協力会社の請求書の様式がバラバラなとき|統一の頼み方と自動入力の進め方
- 公式情報の確認日
- ✓自社指定様式は「自社の入力画面に上から順に写せるか」で項目を決め、注文番号と工事番号を必ず書いてもらう形にする
- ✓統一はお願いとして進め、表紙だけ指定様式・明細は自社様式の添付でもよいなど、協力会社の負担が増えない頼み方にする
- ✓統一できない会社の分はAIの読み取りで補い、指定様式と従来様式を併用する移行期間を設けて、締め日と窓口は変えずに切り替える
1. 協力会社の請求書の様式がそろわないと、何に時間がかかるのか
建設業の経理や工事事務では、月末から翌月の締めにかけて、協力会社から届く請求書を工事ごとに入力し、注文書や出来高と照らし合わせて支払の準備をします。届く請求書は、会計ソフトから出した一覧形式のもの、手書きの複写式、Excelで作った自作の表、メールで届くPDF、FAXで届く紙までさまざまです。様式がそろっていないと、どこに何が書いてあるかを毎回探すところから作業が始まります。
- ・工事名や現場名の書き方が会社ごとに違い、自社の工事番号に置き換えるときに迷う
- ・注文番号が書かれていない請求書があり、どの注文に対する請求なのかを調べ直す
- ・出来高請求と精算請求の区別や、前回までの請求済み額の書き方がまちまち
- ・材料・労務・外注・経費の内訳の細かさが違い、原価の科目に振り分けるのに手間がかかる
- ・税抜・税込の表示や消費税の端数の扱いが会社ごとに違い、合計が合わないときの確認に時間を取られる
- ・登録番号の位置が会社ごとに違い、適格請求書として必要な記載があるかを毎回探す
実際には、数字を打ち込む作業そのものより、「探す」「置き換える」「問い合わせる」の3つに時間を取られています。そのため、入力を速くする道具を入れるだけでは解決しきれません。協力会社に自社指定の様式を使ってもらう取り組みと、どうしても様式がそろわない会社の分を読み取りで補う取り組みを、同時に進めるのが現実的な順番です。
2. 自社指定様式に入れる項目の決め方
指定様式をつくるときは、見た目の整い方より「自社の入力画面や工事台帳に、上から順に写せるか」を基準に項目を決めます。入力する順番と様式の並び順がそろっていれば、人が入力する場合も、AIに読み取らせる場合も迷いが減ります。まずは今の入力画面を印刷し、入力している項目を上から書き出すところから始めると、必要な欄が漏れません。
| 項目 | 入れる理由 | 書き方の指示 |
|---|---|---|
| 自社の工事番号・工事名 | 原価をどの工事に計上するかを決める | 注文書に書かれた番号をそのまま写してもらう |
| 注文番号(注文書・注文請書の番号) | どの契約に対する請求かを特定する | 1枚の請求書に複数の注文を混ぜない |
| 請求の区分(出来高・精算・追加工事) | 支払額の確かめ方が変わる | 選択肢に丸を付けてもらう |
| 契約金額・前回までの請求額・今回請求額 | 出来高の累計が契約を超えていないか確かめる | 3つの欄をすべて埋めてもらう |
| 内訳(材料・労務・外注・経費) | 原価の科目に振り分ける | 自社の科目に合わせた欄に書いてもらう |
| 税抜金額・消費税額・税込金額 | 端数の違いや計算違いに気づく | 税率ごとに分けて書いてもらう |
| 登録番号・発行者名・請求日 | 適格請求書として必要な記載を確かめる | 毎回同じ位置に書いてもらう |
| 振込先 | 支払データをつくる | 変わるときは別の届で知らせてもらう |
様式は、Excelのファイル、記入できるPDF、印刷した紙の3つの形で用意しておくと、どの協力会社にも渡せます。あとで読み取りに回すことを考え、数字の欄は枠で区切り、手書きの欄は広めに取ります。欄の名前は「今回請求額」のように一つに決め、版番号を隅に入れておくと、古い様式で届いたときにすぐ分かります。
3. 指定様式の配り方と、協力会社への頼み方
すべての協力会社に一度に切り替えてもらおうとすると、問い合わせが一気に集まり、事務がかえって混乱します。取引が多い会社や、今の請求書が特に読みにくい会社から順に頼むと、早い段階で手間が減ったことを実感でき、社内の協力も得やすくなります。
- 01頼む順番を決める取引が多い会社、請求書が読みにくい会社、注文番号が抜けがちな会社から順に一覧にする
- 02様式と記入例をそろえるExcel・PDF・紙の3つの形と、実際の数字を入れた記入例を1枚用意する
- 03依頼文を送り、会合で説明する協力会や安全協議会の集まりがあれば、その場で記入例を見せながら説明する
- 04試しに1回出してもらう本番の締めの前に、前月分などで試しに書いてもらい、書き方の迷いを拾う
- 05戻りを見て直す空欄が多い項目や、書き方が割れた項目は、記入例か様式のほうを直す
- 06本格的に切り替える決めた締め月から指定様式で受け取り、まだの会社には個別に声をかける
依頼文に書いておくこと
- ・様式を変えてほしい理由(請求の内容を早く正確に確認し、問い合わせを減らすため)
- ・指定様式で出してほしい締め月
- ・様式の受け取り方(メールでExcel・PDFを送る、紙を郵送する、注文書に同封する)
- ・実際の数字を入れた記入例
- ・自社の請求書を使い続けてよい条件(表紙だけ指定様式にし、明細は今の請求書を添付するなど)
- ・送り先のメールアドレス・FAX番号と、問い合わせ先の担当者名
頼み方で効くのは、協力会社の手間を増やさない言い方です。会計ソフトで請求書を出している会社に「今の請求書をやめてほしい」と言うと、二重の作業になり嫌がられます。「表紙だけ指定様式で、明細は今のものを添付してください」とすれば、書く欄は工事番号と注文番号と金額くらいで済みます。一人親方や小さな会社には、注文書を出すときに工事番号と注文番号をあらかじめ印字した指定様式を同封しておくと、書き写す手間もなくなります。
4. 統一できない協力会社の請求書をAIで読み取る方法
どれだけ丁寧に頼んでも、指定様式にそろわない会社は必ず残ります。会計ソフトの様式を変えられない会社、いくつもの元請と取引していて一社ずつ合わせられない会社、手書きの複写式を長年使っている会社などです。この分は無理に合わせてもらうより、届いた形のまま読み取って入力欄に並べるしくみで補います。届く形によって、読み取り方と人が確認する所が変わります。
| 届く形 | 読み取り方 | 人が確認する所 |
|---|---|---|
| 会計ソフトから出したPDF | ファイルの中の文字をそのまま取り出す | 注文番号と工事の対応 |
| 印字された紙・FAX | AIが画像から文字を読む | 金額と内訳の合計が合っているか |
| 手書きの複写式 | AIが読み、項目ごとに候補を出す | 数字の桁と、読みにくい文字 |
| Excelの自作の表 | 会社ごとに、どのセルに何があるかを覚えさせる | 協力会社が様式を変えたとき |
| 指定様式 | 欄の位置が決まっているので、そのまま読む | 空欄と、選択肢の丸の付け方 |
読み取りの精度を上げるうえで効くのは、会社ごとの癖を覚えさせることです。たとえば「この協力会社が書く現場名は、自社のこの工事番号」という対応表を持っておけば、工事名の書き方が違っても自動で工事番号に置き換えられます。また、生成AIを組み合わせると、「今回出来高」「当月請求額」「今回請求金額」のように欄の名前が違っても、同じ項目として扱いやすくなります。読み取った結果は、注文残と合わない行や、読み取りに自信のない欄だけに色を付け、人はそこを見るだけにします。
- 届いた請求書を1枚ずつ開き、工事名と金額の位置を探す
- 工事名から工事台帳を引き、自社の工事番号を調べる
- 金額と内訳を会計ソフトに手で打ち込む
- 注文書の綴りを出し、残額を電卓で確かめる
- 合わない分は協力会社に電話で問い合わせる
- 届いた請求書を、紙もPDFもまとめて決まった場所に入れる
- AIが工事番号・注文番号・金額・内訳を読み取り、入力欄に並べる
- 注文残と差がある行や、読み取りが怪しい欄だけに色が付く
- 担当者は色の付いた所だけを確認して直す
- 確認が済んだものを会計ソフトに取り込む
5. 指定様式への移行期間の進め方
指定様式に切り替える月を決めても、その月からすべてがそろうことはありません。しばらくは指定様式と従来の請求書が混ざって届く前提で、両方を受け付ける移行期間を置きます。読み取りのしくみを先に動かしておけば、移行期間中も入力の手間が増えません。
- 切り替えの3か月前社内で項目と様式を決め、頼む協力会社の順番を一覧にする。読み取りのしくみの準備も始める
- 切り替えの2か月前依頼文と記入例を送り、協力会や安全協議会の集まりで説明する
- 切り替えの1か月前前月分などで試しに出してもらい、書き方の迷いを拾って様式と記入例を直す
- 切り替えの月指定様式と従来の請求書の両方を受け付け、どちらも読み取りで入力する
- 切り替えの後の数か月まだの会社に個別に声をかけ、どうしても難しい会社は読み取りで対応すると決める
- 切り替えから半年ほど空欄が多い項目や問い合わせの多かった点を見直し、様式の版を更新する
- ・移行期間中は請求の締め日と支払日を変えない。様式と締め日を同時に変えると、協力会社も自社も混乱する
- ・受付の窓口を一つにまとめる。請求書の送り先のメールアドレスとFAX番号を決め、工事担当者あての個別の受け取りをやめてもらう
- ・協力会社ごとの切り替え状況を一覧にし、「指定様式」「表紙のみ」「従来のまま」の別を記録する
- ・様式の版番号を決め、古い版で届いたときは次回から新しい版を使うよう一言添えて受け付ける
6. 入力のあとの照合と支払処理までつなげる
入力が速くなっても、そのあとの照合が手作業のままだと、締めの時期の忙しさはあまり変わりません。請求書の入力と同時に、注文書や出来高の確認まで流れるようにしておくと、担当者の仕事は「合わないものを確かめる」ことに絞られます。指定様式に注文番号を必ず書いてもらう理由も、この照合を自動にするためです。
- ・注文書・注文請書のデータと、請求書の注文番号で突き合わせる
- ・前回までの請求額と今回請求額の合計が、契約金額を超えていないかを確かめる
- ・前回の請求書に書かれた累計と、今回の「前回までの請求額」が合っているかを確かめる
- ・出来高の査定が必要な請求は、工事担当者に確認を回し、承認されたものだけを支払の対象にする
- ・確認が済んだものから支払予定表と振込データをつくる
工事担当者の確認は、現場にいることが多いため、事務所に戻るのを待つと支払の準備が遅れます。読み取った請求の内容を担当者のスマホに送り、確認できたら返してもらう流れにすると、紙の回覧を待たずに済みます。どこまでを事務で確かめ、どこからを工事担当者が判断するかの線を先に決めておくと、確認の行き違いが減ります。
7. 取り組みを始める前に社内で決めておくこと
- ・様式の窓口になる担当者を一人決める。協力会社からの質問を一か所で受ける
- ・社内の工事番号の振り方がそろっているかを確かめる。社内でばらついていれば、協力会社に頼む前にそろえる
- ・注文書に注文番号を必ず書く運用にする。注文書側に番号がないと、請求書に書いてもらいようがない
- ・電子で受け取った請求書をどこに、どの名前で保存するかを決める
- ・読み取りのしくみや入力の道具を入れる費用に、補助金を使うかどうかを検討する
補助金を考える場合、国のデジタル化・AI導入補助金(通常枠)は、事務局に登録されたITツールの導入が対象で、事務局に登録された支援事業者と一緒に申請します。2026年度の1次締切は9月29日17時で終わっており、2次以降は事務局の発表を待つことになります。交付の決定より前に契約・支払いをしたものは対象外になるため、補助金を使うつもりなら、発注の時期を公募の日程に合わせて組み立てます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になるもの | 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア・クラウドサービスの利用料、導入の支援費用など) |
| 補助の額 | 業務プロセスが1〜3つなら5万〜150万円、4つ以上なら150万〜450万円 |
| 補助率 | 1/2以内(最低賃金に近い賃金の事業者は2/3以内) |
| 締切 | 1次締切は2026年9月29日17時。2次以降は事務局の発表を確認 |
| 注意 | 交付の決定より前に契約・支払いをしたものは対象外。導入後に効果の報告が求められる |
次の一歩としては、先月届いた協力会社の請求書を形ごとに分け、「指定様式に変えてもらえそうな会社」「表紙だけなら頼めそうな会社」「読み取りで対応する会社」の3つに仕分けてみてください。仕分けができれば、頼む順番と読み取りで補う範囲が見え、移行の日程も組めます。
