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業務システム

業務システムの要件の洗い出し方|現場・事務・管理職への聞き取り質問例

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この記事の要点
  • ✓作り直しの要件は、現場・事務・管理職の3つの立場から別々に聞き取ると、今の業務の見落としが減ります。
  • ✓例外処理や月末・年1回だけの作業は、「最近いちばん面倒だった時」「いつもと違った時」を具体的に聞くと出てきます。
  • ✓聞き取った内容は業務一覧表に1行1作業で書き、現場に読み返してもらってから要件として固めます。

1. 作り直しで要件が漏れるのはなぜか

kintoneやExcel、Accessで回してきた業務の仕組みを作り直すとき、いちばん困るのは、新しいシステムが動き始めてから「あの作業ができない」と分かることです。原因の多くは、作り手の腕ではなく最初の聞き取りにあります。今の仕組みは何年もかけて継ぎ足されてきたため、どこにどんな作業が隠れているかを一人で全部知っている人はまずいません。工場長や工事部長は現場の流れを知っていても、月末に経理が手で直している数字までは知りません。事務の担当者は伝票の流れに詳しくても、現場で紙に書き足しているメモの存在は知らないことがあります。

  • ・毎日の作業は話に出るが、月末・決算期・年1回の作業は聞かれないと出てこない
  • ・急ぎ・返品・やり直しなどの例外対応を、本人が「作業」だと思っていない
  • ・Excelの別シート、手書きのメモ、電話での確認など、システムの外でやっている作業が抜ける
  • ・管理職が「こうなっているはず」と答え、実際の手順と食い違ったまま話が進む
  • ・特定の人しかできない作業が、その人の不在時に誰がどうしているか分からない

業務システムの要件の洗い出しは、「新しいシステムに何をさせるか」を決める前に、「今、誰が、いつ、何を見て、何を作っているか」を一つずつ書き出す作業です。欲しい機能の希望を集めるところから始めると、声の大きい人の要望ばかりが並び、地味でも欠かせない作業が抜けます。希望は後からいくらでも出てきますが、今やっている作業の見落としは、動き始めてからしか気づけません。まずは今の仕事を漏れなく並べ、そのうえで希望を足す順番にします。

2. 聞き取りの前に用意するもの

担当者をいきなり会議室に呼んで「何か困っていることはありますか」と聞いても、話は深まりません。聞かれた側は何を答えればよいか分からず、思いつく不満を二つ三つ挙げて終わってしまいます。聞き取りの前に、作り直す業務の範囲を決め、今使っている帳票やExcelの実物をそろえ、誰に聞くかを立場ごとに決めておきます。準備に手間をかけるほど、聞き取りそのものは短く済みます。

図1 要件の洗い出しの進め方
  1. 01範囲を決める「注文を受けてから請求書を出すまで」のように、作り直す業務の入口と出口を決める
  2. 02実物を集める今使っているExcel、Accessやkintoneの画面の印刷、紙の伝票、FAXの注文書、日報を1部ずつ集める
  3. 03立場別に聞く現場・事務・管理職を分け、帳票の実物を前に置いて聞き取る
  4. 04業務一覧表に書く聞いた内容を1行1作業で書き、呼び名をそろえる
  5. 05読み返してもらう部署ごとに一覧表を渡し、抜けや食い違いを書き込んでもらう
  6. 06要件として固める新しい仕組みで自動にする作業、手で残す作業、やめる作業を決める
聞き取りは一度で終わらせず、一覧表にまとめた後にもう一度確認の場を設けます。

聞く相手は、立場ごとに分けて選びます。現場の担当者と課長を同じ席に呼ぶと、担当者は「本当はこうしている」という話をしにくくなります。また、同じ作業でもベテランと入社数年の人では手順が違うことがよくあります。ベテランは頭の中で判断している部分を飛ばして話し、若手は教わったとおりの手順を話すため、両方から聞くと判断の中身が見えてきます。担当者が休んだ日に代わりをしている人にも声をかけておくと、引き継ぎメモに書かれていない作業が出てきます。

ポイント聞き取りの場には、今使っている帳票やExcelの実物を必ず持ってきてもらいます。話だけで聞くより、「この欄には何を書いていますか」「この色付きのセルは何の印ですか」と指さして聞くほうが、本人も忘れていた作業を思い出します。

3. 現場の担当者に聞く質問例

製造現場の班長、工事現場の職長や現場代理人など、実際に手を動かしている人からは、作業の順番と、その場で判断していることを聞き出します。「普段どうしていますか」と聞くと、きれいに整えた手順が返ってきがちです。それよりも「昨日の作業を朝から順に教えてください」と、特定の一日に絞って聞くほうが、実際の動きに近い話が出てきます。

表1 現場の担当者への質問例と、拾いたいこと
質問例拾いたいこと
昨日の作業を、朝来てから帰るまで順に教えてください実際の作業の順番と、作業の切れ目
仕事を始める前に、何を見て段取りを決めていますか作業指示書・工程表・ホワイトボードなど、判断のもとになる情報
その紙やExcelは、誰がいつ作って、どこに置いてありますか情報の出どころと、受け渡しの経路
書いた日報や記録は、その後どこへ行きますか入力した情報を後で誰が使っているか
同じことを二度書いている所はありますか転記・二重入力の場所
分からない時、誰に何で聞いていますか電話・口頭など記録に残らないやりとり
この作業ができる人が休んだ日は、どうしていますか属人化している作業と、代わりの手順
出典:東海DX伴走室編集部の整理

答えを聞いたら、「それはなぜですか」と一歩だけ掘り下げます。たとえば「出荷前に図番をもう一度確かめている」と聞いたら、なぜ確かめるのかを聞きます。過去に取り違えがあったから、という答えなら、新しい仕組みでも同じ確認が要るということです。逆に「前の担当者がそうしていたから」という答えなら、作り直しを機にやめられる作業かもしれません。理由まで聞いておくと、後で残す・やめるを判断しやすくなります。

「システムの外」の作業を見つける質問

  • ・ホワイトボードや掲示板に書いて共有していることはありますか
  • ・自分のノートや手帳、スマホのメモに控えていることはありますか
  • ・システムから印刷した紙に、手で書き足していることはありますか
  • ・付箋やマーカーで印を付けて区別しているものはありますか
  • ・グループのチャットや電話でだけ伝えていることはありますか

4. 事務・経理の担当者に聞く質問例

総務・経理・工務の事務担当者は、現場から上がってきた情報を受け取り、取引先や会計に渡す役割を担っています。ここで聞き取るのは、情報の受け取り方、手直しの仕方、締めの手順です。事務の担当者は、現場の書き間違いや取引先ごとの事情を、黙って直していることが少なくありません。この「黙って直している作業」は、本人にとっては当たり前なので、こちらから聞かないと出てきません。

  • ・現場から上がってくる日報や伝票で、毎回手直ししている所はどこですか
  • ・取引先によって、請求書の様式や締め日、送り方が違うものはありますか
  • ・同じ内容を、システムと会計ソフトとExcelのように何か所に入れていますか
  • ・誰かに確認しないと入力できない項目はありますか。その時は誰に聞いていますか
  • ・上司に毎月出している集計表は、どこから数字を拾って作っていますか
  • ・過去の記録を探すとき、何を手がかりにどこを探していますか
  • ・入力を間違えた時、どうやって気づいて、どう直していますか

事務の聞き取りでは、作っている帳票や集計表を一枚ずつ机に並べ、「この表は誰が見ていますか」「見なくなったらどうなりますか」と聞いていきます。誰も見ていない表が見つかれば、作り直しでやめられます。反対に、社長だけが毎月見ている表が見つかれば、それは新しい仕組みで必ず出せるようにしておく必要があります。

注意Excelの関数やマクロ、Accessのクエリで自動計算している部分は、使っている本人も中身を覚えていないことがあります。計算式を印刷するか画面を残し、「どの数字をどう計算しているか」を言葉で書き出しておきます。ここが抜けると、新しい仕組みで同じ金額や数量が出なくなります。

5. 管理職・経営者に聞く質問例

工場長、工事部長、経営者からは、作業の細かな手順ではなく、「何を見て判断しているか」と「今の仕組みで分からなくて困っていること」を聞きます。管理職は、現場や事務が作った情報を使う側です。どの数字をどのタイミングで見たいのかが分かれば、新しい仕組みで何を記録しておくべきかが決まります。

表2 管理職・経営者への質問例と、拾いたいこと
質問例拾いたいこと
毎朝・毎週・毎月、何の数字や表を見て判断していますか画面や帳票として必ず出す必要があるもの
今の仕組みで、知りたいのにすぐ分からないことは何ですか新しい仕組みで足したい情報
その判断を部下に任せるとしたら、何があれば任せられますか判断の基準と、それに必要な情報
取引先や元請けから、急に求められて困った資料はありますか外部への提出物と、その頻度
見積・承認・発注で、自分の確認が必要な場面はどこですか承認の流れと、承認する人の範囲
今後、人や拠点、扱う品目が増えるとしたらどこですか今は無いが将来必要になる作業
出典:東海DX伴走室編集部の整理

管理職の答えと、現場や事務の答えが食い違うことはよくあります。「承認は必ず部長が見ている」と聞いていたのに、現場では急ぎの時に事後報告で済ませている、といった具合です。こうした食い違いは、その場でどちらが正しいかを決めず、両方の答えをそのまま記録しておきます。後で三者をそろえて確かめる時の材料になり、新しい仕組みで「本来の流れ」と「急ぎの時の流れ」の両方を用意するかどうかを決める手がかりになります。

6. 例外処理と月末・年1回の作業を拾うコツ

聞き取りで最も漏れやすいのが、毎日はやらない作業と、いつもの流れから外れた時の対応です。聞き取りをした日がたまたま月の半ばなら、月末の締め作業は話題に上りません。夏に聞けば、年度末の棚卸しや決算の準備は思い出してもらえません。そこで、1年の暦を机に置き、時期ごとに「この頃だけやる作業はありますか」と順に聞いていきます。

図2 時期ごとに聞き漏らしやすい作業の例
  1. 毎週の終わり翌週の段取りの組み直し、協力会社への手配の確認、週報の取りまとめ
  2. 月末・締め日請求書の発行、納品書との突き合わせ、出来高の集計、残業時間の集計
  3. 四半期ごと取引先への実績報告、設備の定期点検の記録、単価の見直し
  4. 決算期の前後棚卸し、仕掛品や未成工事の集計、勘定の締め直し
  5. 年度替わり人の異動に伴う担当や権限の付け替え、取引先マスタや単価表の更新
  6. 年1回・不定期監査や元請けの調査への資料提出、資格や校正の期限管理、繁忙期だけの応援体制

例外処理は、「例外はありますか」と聞いても出てきません。聞かれた側は「特にありません」と答えてしまいます。代わりに、「先月いちばん面倒だった注文はどれですか」「最近、いつもと違う手順で処理したものはありますか」と、具体的な出来事を聞きます。一件思い出してもらえれば、「そういえばこういう時もある」と次々に出てくるものです。その際、実際の伝票や注文書を見せてもらうと、どこに手書きで補足したかまで分かります。

  • ・特急・割り込みの注文が入った時の段取り替え
  • ・分納・一部納品・追加発注がある時の数量と請求の扱い
  • ・返品・手直し・やり直しが出た時の記録と費用の付け替え
  • ・単価が後から決まる、または値引きが入る時の請求
  • ・取引先ごとに締め日や請求書の様式が違う時の処理
  • ・工事の途中で仕様変更や追加工事が出た時の金額の扱い
  • ・担当者が不在の時に、代わりの人が処理する手順
ポイント例外は「めったにない」と言われても書き出します。そのうえで、どのくらいの頻度で起きるか、起きた時に誰が対応しているかを一緒に聞いておきます。新しい仕組みで例外をすべて自動にする必要はなく、「手で直せる入口を残す」と決めれば足りる場合も多くあります。書き出していないと、その判断すらできません。

7. 聞き取った内容を業務一覧表にまとめる

聞き取りが終わると、手元には人ごとのメモが残ります。このメモのままでは、同じ作業が別の呼び名で何度も出てきたり、月末の作業がどこに書いてあるか分からなかったりします。そこで、聞いた内容を一つの業務一覧表に書き移します。Excelで十分です。1行に1つの作業を書き、列をそろえておくと、抜けや重なりが一目で分かるようになります。

表3 業務一覧表に入れる列の例
列の名前書く内容書き方の例
作業名何をするかを動詞で書く注文書の内容を受注台帳に入力する
担当誰が、代わりは誰か受注担当、不在時は工務課
時期・頻度いつ、どのくらいの間隔で注文が届くたび、月末にまとめて
使うもの作業のもとになる情報FAXの注文書、取引先マスタ
作るもの作業の結果できる情報受注台帳、作業指示書
例外いつもと違う時の扱い分納の時は備考欄に手書き
困りごと聞き取りで出た不満や手間同じ内容を二度入力している
新しい仕組みでの扱い自動にする・手で残す・やめる入力は自動、確認は人が行う
出典:東海DX伴走室編集部の整理
図3 聞き取りメモのままと、業務一覧表にまとめた後
導入前
  • 聞いた人ごとにノートやメモに書いてある
  • 同じ作業が「受注入力」「注文の登録」など別の名前で出てくる
  • 月末や年1回の作業がどこにあるか探さないと分からない
  • 例外の話が雑談の中に埋もれている
  • 希望と今の作業が混ざっている
導入後
  • 1行1作業で、全員の話が一枚の表に並んでいる
  • 作業の呼び名がそろい、重なりがすぐ分かる
  • 時期・頻度の列で並べ替えると、月末の作業だけを拾える
  • 例外の列を見れば、手で残す入口が必要な所が分かる
  • 希望は別の列に分け、今の作業の見落としと区別できる

書き移す時の決まりは三つです。一つ目は、作業名を「〜を〜する」という動詞の形で書くことです。「受注」だけでは、受け取るのか入力するのか確認するのかが分かりません。二つ目は、呼び名をそろえることです。部署によって同じ帳票を違う名前で呼んでいる場合は、どちらかに決めて、もう一方を括弧で添えます。三つ目は、聞き取りで出た「こうしたい」という希望を、今の作業とは別の列に書くことです。

一覧表ができたら、各行に「必ず要る」「あれば便利」「今回は見送る」の三つの区分を付けます。必ず要るのは、止まると取引先や現場が困る作業です。あれば便利は、今は手でできているが楽にしたい作業です。この区分を付けておくと、作り直しの範囲を決める話し合いが、好みの言い合いにならずに進みます。

8. 現場に読み返してもらい要件として固める

業務一覧表は、作った人だけで完成させず、聞き取りをした相手に読み返してもらいます。自分の話が表になったものを見ると、「この作業の前に、もう一つ確認がある」「この例外は取引先によっても違う」と、聞き取りの時には出なかった話が出てきます。読み返しまで済ませて、初めて要件の洗い出しが終わったと考えます。

  • ・部署ごとに、その部署に関わる行だけを印刷して渡す
  • ・抜けている作業や違っている所を、赤ペンで直接書き込んでもらう
  • ・管理職と現場で食い違った行は、三者がそろう場で一行ずつ決める
  • ・「新しい仕組みでの扱い」の列を埋め、手で残す作業も明記する
  • ・決まった内容を、作り手に渡す要件書の土台として保存する
  • ・作り始めてからも、新しく見つかった作業はこの表に書き足す

ここまで進めると、社内で作り直すにしても外に頼むにしても、「今の業務はこれで全部です」と示せる資料が手元に残ります。次の一歩としては、来週のうちに作り直したい業務の範囲を一行で書き出し、その業務で使っている帳票やExcelの実物を集めるところから始めてください。実物がそろえば、聞き取りの相手と質問は自然に決まります。

9. よくあるご質問

Q
聞き取りは誰が担当すればよいですか。
A
作り直す業務に関わっていない人が聞くと、当たり前になっている作業にも「それはなぜですか」と質問できます。社内の総務や情報担当でも構いません。外部の作り手に任せる場合も、社内の担当者が同席し、呼び名や事情の補足ができるようにしておくと聞き漏らしが減ります。
Q
現場が忙しくて、聞き取りの時間が取れません。
A
会議室に集めるより、作業の合間に横で手順を見せてもらうほうが短く済み、実際の動きもよく分かります。一度で全部を聞こうとせず、日々の作業、月末の作業、例外の対応と、テーマを分けて短く区切る方法もあります。
Q
今のExcelやAccessをそのまま渡せば、要件の代わりになりませんか。
A
今のファイルからは、入力欄や計算の決まりは読み取れますが、ファイルの外でやっている確認、手書きの補足、例外の時の対応は分かりません。ファイルは聞き取りの材料として使い、業務一覧表で外の作業を補う形にしてください。
Q
聞き取りで不満や要望ばかり出てきた時はどうすればよいですか。
A
不満や要望も貴重な情報なので、業務一覧表の「困りごと」の列や希望の列に書いておきます。そのうえで、「その不満が出る作業は、今どの順番でやっていますか」と聞き直すと、今の手順の話に戻せます。
編集部
この記事を書いた人
東海DX伴走室編集部
東海4県の製造業・建設業のDXを支援しています。制度の内容は、公開日時点の公的機関の資料をもとにしています。
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