険労務士に確認してください。経費の上限と賃金の助成の両方を見たうえで、eラーニングと集合研修のどちらに重きを置くかを決めると、判断がぶれません。
3. 受講は1人1年度3回まで、うちeラーニングは1回まで
改正で、研修の受講は1人あたり1年度に3回まで、そのうちeラーニングは1回までになりました。数えるのは研修の回数で、社員一人ひとりについて年度ごとに数えます。同じ社員にeラーニングの講座を2本受けさせると、2本目は対象になりません。組み合わせごとに整理すると次のとおりです。
| 組み合わせ | 対象になるか | 考え方 |
|---|---|---|
| 集合研修3回 | なる | 回数の上限いっぱい。eラーニングは使えない |
| 集合研修2回+eラーニング1回 | なる | 基礎をeラーニング、実務を集合研修に分けやすい |
| 集合研修1回+eラーニング1回 | なる | 回数に余りが出る。年度後半の追加研修に残せる |
| eラーニング2回 | 2回目はならない | eラーニングは1年度に1回まで |
| 集合研修3回+eラーニング1回 | 4回目はならない | 合計は1年度に3回まで |
何人も受講させると、誰が何回受けたかを総務で追いきれなくなりがちです。計画を立てる段階で、受講者ごとに「今年度の何回目か」「eラーニングをもう使ったか」を一覧にしておくと、年度の途中で追加の研修を入れるときに迷いません。1年度は4月から翌年3月までなので、秋に計画を立てる場合は、残りの期間で何回入れるかも合わせて考えます。
4. 合計10時間以上の要件とeラーニングの時間の数え方
このコースの主な要件は、会社の外で行う研修(OFF-JT)で、合計10時間以上であることです。OFF-JTは、普段の仕事の中で先輩が教えるOJTとは分けて、業務から離れて受ける研修を指します。eラーニングを使う場合は、何をもって「受講した時間」とするかを先に決めておく必要があります。動画の再生時間なのか、課題に取り組んだ時間も含むのか、講座の提供元が示す標準の学習時間なのかで、合計の数え方が変わるからです。講座を決める前に、次の点を確かめてください。
- ・講座の総時間数が、案内や資料にはっきり書かれているか
- ・受講者ごとの学習時間や進み具合を、記録として出せるか
- ・勤務時間中に受けるのか、時間外に受けるのか(賃金の扱いに関わる)
- ・途中で受講をやめた社員が出たとき、どう扱うか
10時間に届かない短い講座は、それだけでは要件を満たしません。短い動画講座を使いたい場合は、集合研修と合わせて一つの研修として計画できるのか、別々の研修として数えるのかで、時間の合計も回数の数え方も変わります。ここは制度の細かな運用にかかわるため、自己判断で進めず、計画届の前に労働局か社会保険労務士に確認してから講座を決める方が安全です。
5. 2026年8月の改正で対象外になりやすい講座の内容
回数と時間に加えて、内容も見ておく必要があります。2026年8月3日以降に出す計画届から、職務に間接的に必要な内容や、職種を問わない共通の内容(接遇・マナーなど)の研修は、DXに関するものでも対象外になりました。市販のeラーニングには、「生成AIの基本」「誰でも使える対話型AI入門」のように、業種や職種を問わない作りの講座が多くあります。こうした講座だけで計画を立てると、内容の面で対象外と判断されるおそれがあります。
| 講座の内容 | 見られ方の目安 | 対応のしかた |
|---|---|---|
| 業種を問わない生成AIの基本操作 | 共通の内容とみなされやすい | 単独で使わず、業務に直結した研修と組み合わせる |
| ビジネスマナー・接遇 | 対象外 | 助成金の計画からは外す |
| 自社の見積書・日報を題材にした生成AIの使い方 | 職務に直結しやすい | 受講者の職種と使う業務を計画に書く |
| 製造・建設の業務に絞った生成AIの活用 | 職務に直結しやすい | どの書類・どの作業に使うかを具体的に示す |
判断の目安は、「この研修を受けた社員が、明日から自分のどの書類・どの作業に使うのか」を説明できるかどうかです。工場であれば作業標準書や品質記録、建設会社であれば施工計画書や安全書類のように、受講者の仕事と研修の中身をつなげて書けるものは説明がしやすくなります。eラーニングで基礎を学び、集合研修で自社の書類を使って手を動かす組み合わせにすると、内容の面でも業務とのつながりを示しやすくなります。
6. 集合研修とeラーニングの組み合わせ方|3つの型
上限15万円、1年度1回、合計10時間以上、業務に直結した内容。この4つの条件を同時に満たすには、eラーニングを研修全体のどこに置くかを先に決めると組み立てやすくなります。東海地方の製造業・建設業の勤務の形に合わせて、3つの型を挙げます。
型1:eラーニングで基礎をそろえてから集合研修
交代勤務や現場の都合で、全員が同じ日に集まりにくい会社に向く型です。最初にeラーニングで用語や基本操作、入力してよい情報のルールをそろえておき、集合研修では自社の書類を持ち寄って実際に使う時間に充てます。集合研修の当日に操作の説明から始めずに済むため、限られた時間を自社の業務に使えます。
- 01eラーニングで基礎用語・基本操作・入力してよい情報のルールを、各自の勤務の合間に学ぶ
- 02集合研修1回目自社の見積書・日報・作業標準書などを持ち寄り、その場で下書きをつくる
- 03職場で試す研修でつくった手順を実際の業務で使い、うまくいかなかった点を書き出す
- 04集合研修2回目書き出した点を持ち寄って手順を直し、部署の標準の使い方として決める
型2:集合研修を軸にして、eラーニングで復習する
工場長・工事部長や総務・経理の責任者など、集まる時間を取りやすい層に向く型です。まず集合研修で自社の書類を使った手順を身につけ、そのあとの復習と応用をeラーニングで補います。集合研修を1回にしておけば、回数に1回分の余りが残り、年度の後半に必要になった研修に回せます。
型3:eラーニングは使わず、集合研修だけで組む
受講者が少なく、全員が同じ日に集まれるなら、eラーニングを入れずに集合研修だけで組む方が、経費の上限も時間数に応じて決まり、計画が分かりやすくなります。eラーニングの1回の枠を、新しく入った社員の基礎固めなど、あとから必要になった場面のために残しておくという考え方もあります。
7. 申請の段取りと日程|計画届の期限から逆算する
日程で一番つまずきやすいのは計画届です。計画届は研修開始の6か月前から1か月前までに出す必要があり、提出が遅れると対象になりません。eラーニングは申し込めばすぐ始められるため、思い立った週に受講を始めてしまいがちですが、計画届の期限を守らずに始めた研修は助成の対象外になります。手続きの流れは次のとおりです。
- 研修開始の6か月前〜1か月前計画届を提出する(遅れると対象外)
- 研修期間中受講記録・出欠・学習時間・支払いの証拠を残す
- 研修終了の翌日から2か月以内支給申請を提出する
- 2026年度末このコースは2026年度末までの時限措置
2026年10月の今から考えると、研修の開始は計画届の提出から1か月以上あとになります。そのうえ、このコースは2026年度末までの時限措置なので、日程に余裕はありません。どこまでの日程が対象になるか、来年度以降に同じ形の支援があるかは、厚生労働省の発表と労働局で確認が必要です。急いで講座に申し込むより、受講者・内容・回数を先に固め、申請を担う社会保険労務士に計画届の準備を早めに相談する方が確実です。研修中は、次の記録を残しておきます。
- ・eラーニングの受講履歴・学習時間・修了証
- ・集合研修の出欠簿と、実施した内容の記録
- ・受講料の請求書・領収書・振込の記録
- ・研修を受けた時間の勤務の記録(出勤簿・賃金台帳)
8. 講座を選ぶ前に社内で決めておく4つのこと
eラーニングを使うかどうかは、講座の案内を見比べる前に、社内の事情で決まる部分が大きくなります。総務の責任者が中心になって、次の4つを一枚の表にまとめておくと、社会保険労務士や研修の提供元との打ち合わせが一度で済みます。
- ・誰が受けるか:受講者の名簿と、それぞれの今年度の受講回数
- ・何に使うか:受講者ごとの担当業務と、研修で扱う書類
- ・どの形で受けるか:eラーニングを入れるか、集合研修だけにするか
- ・いつ受けるか:計画届の期限から逆算した研修開始日と、研修を受ける時間帯
静岡市の事業者であれば、静岡市「中小企業DX人材等育成支援事業補助金」(DX・デジタル人材育成は上限10万円、補助率2/3、年度内1回まで)のような市の制度もあります。締切は公式ページで確認し、同じ研修の経費に国の助成金と重ねて使えるかどうかは、両方の窓口に確かめたうえで使い分けを決めてください。
