現場のLINEグループを業務用チャットへ移す手順|協力会社の招待と告知
- ✓私用のLINEグループは会社が管理できないため、辞めた人がグループに残り、工事写真は私物のスマホに散らばり、言った言わないのときに記録を出せません。
- ✓業務用チャットに切り替える前に、管理者、アカウントの範囲、使うスマホ、履歴と写真の扱い、チャットで決めてよいことの5つを社内で決めます。
- ✓協力会社には会社として先に知らせ、打合せの場で一緒に参加の操作をします。新しい現場から始めて、並行期間を区切って古いグループを閉じます。
1. 現場の連絡がLINEグループに集まる理由
職長、協力会社の担当者、事務所の工事担当が同じグループに入り、朝の段取り、資材の到着、雨の日の中止連絡、是正の写真まで、すべてがひとつのトークに流れてくる。多くの現場がこの形になったのは、誰かが決めたからではありません。みんなのスマホに最初から入っていて、使い方を教えなくても済んだからです。電話より早く、写真も送れて、既読で読んだかどうかも分かります。現場にとって都合のよい道具だったのは確かです。
問題は、それが会社の道具ではなく、一人ひとりの私用アカウントだという点です。グループを作ったのは誰か、誰が入っているか、やり取りは誰のスマホに残っているか。会社として誰も把握していない状態で、図面や施主の住所、工事写真が毎日行き来しています。何も起きないうちは気になりませんが、人が辞めたとき、スマホをなくしたとき、施主ともめたときに、はじめて困りごとが表に出ます。次のどれかに当てはまれば、切り替えを考える時期です。
- ・現場ごとのグループがいくつも残り、終わった工事のグループを誰も閉じていない
- ・辞めた社員や、取引のなくなった協力会社の人がまだグループに入っている
- ・工事写真を探すとき「あのときのトークをさかのぼって」と言っている
- ・グループの管理者が職長個人で、会社は中身を見られない
- ・社員が仕事と私用で同じアカウントを使っていて、休みの日も現場の通知が鳴る
2. 私用のLINEグループで現場連絡を回す3つの危うさ
危うさは大きく三つに分かれます。どれも「誰かが悪いことをした」から起きるのではなく、会社が管理できない道具を使っているから起きます。
退職者や取引の終わった人がグループに残る
私用のグループから人を外せるのは、そのグループの参加者だけです。会社が「この人を外して」と一括で操作することはできません。社員が辞めても、本人が抜けない限り、現場のグループに残り続けます。協力会社の担当者が別の会社に移った場合も同じです。残った人には、その後も工程や施主の情報、写真が届き続けます。悪意がなくても、会社の外に情報が出ている状態です。しかも現場ごとにグループがあるため、辞めた人がどのグループに入っているかを洗い出すだけで一苦労です。
工事写真や図面が私物のスマホに残る
送られた写真や図面のPDFは、受け取った全員の私物のスマホに保存されます。端末をなくしたとき、家族と共有している端末だったとき、機種変更で写真を個人の保存場所に移したとき、会社はどこに何が残っているか分かりません。施主の家の間取り、鍵の保管場所、防犯設備の配置などは、外に出ると取り返しがつきません。完成後の住まいの中が分かる写真は、施主との約束として扱う情報です。
「言った言わない」のときに記録を出せない
仕様の変更、追加工事の了解、立会いの日時。現場では口頭とトークの組み合わせで決まることが多く、あとから「そんな話は聞いていない」となったとき、頼りになるのはトークの記録です。ところがグループには雑談、スタンプ、写真が何百件も流れていて、目当ての一文を探すのが大変です。さらに、発言した本人が送信を取り消したり、スマホを替えて履歴が消えたりすると、記録そのものが残りません。会社として保存しているわけではないので、記録が残るかどうかは個人の運に任されています。
| 危うさ | 起きること | 業務用チャットでの対処 |
|---|---|---|
| 退職者の残留 | 辞めた人に工程や写真が届き続ける | 管理者がアカウントを止めると、すべてのグループから外れる |
| 写真・図面の流出 | 私物のスマホに保存され、どこにあるか分からない | 会社の保存場所に残し、製品によっては端末への保存を止められる |
| 言った言わない | 履歴が消える、探せない | 会社が履歴を保存し、言葉や日付で検索できる |
| 仕事と私用の混在 | 休日も通知が鳴り、私的な投稿が混ざる | 仕事用のアカウントを分け、通知の時間帯を決められる |
3. 業務用チャットに替えると現場の作業はどう変わるか
業務用チャットは、会社がアカウントを発行し、会社が管理するチャットです。見た目や使い心地は普段のトークとあまり変わりませんが、持ち主が会社だという点が違います。誰を入れるか、誰を外すか、履歴をいつまで残すかを会社が決められます。日々の作業で変わるのは、次のようなところです。
- 職長が自分のアカウントで現場ごとにグループを作る
- 社員が辞めたら、各グループの参加者に外してもらうよう頼んで回る
- 写真は各自のスマホに保存され、事務所へは改めて送り直してもらう
- 言った言わないのときは、トークを何日分もさかのぼって探す
- 休みの日も私用のスマホに現場の通知が届く
- 事務所の管理者が現場ごとのグループを作り、必要な人だけを入れる
- 退職の日に管理者がアカウントを止めれば、すべてのグループから外れる
- 写真は会社の保存場所に残り、事務所から現場ごとに見られる
- 言葉や日付で検索し、決まったことの投稿にすぐたどり着ける
- 仕事用のアカウントを分け、通知の時間帯を決められる
一方で、道具を替えただけで連絡が整理されるわけではありません。グループの分け方や、何をチャットで決めてよいかのルールがないまま移ると、トークの山が別の場所に移るだけです。切り替えてよかったと感じられるかどうかは、移る前に社内で何を決めておくかで決まります。
4. 切り替える前に社内で決めておく5つのこと
製品を選ぶより先に、次のことを決めます。決めるのは社長か工事部長、実際の設定は総務か事務の担当者、という分担が進めやすい形です。現場の職長にも一度相談し、使う側の困りごとを先に聞いておくと、後で反発が出にくくなります。
| 決めること | 中身 | 決める人の目安 |
|---|---|---|
| 管理者 | アカウントの発行と停止、グループの作成を誰が行うか。休みのときの代わりも決める | 総務・事務の責任者 |
| アカウントの範囲 | 社員全員か、職長以上か。協力会社をどこまで招くか | 工事部長 |
| 使うスマホ | 会社支給の端末か、私物のスマホに仕事用アプリを入れてもらうか | 社長・総務 |
| 履歴と写真の扱い | 履歴をどのくらいの期間残すか。写真を端末に保存してよいか | 社長・総務 |
| チャットで決めてよいこと | 変更や追加の了解はチャットでよいか、書面が要るか | 工事部長 |
製品を選ぶときに確かめる項目
- ・管理者が、アカウントの停止とグループからの削除をまとめてできるか
- ・社外の人(協力会社)を、必要なグループだけに招待できるか
- ・履歴を会社側で保存でき、言葉や日付で検索できるか
- ・写真やファイルを端末に保存させない設定があるか
- ・年配の職人でも迷わない画面か。決める前に職長数人に試してもらう
- ・料金がアカウントの数で増える場合、協力会社の人も数に入るか
私物のスマホを使ってもらう場合は、仕事用アプリを入れることへの本人の了解を取り、通知の時間、会社が見られる範囲、退職時にアプリを消してもらう手順を最初に書面で決めます。会社支給のスマホがある会社は、そちらに入れるほうが管理は簡単です。現場の写真を業務用チャットで送る場合も、撮る端末と送る端末が同じ会社のものなら、私物に写真が残る心配がなくなります。
5. グループの分け方|全体・社内・現場・協力会社
私用のトークでは、現場ごとに思いつきでグループが作られてきました。切り替えを機に、分け方を会社として決めます。基本は「全体の連絡」「社内だけの相談」「現場ごと」「協力会社ごと」の四つです。グループを作るのは管理者だけ、と決めておくと、勝手にグループが増えるのを防げます。
| グループ | 入る人 | 流す内容 |
|---|---|---|
| 全体連絡 | 社員全員 | 休業日、安全の周知、会社からのお知らせ(返信は受けない) |
| 社内の工事部 | 工事担当の社員と事務 | 段取りの相談、見積や原価の話など社外に出さない内容 |
| 現場ごと(現場名と着工年月) | 担当社員と、その現場に入る協力会社 | 工程、資材の到着、是正の写真、立会いの日時 |
| 協力会社ごと | 担当社員と、その会社の担当者 | 複数の現場にまたがる手配、請求や書類の連絡 |
現場のグループには、名前の付け方を決めておきます。現場名だけでなく、着工の年月や工事番号を入れると、同じ施主の二期工事などと混ざりません。工事が終わったら、管理者がグループを閉じるか「読むだけ」にして、新しい投稿ができないようにします。終わった現場のグループが開いたままだと、関係のない連絡がそこに流れ、探すときにまた迷います。
6. 協力会社を業務用チャットに招待する手順
切り替えで一番手間がかかるのが協力会社です。自社の社員なら会社の決まりとして進められますが、協力会社は別の会社で、いくつもの元請と付き合っています。元請ごとに違うアプリを入れることへの負担感は小さくありません。頼み方と手順を整えて、相手の手間をできるだけ減らします。
- 01招く人を決める現場の連絡を受ける職長や担当者を、協力会社ごとに名簿にする。会社の代表者だけでなく、実際に現場に来る人を確かめる。
- 02会社として先に知らせる担当社員が電話か訪問で、切り替えの理由と時期を協力会社の社長や担当者に伝え、案内文を渡す。
- 03招待を送る管理者が、その会社が入る現場グループと協力会社ごとのグループだけに招待を送る。全部のグループには入れない。
- 04参加の操作を一緒にやる朝礼や打合せの場で、アプリを入れて参加するところまで、その場で一緒に操作する。
- 05最初の連絡を新しい場所で送る招待した翌日から、その現場の連絡は新しいグループで送る。参加できていない人には個別に声をかける。
案内文には、なぜ切り替えるのか、いつから新しい場所で連絡するのか、入り方、困ったときの問い合わせ先を一枚にまとめます。理由は「御社に情報を守ってもらうため」と書くより、「辞めた人や関係のない人に、御社の職人さんの名前や現場の情報が流れないようにするため」と、相手にとっての利点として書くほうが受け入れられやすくなります。案内文に入れる項目は次のとおりです。
- ・切り替える理由(退職者の残留や写真の扱いを、会社として管理するため)
- ・新しい場所で連絡を始める日と、これまでのLINEグループで投稿をやめる日
- ・アプリの入れ方と参加のしかた(画面の写真つき)
- ・協力会社側に費用がかかるかどうか
- ・分からないときの問い合わせ先(担当者の名前と電話番号)
7. 移行の告知と並行期間の進め方
いきなり「今日からこちら」と切り替えると、見ていない人に大事な連絡が届きません。反対に、並行期間を長く取りすぎると、二つの場所に連絡が分かれて、かえって混乱します。新しく始まる現場から業務用チャットで始め、進行中の現場は期間を区切って並行し、終わった現場から閉じていく、という順番が無理のない進め方です。
- 切り替えの1か月前社内で管理者とルールを決め、社員のアカウントを発行する。事務所の中で試しに使う
- 3週間前一つの現場で先に試す。職長と協力会社の一部に入ってもらい、困ったことを集める
- 2週間前協力会社に案内文を渡し、打合せや朝礼で参加の操作を一緒に行う
- 切り替えの日これから始まる現場は、最初から業務用チャットだけで連絡する
- 切り替えから2週間進行中の現場は並行で送る。大事な連絡は両方に流し、新しい側に誘導する
- 切り替えから1か月LINEグループに「今後はこちらで連絡します」と最後の投稿をして、投稿をやめる
古いLINEグループの中身は、そのままでは会社に残りません。進行中の現場で、決まったことの記録や是正の写真など、あとで要るものがあれば、投稿をやめる前にトークの履歴を書き出したり、写真を会社の保存場所に移したりします。全部を移す必要はありません。引き渡し前の現場と、もめごとになりかけている現場を優先し、それ以外は担当者が要るものだけを選びます。
8. 切り替えた後に私用のトークへ戻らないための運用
切り替えから数か月たつと、「急ぎだったから」と私用のトークに戻る人が出てきます。止めるのは注意ではなく、手続きと習慣です。総務や事務の毎月の仕事に、次のことを組み込みます。
- ・入社・退職・協力会社の担当者の入れ替えのとき、アカウントの発行と停止を、入社書類や退職書類と同じ流れで行う
- ・現場の完了報告のときに、現場グループを閉じることを手順に入れる
- ・変更や追加の了解は、先頭に「決定」と書いてから内容を書く、と書き方をそろえ、検索で探せるようにする
- ・写真はその現場のグループに送り、私用のトークには送らない
- ・月に一度、管理者が参加者の一覧を見て、辞めた人や関係のなくなった人がいないか確かめる
現場の連絡がまとまると、次に見えてくるのは「チャットに流れた写真や日報を、台帳や報告書に起こす手間」です。チャットはあくまで連絡の道具で、日報や写真台帳の保管場所ではありません。写真や日報を後で書類にまとめる必要があるなら、チャットとは別に、送った写真がそのまま現場ごとの台帳に入るしくみを考えておくと、探して貼り直す二度手間を防げます。まずは今あるLINEグループを一覧にし、誰が作り、誰が入っているかを書き出すところから始めてください。
