過去の見積書の探し方|品名・客先・図番ですぐ見つかる保存ルール
- ✓過去の見積書が見つからない原因は、探し方より「置き場所と名前が人ごとにばらばら」なことにある
- ✓ファイル名は「日付・客先・品名・図番・見積番号・版」の順に固定し、フォルダは浅く、横断して探す役目は見積一覧表に任せる
- ✓すでにある過去分は全部やり直さず、直近の分とよく引く客先から名前を付け直し、一覧表に載せていく
1. 過去の見積書が見つからないのは、置き場所と名前がばらばらだから
「去年、同じ客先に似た部品を出したはずだが、いくらで出したのか分からない」。見積を担当している方なら、共有フォルダを開いたまま手が止まった経験があると思います。探しても見つからないので、結局ゼロから積み直す。あるいは前回の担当者に聞きに行き、その人が外出していれば返事を待つ。過去の見積書は社内にあるのに、使える形になっていない。これが見積に時間がかかる原因のひとつです。
見つからない理由は、探す人の腕ではなく、保存のしかたにあります。置き場所が人によって違い、ファイル名の付け方も人によって違う。すると検索窓に何を入れればよいか分からず、それらしいファイルを一つずつ開いて中身を確かめるしかなくなります。社内を見回すと、見積書はたいてい次のような場所に散らばっています。
- ・担当者ごとの個人フォルダやデスクトップ
- ・共有フォルダの中の「見積」「客先名」「年度」など、系統の違う複数のフォルダ
- ・メールの送信済みフォルダに残った添付ファイル(社内に保存されていないもの)
- ・紙で出した見積の控えを綴じたファイル
- ・見積システムや販売管理のしくみの中(担当者しか開き方を知らない)
- ・「見積書(最新)」「見積書_修正2」「コピー ~ 見積書」など、中身の分からない名前のファイル
この記事では、こうした状態から抜け出すために、保存のルールを「探すときの手がかり」から逆算して決める方法を書きます。新しく作る見積の保存ルールと、すでにたまっている過去分の整理の順番を分けて扱います。特別な道具は使わず、いまある共有フォルダと表計算ソフトで始められる内容です。
2. 探す手がかりを「品名・客先・図番」の3つにそろえる
過去の見積書を探すとき、人の頭に浮かぶのはだいたい3つです。「どこの客先に出したか」「何という品物か」「どの図面か」。日付は「去年の春ごろ」くらいしか覚えていないことが多く、手がかりとしては弱めです。そこで、保存のルールはこの3つで引けることを第一に決めます。あわせて、社内で振る見積番号を持っておくと、受注後に注文書と見積を突き合わせるときに迷いません。
| 手がかり | 使う場面 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 客先 | 同じ客先への過去の出し値とそろえたい | 正式社名ではなく、社内の略称か客先コードを一つに決める |
| 品名 | 形や加工が似た部品の値段を参考にしたい | 呼び名のゆれ(ブラケット・金具・ステーなど)を代表の呼び名に寄せる |
| 図番 | 同じ図面の再見積や、改訂版の見積 | 客先の図番をそのまま書き、改訂記号まで入れる |
| 見積番号 | 受注後に注文書と見積を突き合わせる | 社内で連番を振り、書類と一覧表の両方に書く |
建設業の場合は、図番の代わりに「工事名(現場名)」と「工種」を手がかりにすると探しやすくなります。元請ごとに書式が違っても、自社側の保存ルールを一つにしておけば、あとから引けます。製造業でも、客先から図番が出ない引き合い(現物合わせや口頭の依頼)があります。その場合は「図番なし」と決まった書き方で入れ、空欄にしないことで、検索で漏れなく拾えるようにします。
3. ファイル名の付け方を一つに決めて、全員で同じ順に書く
共有フォルダの検索窓は、ファイル名に入っている言葉なら素早く拾ってくれます。逆に言えば、ファイル名に品名や図番が入っていなければ、検索では見つかりません。そこで、ファイル名に入れる項目と順番を固定します。おすすめの順番は次のとおりです。
- ・提出日(8桁。先頭に置くと、並べたときに日付順になる)
- ・客先の略称または客先コード
- ・品名(代表の呼び名)
- ・図番と改訂記号(図番がなければ「図番なし」)
- ・見積番号
- ・版(r1、r2 のように出し直すたびに上げる)
ルールが崩れる原因は、細かいところの迷いです。たとえば「最新」「修正」「確定」という言葉は、時間がたつと何が最新か分からなくなるので使いません。版は数字で上げます。客先の略称は人によって変わりやすいので、略称の一覧を1枚つくり、共有フォルダの一番上に置いておきます。品名も同じで、社内でよく使う品名を十数個ほど「代表の呼び名」として決めておくと、検索のときに言葉が合わずに見落とすことが減ります。
- ・区切り記号は一種類。「_」と「-」を混ぜない(図番の中の「-」はそのまま残す)
- ・全角と半角を混ぜない。英数字は半角にそろえる
- ・客先略称の一覧と、品名の代表の呼び名の一覧を共有フォルダの先頭に置く
- ・出し直したら版を上げ、前の版は消さずに残す
- ・ファイル名が長くなりすぎるときは、品名を短くする(図番と見積番号は削らない)
4. フォルダは浅くし、分け方の軸は一つだけにする
フォルダの分け方は、社内で議論になりやすいところです。年度で分けたい人、客先で分けたい人、担当者で分けたい人がいて、それぞれに理由があります。ただ、軸を二つ三つと重ねると、同じ見積をどこに入れるかで迷い、結局ばらばらになります。それぞれの分け方の向き不向きを並べると次のようになります。
| 分け方 | よいところ | 困るところ |
|---|---|---|
| 年度ごと | 古い分をまとめて片付けやすい | 客先で探すと、年度をまたいで何か所も開くことになる |
| 客先ごと | 同じ客先の出し値の履歴がまとまる | 品名や図番で客先をまたいで探しにくい |
| 担当者ごと | 作った本人には分かりやすい | 異動や退職で、どこに何があるか分からなくなる |
| 品目ごと | 似た部品の見積が並ぶ | どの品目に入れるか、人によって線引きが迷う |
迷ったら「客先ごと」を一段目にし、その下を年度で分ける二段までにとどめるのが扱いやすい形です。見積は客先との取引の流れで見返すことが多く、担当者が替わっても客先は変わらないからです。品名や図番で客先をまたいで探したいときは、フォルダではなく、このあと書く見積一覧表とファイル名の検索に任せます。フォルダに全部の役目を持たせようとしないことが、長続きのこつです。
もう一つ、作りかけの見積と、客先に出した見積を分けておきます。客先フォルダの中には「提出済み」だけを置き、作業中のものは担当者ごとの作業用フォルダに置く。提出したら名前をルールどおりに付けて客先フォルダへ移す。こうすると、客先フォルダを開けば出した見積だけが並び、下書きや計算途中のファイルと混ざりません。
5. 見積一覧表を付けて、品名・図番から横断して引く
ファイル名とフォルダが整っても、それだけでは「この品名を、どの客先に、いくらで、何回出したか」を一度に見ることはできません。そこで、見積を出すたびに1行ずつ書き足す一覧表(見積台帳)を一つ持ちます。表計算ソフトの表で十分です。大事なのは、1件の見積が1行になっていることと、その行から実際のファイルへすぐ飛べることです。列は多くしすぎず、次のくらいから始めます。
| 列名 | 書く内容 | いつ書くか |
|---|---|---|
| 見積番号 | 社内の連番 | 番号を取ったとき |
| 提出日 | 客先に出した日 | 提出したとき |
| 客先 | 略称の一覧にある略称 | 番号を取ったとき |
| 品名・図番 | 代表の呼び名と、図番・改訂記号 | 番号を取ったとき |
| 数量・見積金額 | 見積書に書いた数量と合計 | 提出したとき |
| 前提条件 | 材質・加工・納期・支給品の有無など | 提出したとき |
| 結果 | 受注・失注・保留 | 客先から返事が来たとき |
| 保存場所 | ファイルへのリンク | 提出したとき |
| 担当者 | 作った人の名前 | 番号を取ったとき |
見落とされがちなのが「前提条件」と「結果」の列です。過去の金額だけを見ても、そのときの材質や数量、支給品の有無が今回と違えば参考になりません。前提条件が一言でも書いてあれば、比べてよい見積かどうかがすぐ分かります。また、結果の列があると「この値段で取れた」「この値段では落ちた」が分かり、次の見積の判断材料になります。一覧表は単なる索引ではなく、自社の見積の経験をためておく場所になります。
- 01見積番号を取る一覧表に新しい行を作り、番号・客先・品名・図番・担当者を書く
- 02作業用フォルダで作る下書きや計算途中のファイルは担当者の作業用フォルダに置く
- 03ルールどおりの名前で保存提出する版をファイル名のルールで保存し、PDFも同じ名前で残す
- 04客先フォルダへ移して提出提出済みのものだけを客先フォルダへ。メールで送ったら同じものがそこにあるか確かめる
- 05一覧表を仕上げる提出日・金額・前提条件・保存場所のリンクを書く
- 06結果を書く受注・失注・保留が決まったら結果の列を埋める
6. すでにある過去分は、新しいものとよく引く客先から整理する
新しいルールを決めると、次に気になるのが何年分もたまった過去の見積書です。これを全部ルールどおりに付け直そうとすると、通常の仕事の合間ではまず終わりません。途中で止まり、新旧のルールが混ざった状態が一番探しにくくなります。過去分は「使う見込みが高いものから」順に手を付け、使う見込みの低いものは、手を付けずにまとめて置いておく、と割り切ります。
- 01置き場所を洗い出す個人フォルダ、共有フォルダの各系統、メールの送信済み、紙の控えなど、見積書がある場所を担当者ごとに書き出す
- 02期間を区切るまずは直近の分から。再見積やリピートが来やすい期間を、自社の受注の周期から決める
- 03よく引く客先から並べる引き合いの多い客先、リピート品の多い客先を先にする
- 04名前を付け直して客先フォルダへ元のファイルはコピーで残し、ルールどおりの名前を付けたものを客先フォルダに置く
- 05一覧表に登録する金額や結果が分からないものは空欄でよい。客先・品名・図番・保存場所だけは埋める
- 06残りは旧見積フォルダへ手を付けない古い分は一か所にまとめ、名前は変えずに検索だけできる状態にしておく
作業の分担は、見積を作った本人に自分の分を任せるのが確実です。品名の呼び名のゆれや、どれが最終版かを一番知っているのは作った人だからです。ただ、本人任せにすると後回しになりやすいので、「毎週何曜日の夕方に一時間」のように時間を決め、事務の方が進み具合を一覧表で確かめる形にします。退職や異動が決まっている担当者がいれば、その人の分を一番先にします。
紙の控えしかない見積は、いきなり全部をスキャンする必要はありません。直近の分とよく引く客先の分だけを読み取って保存し、一覧表に1行ずつ載せます。紙の綴じ込みには、一覧表の見積番号を書いた付せんを貼っておくと、紙と表のどちらからでもたどれます。
7. 保存のルールを続けるための社内の決めごと
ルールは決めた直後はみんな守りますが、忙しい時期を一度越えると崩れ始めます。崩れにくくするには、ルールを覚えてもらうより、守らないと先に進めない形にしておくほうが効きます。次のような決めごとを、見積に関わる全員で共有しておきます。
- ・見積書の書式の右上に見積番号の欄を作り、番号がないと出せないようにする
- ・ファイル名のルールと例を、見積書の書式の隅や共有フォルダの先頭に貼っておく
- ・客先略称と品名の代表の呼び名は、追加したい人が事務に申し出て一覧に足す(勝手に作らない)
- ・月に一度、客先フォルダにルール外の名前のファイルがないかを事務が見て、本人に直してもらう
- ・新しく入った人には、最初の見積を出すときに一連の流れを横について一度見せる
- 前回の担当者に「どこに入れた?」と聞いて回る
- それらしいファイルを一つずつ開いて中身を見る
- メールの送信済みを日付でさかのぼって添付を探す
- 見つからず、ゼロから積み直す
- 見つかっても、どれが最終版か分からない
- 一覧表で品名や図番を絞り込み、行のリンクからファイルを開く
- 客先フォルダを開けば、提出済みの見積が日付順に並ぶ
- 前提条件の列で、今回と比べてよい見積かをすぐ判断できる
- 結果の列で、通った値段と落ちた値段を確かめてから見積に入れる
- 版の数字で、最後に出したものがひと目で分かる
まず手を付けるのは、見積に関わる人を集めて、ファイル名の順番、客先略称の一覧、フォルダの一段目を決めることです。ここは半日もあれば決まります。次に、見積一覧表の列を決め、今日から出す見積は全部この流れに乗せます。過去分の整理はその後で、直近の分とよく引く客先から少しずつ進めます。新しく出す分がルールどおりにたまっていけば、過去分の整理が途中でも、探せる範囲は日ごとに広がります。
一覧表に行がたまってくると、そこから先の使い道も見えてきます。品名と前提条件が似た過去の見積を並べて比べる、受注できた見積の傾向をつかむ、さらには過去の見積を元に新しい見積の下書きを作る、といった使い方です。どれも、過去の見積が同じルールで並んでいることが前提になります。保存のルールづくりは、見積の時短を進めるための土台の作業です。
