四日市・鈴鹿の製造業がDXを始めるときの相談窓口と補助金
- 公式情報の確認日
- ✓三重県には、県のワンストップ窓口「みえDXセンター」と、国が設置した無料の「三重県よろず支援拠点」がある
- ✓県の生産性向上・業態転換支援補助金と、みえDX・AIトライアルサポートは、2026年度の募集がすでに終わっている
- ✓次の公募までに、窓口で始める業務を決め、国の補助金も含めて計画を立てておく
1. 四日市・鈴鹿の製造業とDXの題材
三重県の北部、北勢地域には、四日市の化学・素材の工場群や、鈴鹿を中心とする自動車関連の工場があり、その周りに設備の保全や部品の加工、物流などを担う中小の会社が数多くあります。桑名や亀山、いなべにも工場が広がっています。四日市や桑名は名古屋から電車で30分ほどの距離にあり、愛知の取引先とのやりとりも多い地域です。
この地域の中小の製造業でDXの題材になりやすいのは、取引先に出す記録と、取引先から届く書類です。化学・素材の工場に出入りする協力会社では、点検や作業の記録を決まった書式で残し、提出することが求められます。自動車関連の部品メーカーでは、取引先ごとに書式の違う注文書や内示を受け取り、社内の台帳に入力しています。どちらも、紙と手入力が残りやすい作業です。
| 業種 | 手間になりやすい作業 | しくみで変えられること |
|---|---|---|
| 化学・素材の工場の協力会社 | 点検・作業の記録を紙に書き、清書して提出 | 現場で画面に入れ、提出用の書式で出力する |
| 自動車関連の部品メーカー | 取引先ごとに書式の違う注文書・内示の入力 | AIで読み取り、確かめるだけで台帳に入る |
| 半導体関連の協力会社 | 作業手順書と安全のルールの管理と周知 | 手順書を探しやすくし、改訂を現場に届ける |
| 食品の製造 | 日々の温度や衛生の記録と帳票づくり | 記録を1つのしくみにまとめ、帳票を自動でつくる |
どの題材も、生産の設備を入れ替えずに始められます。まずは事務と記録の手間を1つ減らし、その手応えをもとに次の業務へ広げていく進め方が、中小の製造業には合っています。何から始めるかを決める段階では、三重県内の公的な相談窓口が使えます。
2. 三重県で相談できる公的な窓口
四日市・鈴鹿の会社が使いやすい公的な相談窓口は、県が設けたDXの窓口、国が設けた経営の相談所、地元の商工会議所の3つに分けられます。どれも特定の製品を売る立場にないため、何から始めるかを中立に考える場として使えます。
| 窓口 | 相談できること | 場所・申し込み |
|---|---|---|
| みえDXセンター(三重県) | DXのワンストップ相談窓口。登録された専門家・企業が課題の解決を支援 | 三重県庁内(津市)。相談・予約の受付フォームから申し込む |
| 三重県よろず支援拠点(国が設置) | 経営の相談を何度でも無料で受ける。IT活用やWebの活用の相談にも対応 | 津市(三重県合同ビル)。出張相談もある |
| 四日市商工会議所・鈴鹿商工会議所 | 県のDX推進の事業や、みえDXセンターの案内 | 各商工会議所 |
みえDXセンターは、県民や事業者、市町がDXに取り組む最初の一歩を支える、県のワンストップの窓口です。三重県よろず支援拠点は、国が設置した経営の相談所で、何度でも無料で相談できます。売上や経営の相談が中心ですが、IT活用やWebの活用の相談にも応じています。窓口は津市にありますが、出張相談も行っているため、四日市や鈴鹿の会社も使えます。会員の会社であれば、地元の商工会議所に県や国の制度の案内を聞くのも近道です。鈴鹿商工会議所も、みえDXセンターの相談窓口をホームページで案内しています。
3. みえDXセンターの使い方
みえDXセンターへの相談は、センターのWebサイトにある相談・予約の受付フォームから申し込みます。申し込みのあとに初回の聞き取りがあり、困りごとに応じて、その後の支援の形が決まります。
- 01受付フォームで申し込みセンターのWebサイトから相談を申し込む
- 02初回の聞き取り必要に応じて1時間ほど、困りごとを聞き取る
- 03支援の形を決める課題に応じて、その後の対応を決める
- 04専門家による支援登録された専門家や企業が、最大3回まで課題の解決を支援する
専門家による支援は、最大3回までと決まっています。回数が限られているため、聞き取りの前に困りごとを整理しておくと、限られた回数を有効に使えます。「DXを進めたい」という漠然とした相談よりも、「取引先ごとに違う注文書の入力に、毎日どれくらいの時間がかかっている」という具体的な相談のほうが、専門家も具体的な答えを返せます。
- ・手間のかかっている作業と、その作業をしている人
- ・1日や1か月あたり、その作業にかかっている時間のおおよその量
- ・今使っている帳票・Excel・システムの見本
- ・取引先から求められている記録や書式の決まり
4. 点検記録のデジタル化を例にした進め方
窓口で始める業務が決まったら、実際にどう進めるかを考えます。ここでは、化学・素材の工場に出入りする協力会社でよく見られる、点検や作業の記録を例にとります。現場で紙の記録用紙に書き込み、事務所に戻ってからExcelで清書し、取引先の書式に合わせて提出する、という流れです。書き写しが2回あり、清書のあいだに書き間違いや読み間違いが入り込みます。
- ・まず、今の記録用紙と、取引先に提出している書式を並べ、項目を突き合わせる
- ・現場で入れる項目を、選ぶだけ・数字を入れるだけの形にできるか確かめる
- ・提出の書式は取引先の決まりに合わせ、しくみから自動で出力する
- ・最初は1つの現場・1種類の点検から始め、慣れてから広げる
この進め方のよいところは、取引先に提出する書式を変えずに、社内の書き写しだけをなくせることです。取引先に何かをお願いする必要がないため、社内の判断だけで始められます。現場の担当者にとっても、記録用紙がタブレットの画面に変わるだけで、書く項目は変わりません。記録がしくみに残れば、過去の点検結果をさかのぼって探すのも早くなり、取引先からの問い合わせにもすぐに答えられます。
5. 三重県の補助と支援(2026年度)
三重県には、DXや生産性の向上に使える県の補助金と、専門家の伴走を無料で受けられる支援がありました。どちらも2026年度の募集はすでに終わっています。次年度も同じ形で続くとは限りませんが、県がどのような取り組みを後押ししているかを知る手がかりになります。
| 制度 | 内容 | 2026年度の募集 |
|---|---|---|
| エネルギー価格等高騰対応 生産性向上・業態転換支援補助金 | 補助率1/2以内。賃上げコース 上限200万円/一般コース 上限100万円 | 第3期は8月18日〜9月10日(終了) |
| みえDX・AIトライアルサポート | 補助金ではなく、DX・AIの専門家が現状の把握から計画づくり、デジタルツールの活用まで無料で伴走。ツールの導入費は自社の負担 | 9月1日で申し込みを終了 |
生産性向上・業態転換支援補助金は、2026年度は第3期まで募集があり、いずれも締め切られています。みえDX・AIトライアルサポートは、お金を補助するのではなく、専門家が無料で伴走する支援で、ツールを導入する費用は自社で負担します。どちらも、次年度の公募があるかどうかを県の公式ページで確かめます。県の制度は年度の途中で募集が始まり、短い期間で締め切られることがあるため、募集が出てから準備を始めると間に合わないことがあります。
6. 四日市・鈴鹿の会社も使える国の制度
県の制度の募集が終わっていても、国の制度は使える場合があります。国の制度は三重県の会社も同じ条件で申し込めるため、県の次年度の公募を待つあいだに、国の制度で先に進める選び方もあります。
| 制度 | 向いている使い方 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 業務に合わせてつくる設備・システム | 上限は従業員数により750万円〜8,000万円・中小企業の補助率1/2(特例で2/3) |
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 登録された既製のITツールの導入 | 5万円〜450万円(業務プロセスの数による)・補助率1/2以内 |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 業務に直結した社員の研修 | 中小企業は研修経費の75%。2026年度末までの時限措置 |
省力化投資補助金の第8回は、2026年9月18日に受付が始まり、確認した時点で締切は公表されていませんでした。デジタル化・AI導入補助金は、1次の締切が9月29日で、2次以降の日程は公表されていませんでした。人材開発支援助成金は、2026年8月の改正で、職務に直接関係しない一般的な研修が対象から外れています。社員向けのAI研修に使う場合は、業務に直結した内容かどうかを先に確かめます。
7. 2026年度の募集の時期と、次に備える順番
三重県と国の制度の、2026年度の募集の時期を並べると次のとおりです。県の制度は夏から秋にかけて締め切られ、国の制度は秋に動きがありました。
- 8月18日〜9月10日三重県 生産性向上・業態転換支援補助金 第3期
- 9月1日みえDX・AIトライアルサポートの申し込みを終了
- 9月18日〜国 省力化投資補助金(一般型)第8回の受付開始(締切は確認時点で未公表)
- 9月29日国 デジタル化・AI導入補助金 1次締切
次の公募に備えるには、募集が出る前に「何を入れるか」を決めておくことが欠かせません。相談窓口で始める業務を決め、入れるしくみの見積を取っておけば、募集が始まってからは事業計画づくりに集中できます。
- ・秋から冬:窓口に相談し、始める業務と入れるしくみを決める
- ・冬から春:見積を取り寄せ、効果の見込みと事業計画の下書きをつくる
- ・募集が出たら:県と国の制度を比べ、合う制度に申請する
- ・交付の決定のあと:発注し、使いながら直していく
この並びは目安で、年度によって募集の時期は前後します。県や国の公式ページ、商工会議所の案内をときどき確かめ、募集が出たらすぐに動けるようにしておきます。
- 募集が出てから、何を入れるかを考え始める
- 見積や計画が間に合わず、締切に追われる
- 急いで決めたしくみが、現場に合わない
- 募集の前に、窓口で始める業務を決めておく
- 見積を取り寄せ、計画の下書きをつくっておく
- 募集が出たら、合う制度を選んで申請する
8. 補助金を使うときの注意点
県の制度でも国の制度でも、補助金には共通する決まりがあります。決まりを外れると対象から外れるため、申し込む前に次の点を確かめます。
- ・交付の決定より前に契約・発注・支払いをしたものは、対象にならないのが原則
- ・補助金は後払い。いったん全額を立て替えてから、報告を経て支払われる
- ・同じ経費に、複数の補助金を重ねて使えないことが多い
- ・導入したあとも、成果や賃上げの状況の報告を求められる制度がある
東海DX伴走室は、四日市・桑名・鈴鹿・津を中心に三重県内の製造業へ伺い、困りごとの整理から、補助金に合う計画づくり、しくみの開発、使い始めてからの手直しまでを一緒に進めています。県の窓口で方針を固めたあと、開発や研修の段階でお手伝いする形もとれます。
