手書きのAI-OCR精度を上げる記入欄の書式の工夫|枠・数字欄・選択式
- ✓手書きの読み取りミスは特定の欄に偏ることが多く、直した欄に印を付けて数えると、書式のどこを直すべきかが見えます。
- ✓枠を広げて罫線を薄くする、数字欄を1文字1マスに区切る、自由記入を選択式やコード欄に置き換えると、AI-OCRが迷う箇所が減ります。
- ✓社内書式は自社で作り直せますが、取引先の書式は相手の手間が減る形で一部から頼み、書式を変えたら読み取り位置の登録もやり直します。
1. 手書きの読み取りミスは書式で減らせる
手書きの伝票や申込書をAI-OCRで読ませると、数字の取り違えや、欄からはみ出した字の読み落としが目立つことがあります。そのたびに「この製品は読み取りが弱い」と考えがちですが、ミスの多くは、書く人の癖と記入欄の作りが重なって起きています。AI-OCRは、決められた枠の中から文字を切り出して読みます。枠が狭くて字が線に重なる、数字が詰めて書かれて境目が分からない、自由記入なので書き方が人によって違う。こうした状態では、読み取りの技術がどれほど上がっても、迷う箇所は残ります。
逆に言えば、紙の書式を少し直すだけで、読み取りの迷いを減らせます。ソフトを入れ替える前に、まず紙の側を見直す。この記事では、枠の大きさ、数字欄の区切り、選択式への置き換えといった、書式で直せる工夫を具体例で紹介します。読み取った後の確認のしかたは別の記事で扱っているので、ここでは「読ませる前」の工夫に絞ります。まずは、現場でよく見かけるミスの出方を挙げておきます。
- ・「1」と「7」、「0」と「6」など、形の似た数字を取り違える
- ・金額や数量の桁が1つずれて読まれる
- ・欄の線に重なった字の一部が欠けて、別の字になる
- ・枠の外に書いたメモや訂正印を、文字として拾ってしまう
- ・丸で囲んだ選択肢が、どれに付いたのか判定できない
2. 読み取りミスの原因を欄ごとに切り分ける
まず、ここ1か月ほどで読み取り結果を直した箇所を、欄ごとに数えてみてください。確認担当者が、修正した欄に印を付けておくだけで十分です。ミスがすべての欄に散らばっていることはまれで、たいていは数字欄、日付欄、品名欄など特定の欄に偏ります。偏りが分かれば、直す欄を絞り込めます。下の表は、ミスの出方ごとに、書式側でよくある原因と直し方を並べたものです。
| ミスの出方 | 書式側のよくある原因 | 書式での直し方 |
|---|---|---|
| 数字の取り違え | 1つの長い枠に数字をまとめて書かせている | 1文字ずつのマスに区切る |
| 桁ずれ | 桁の目安が紙に何もない | 位取りの線と単位を印刷する |
| 字の欠け | 枠が狭く、字が罫線に重なる | 枠を広げ、罫線を薄い色にする |
| 余計な文字を拾う | メモを書く場所がなく余白に書かれる | 備考欄を読み取り範囲の外に設ける |
| 選択の判定ミス | 選択肢を丸で囲ませている | 四角いチェック欄に印を付ける方式にする |
| 品名の誤読・表記ゆれ | 自由記入で書き方が人ごとに違う | 品番などのコード欄や選択肢に置き換える |
3. 記入欄の枠の大きさと線の色を見直す
枠は「書く人の字の大きさ」に合わせる
事務所で作った書式は、パソコンの画面で見栄えよく1枚に収まるように、枠が小さくなりがちです。ところが現場で書く人は、立ったまま、作業の合間に、ボールペンを走らせます。机で書く字より大きく、勢いのある字になります。枠が狭いと字が上下の線にかかり、AI-OCRは線と字の区別に迷います。実際に書く人に試し書きをしてもらい、字が線に触れない高さまで枠を広げてください。項目を減らしてでも、1つの枠を大きくするほうが読み取りは安定します。
罫線は薄い色、外枠と位置合わせの印ははっきり
記入欄の線が黒く太いと、文字の一部と見なされることがあります。記入欄の中の罫線は薄い色にし、帳票全体の外枠や四隅の位置合わせの印ははっきり残す、という使い分けが有効です。薄い色の線は、読み取りの設定で消せる場合があります。どの色なら消しやすいかは、使っているAI-OCRの仕様で確かめてから印刷してください。
- ・試し書きで、字が上下の線にかからない高さになっているか
- ・隣の欄との間に、はみ出しを受け止める余白があるか
- ・記入例を、記入欄の中ではなく欄の外に印刷しているか
- ・ふりがなや注意書きが、記入欄の中に入り込んでいないか
- ・押印欄やサイン欄が、読み取る欄と重なっていないか
4. 数字欄は1文字1マスに区切り、桁を固定する
数量、金額、日付、電話番号のような数字の欄は、1つの長い枠にまとめて書かせるのをやめ、1文字ずつのマスに区切ります。マスに区切ると数字どうしがくっつかず、AI-OCRが1文字ずつ切り出しやすくなります。あわせて桁の数を決めておくと、桁ずれにも気づきやすくなります。
日付は年・月・日の欄を分ける
日付を1つの欄に自由に書かせると、和暦と西暦、スラッシュとハイフン、「月」「日」の漢字の有無が混ざります。年・月・日の欄を分け、年は西暦か和暦かを印刷で固定してください。月と日は2マスずつにして、1桁のときに前を空けるのか、0を書くのかも決め、記入例で示します。
金額・数量は右詰めにして単位を印刷する
金額や数量は右から詰めて書くと決め、単位(個・本・ケース・円など)をマスの右端に印刷しておきます。3桁ごとの区切りの位置に少し太い線を入れると、書く人も、読み取り結果を確認する人も、桁を目で追いやすくなります。小数点が出る欄は、小数点の位置をあらかじめ印刷しておくと、点の書き忘れや位置の迷いを防げます。
- 長い枠に数量や金額をまとめて書いてもらう
- 読み取り結果の桁が合っているか、毎回紙と見比べる
- 「1」と「7」の判別がつかず、書いた人に電話で聞く
- 日付の書き方がばらばらで、入力前に書き直す
- 1文字1マスの欄に、右詰めで書いてもらう
- 桁が固定されているので、桁の確認は目立つ欄に絞る
- 記入例に数字の書き分けを示し、迷う字を減らす
- 年・月・日が分かれた欄から、そのまま日付として取り込む
5. 自由記入をやめて選択式・チェック欄に置き換える
手書きで最も読み取りが難しいのは、品名、作業内容、不具合の内容といった自由記入の欄です。人によって略し方も漢字の崩し方も違うため、AI-OCRが文字を正しく読めても、表記ゆれで後の集計に使えないこともあります。毎回ほぼ同じ言葉が書かれる欄は、選択式に置き換えられないか検討してください。
- ・作業区分(組立・検査・梱包・出荷など)
- ・天候、時間帯、担当の班
- ・不具合の種類(キズ・寸法・異物など)
- ・配送方法や支払方法
- ・申込書のコースや品目
丸囲みより、四角の中に印を付けてもらう
選択式にするときは、選択肢を丸で囲ませる方式より、選択肢ごとに四角いチェック欄を置いて、中に印を付けてもらう方式のほうが判定しやすくなります。丸囲みは、丸が隣の選択肢にかかったり、大きさがまちまちだったりして、どれを選んだのか迷う原因になります。チェック欄は、印の付け方(レ点か塗りつぶしか)を記入例で1つに決めておきます。選択肢どうしの間隔を広めにとると、印のはみ出しによる誤判定も減ります。
品名や取引先はコード欄を併記する
品名や取引先名は選択肢に収まりきらないことが多いので、品番や取引先コードを書く数字のマスを設けるのも1つの方法です。コードは数字なので1文字1マスで読み取りやすく、名前の表記ゆれも起きません。名前の欄は残しつつ、取り込みにはコードを使い、名前は人が確認するための欄にする、という分け方ができます。
6. 社内書式と取引先に頼む書式では進め方が違う
書式を変えられる範囲は、その書類が誰のものかで大きく変わります。社内で使う日報や作業伝票、自社が配る申込書は、自社の判断で作り直せます。一方、取引先から届く注文書や、協力会社が書く書類は、相手の書式や都合があるため、こちらの希望だけでは変えられません。違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 社内書式(自社で配る書式) | 取引先に頼む書式 |
|---|---|---|
| 変える決定 | 自社で決められる | 相手の了解が要る |
| 変えられる範囲 | 枠・マス・選択肢まで作り直せる | 記入欄の追加や書き方のお願いが中心 |
| 切り替え方 | 版を決めて一斉に替えられる | 古い書式がしばらく混ざる |
| 頼み方 | 現場への説明と記入例の配布 | 相手の手間が増えない形で提案する |
| 読めないときの扱い | 書いた人にすぐ確認できる | 確認に時間がかかるため、確認先を事前に決めておく |
取引先には「相手の手間も減る」形で頼む
取引先に書式の変更を頼むときは、こちらの都合だけを伝えると受け入れてもらいにくくなります。たとえば、自社で用意した注文用紙をFAXの送付状と兼ねて使ってもらう、記入例を付けて渡す、品番欄を設けて品名の書き間違いによる問い合わせを減らす、といった形で、相手にとっても電話での確認が減ることを伝えます。全面的な切り替えを求めず、取引の多い相手から順に、まず数字欄の書き方だけ揃えてもらうところから始めると話が進みやすくなります。
書式を変えてもらえない取引先については、無理に揃えようとせず、その相手の書類だけ読み取りの設定を個別に用意するか、確認を厚くする扱いにします。どの取引先の書類を誰が確認するかを決めておくと、読めない欄が出たときに止まらずに済みます。
7. 書式を直してから使い始めるまでの手順
書式の見直しは、一度に全部を変えるより、ミスの多い欄から順に直すほうが現場の混乱が少なく済みます。社内書式の場合は、次の流れで進めます。
- 01ミスの多い欄を洗い出す確認担当者が直した欄に印を付け、欄ごとの偏りを見る
- 02直す欄を絞る数字欄・選択式にできる欄・自由記入欄に分け、ミスの多い欄から手を付ける
- 03新しい書式の案をつくる枠の広さ、マスの区切り、チェック欄、記入例を入れて試し刷りする
- 04現場で試し書きする実際に書く人に、普段の場所と筆記具で書いてもらう
- 05読み取りの設定を合わせる新しい書式の欄の位置をAI-OCRに登録し直し、試し書きを読ませて確かめる
- 06版を決めて切り替える版番号と日付を書式に印刷し、切り替え日に古い用紙を回収する
試し書きは、事務所の机ではなく、実際に書く場所で行ってください。トラックの荷台の上、工場の作業台、現場の詰所など、書く環境によって字の大きさや崩れ方は変わります。また、書式の隅に版番号を入れておくと、新旧の書式が混ざったときに、どちらの設定で読ませるかをすぐに判断できます。
8. 書式で直せないことは書き方と読ませ方で補う
書式を工夫しても、すべてのミスがなくなるわけではありません。残りは、書き方の決まりと、紙の読ませ方で補います。現場に配る記入例と一緒に、次の決まりを伝えておきます。
- ・筆記具を決める(薄い鉛筆や消せるペンは避け、濃く書けるペンを記入台に置く)
- ・記入例に数字の書き分けを載せる(「1」と「7」、「0」と「6」など)
- ・訂正は二重線で消し、正しい字を欄の中に書き直す決まりにする
- ・スキャンは紙を傾けずに置き、折り目や汚れのある部分を避ける
- ・FAXで届く書類は、送る側に濃く大きく書いてもらうよう頼む
とくに消せるペンは、熱で文字が薄くなることがあり、読み取りにも保管にも向きません。また、FAXは送る過程で細い線がかすれやすいので、受け取る書類がFAX中心なら、枠を太めにして字を大きく書ける書式にしておくと、読み取りの迷いが減ります。
次の一歩として、手元にある手書き書類を1種類選び、この1か月で直した欄に印を付けるところから始めてください。直す欄が見えれば、枠を広げるのか、マスに区切るのか、選択式にするのかが決まります。
