東海DX伴走室
生成AI研修

生成AIを総務・経理で使う例|議事録・社内文書・問い合わせと任せない判断

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この記事の要点
  • ✓総務・経理で生成AIに向くのは、議事録の要約、通知や規程案の下書き、定型質問の回答案、Excel関数の相談など「下書きと整理」の作業です
  • ✓仕訳・支払いの承認・給与計算・人事の判断・法令の解釈は人が決めて責任を持ち、個人情報や取引条件は会社が認めた環境以外に入力しません
  • ✓毎月発生して失敗の影響が小さい作業から始め、指示文を部署で共有すると、担当が替わっても同じやり方で続けられます

1. 総務・経理の仕事のうち、生成AIに向く作業と向かない作業

総務・経理の仕事には、文章を読む・まとめる・書き直す作業と、数字を確定させて責任を持つ作業が混ざっています。生成AIが得意なのは前者で、「たたき台をつくる」「長い文章を短くする」「言い回しを整える」「やり方を教えてもらう」といった作業です。反対に、金額を確定させる、規程の解釈を決める、社員一人ひとりの事情に答えるといった作業は、人が判断して責任を持つ部分として残ります。

使い始める前に、部署の仕事を「下書きまで任せてよいもの」と「人が決めるもの」に分けておくと、社員が迷わずに手を付けられます。次の表は、製造業・建設業の総務・経理でよく出てくる作業を分けた例です。自社の業務一覧に当てはめて、同じような表を一枚つくっておくと、社内での説明にも使えます。

表1 総務・経理の作業と生成AIの使い方の目安
作業生成AIに任せる部分人が決める部分
会議の議事録文字起こしの要約、決定事項と宿題の抜き出し発言の取り違えの確認、配布してよい内容の判断
社内通知・案内文文案の作成、敬語や言い回しの調整日付・対象者・締切の確定
規程・手順書の改定案条文の下書き、旧版との違いの整理法令との整合、社内の合意、最終決定
社員からの定型質問社内の資料をもとにした回答案個別の事情がからむ回答、送るかどうか
Excelの関数・集計関数の候補と説明、エラーの原因の見当結果の数字が合っているかの検算
仕訳・支払い・給与勘定科目の考え方の説明まで金額・科目・支払いの確定
出典:東海DX伴走室編集部の整理
ポイント「AIが書いた下書きを担当者が直して出す」という順番を部署の決まりにしておくと、出来上がった文書の責任が誰にあるのかがはっきりします。AIの出力をそのまま社内外に出さない、と最初に決めておいてください。

2. 議事録:文字起こしから要約と決定事項を抜き出す

総務が受け持つ会議は、安全衛生委員会、朝礼の連絡事項、経営会議、協力会社や取引先との打ち合わせなど幅広くあります。議事録づくりで時間がかかるのは、録音を聞き直して発言を拾う作業と、長い話から「何が決まったか」「誰がいつまでに何をするか」を取り出す作業です。

生成AIを使う場合は、会議ツールの自動文字起こしや録音アプリの書き出しなどで得た文章を貼り付けて、決まった形にまとめさせます。指示の文は毎回考えるのではなく、部署で一つ決めて共有しておくと、誰がつくっても同じ形の議事録になります。たとえば次のような指示文です。

  • ・「次の文字起こしを、社内向けの議事録にしてください。」
  • ・「見出しは、日時・出席者・議題・決定事項・宿題(担当者と期限)・次回予定の順にしてください。」
  • ・「決定事項と宿題は箇条書きにし、発言者が分からない部分は『発言者不明』と書いてください。」
  • ・「結論が出なかった議題は『継続審議』と書き、決定事項に入れないでください。」
  • ・「文字起こしに無い内容は付け加えないでください。」
図1 議事録づくりの作業の変化
導入前
  • 録音を最初から聞き直してメモを取る
  • 発言を時系列で書き起こす
  • 決定事項と宿題を自分で探して整理する
  • 体裁を整えて上長に確認を回す
導入後
  • 文字起こしを貼り付け、部署で決めた指示文で要約させる
  • 決定事項・宿題・期限が正しいかを録音やメモと照らして確認する
  • 人名・製品名・数字の誤りを直す
  • 上長に確認を回す
注意文字起こしは、人名・製品名・図番・金額をよく聞き間違えます。要約も、話の途中で出ただけの案を「決定」と書いてしまうことがあります。決定事項・期限・金額の三つは、必ず録音かメモと照らしてから配布してください。人事や処遇を話す会議、取引条件を話す会議の記録は、社内ルールで入力してよいと決めた環境以外には入れないでください。

3. 社内通知と規程案の下書きを任せる

毎年くり返す社内通知・案内文

健康診断の案内、年末年始の休業の通知、構内の駐車ルールの注意、年末調整の書類提出のお願いなど、総務・経理が出す通知は毎年似た内容のくり返しです。去年の通知文と今年変わる点を渡して「今年版に書き直して」と頼むと、下書きがすぐに出てきます。現場向けに短い文へ直す、漢字にふりがなを付ける、外国人の社員向けにやさしい日本語にする、といった書き分けも得意です。日付・曜日・対象者・提出先だけは、担当者がカレンダーと照らして確定させます。

規程・手順書の改定案

旅費規程、車両管理規程、文書管理規程、就業規則の付属規程などの改定では、旧版の条文と「何をどう変えたいか」を渡し、改定案と新旧対照表の下書きをつくらせます。条文の言い回しをそろえる、旧版の中で矛盾している箇所を探させる、といった使い方も向いています。

図2 規程改定の下書きから周知までの流れ
  1. 01変えたい点を書き出す旧版の条文と、変更の理由・対象者・開始日を一枚にまとめる
  2. 02生成AIで改定案をつくる改定案と新旧対照表の下書きを出させ、言い回しをそろえる
  3. 03担当者が読み直す社内の実態に合っているか、ほかの規程と矛盾しないかを確かめる
  4. 04専門家と社内で確認する法令との整合を社会保険労務士などに見てもらい、社内の手続きを経て決裁する
  5. 05社員に周知する周知文も生成AIで下書きし、変更点が一目で分かる形で配る
生成AIが関わるのは2番目と5番目の下書きだけです。
注意生成AIは法令の最新の改正を知らないことがあり、もっともらしい条文や根拠を書くことがあります。規程案は「文章の形を整える下書き」として扱い、法令に合っているかは専門家の確認と社内の決裁を経てから確定させてください。

4. 社員からの定型的な質問に回答案をつくる

「交通費の精算はどの用紙で出すのか」「結婚したら何を届け出ればよいか」「作業着の追加はどこに頼むのか」といった質問が、総務・経理には毎日のように届きます。答えは規程や手順書に書いてあっても、探して分かりやすい言葉にするのに手間がかかり、答える人によって言い方もばらつきます。

生成AIには、社内の規程・手順書・これまでのよくある質問の一覧を渡したうえで、「この資料の範囲で答え、資料に無いことは『総務に確認してください』と書いて」と指示します。こうすると、担当者は回答案を確認して送るだけになります。回答案の最後に「根拠にした規程の条文名」を書かせておくと、確認も早くなります。

  • ・向く:申請書の場所、提出先、締切、手続きの順番など、規程や手順書に答えが書いてある質問
  • ・向く:福利厚生や社内行事の案内など、全員に同じ答えになる質問
  • ・向かない:本人の給与額・残業代・有給の残り日数など、個人のデータを見て答える質問
  • ・向かない:休職・ハラスメント・家庭の事情など、相談として人が受け止めるべき内容
ポイント回答案は、まず担当者が受け取って確認してから社員に送る形で始めてください。社員が直接AIに質問する形に広げるのは、回答案の誤りが少ないと確かめられてから、扱う質問の範囲を絞って行います。

5. Excel関数と集計のやり方を相談する

経理・総務のExcel作業では、「部署別・月別に集計したい」「別の表から単価を引いてきたい」「日付から締め日ごとに分けたい」といった場面で、関数が分からず手が止まることがよくあります。生成AIに、表の列の並び(A列に日付、B列に取引先名、C列に金額など)とやりたいことを文章で伝えると、使う関数と式の例、その意味を説明してくれます。エラーが出たときに式を貼り付けて原因の見当をつけてもらう、昔の担当者がつくった複雑な式を一つずつ読み解いてもらう、といった使い方もできます。

  • ・列の名前と並び、データのおおよその行数を書く
  • ・「どのセルに何を出したいか」を一文で書く
  • ・実際の取引先名や金額ではなく、ダミーの値を数行つくって渡す
  • ・返ってきた式は、手で計算できる数行で答えが合うかを確かめてから全体にコピーする
  • ・分からない関数が出てきたら、その場で「この部分は何をしているか」を聞き返す
注意生成AIの出した式は、範囲の指定がずれていたり、空白のセルや全角・半角の違いを想定していなかったりすることがあります。月次の締めや決算の数字に使う前に、合計が会計ソフトや元帳と一致するかを必ず検算してください。取引先別の売上や給与の一覧をそのまま貼り付けるのは避けてください。

6. 生成AIに任せてはいけない判断と入力しない情報

総務・経理は、会社のお金と人の情報を預かる部署です。下書きや整理に生成AIを使えても、次の判断は人が行い、誰が決めたかの記録を残す部分として切り分けておきます。

表2 人が判断して責任を持つ作業
作業任せない理由人がすること
仕訳・勘定科目・税区分の確定もっともらしい誤りが決算や申告に響く経理担当が決め、迷う場合は税理士に確認する
支払いの承認・振込先の確定誤送金や不正の防止は人の確認が前提請求書と発注の記録を照らし、決裁者が承認する
給与・社会保険の計算個人ごとの条件や制度改正の反映を誤りやすい給与ソフトと担当者の確認で確定する
人事評価・懲戒・採否人の処遇には説明の責任がともなう会社として決めた手続きで判断する
法令や契約の解釈最新の法令や個別の契約を正しく読む保証がない社会保険労務士・税理士・弁護士など専門家に確認する
出典:東海DX伴走室編集部の整理

入力する情報にも線を引いておきます。社員の氏名と住所、マイナンバー、給与額、健康診断の結果、取引先との単価や契約条件などは、会社が入力してよいと決めた環境(入力内容が学習に使われない設定のサービスなど)以外には入れない、と決めておきます。名前を消しても、部署名や日付から個人が分かる場合があることも、あわせて伝えておきます。

  • ・入れてよい:去年の通知文、公開している会社案内、個人名を含まない規程や手順書
  • ・条件付き:会議の文字起こし(会社が認めた環境のみ・人事の会議は除く)
  • ・入れない:マイナンバー、給与・口座・健康情報、取引先の単価や契約条件、未公表の決算数字

7. 総務・経理で使い始める順番

部署全体で一度に始めるより、毎月必ず発生して、間違えても影響が小さい作業から順に広げると定着しやすくなります。次は、少人数の総務・経理で進める場合の目安です。

図3 総務・経理で生成AIを広げていく順番の目安
  1. 1か月目入力してよい情報のルールを決め、議事録と社内通知の下書きで試す
  2. 2か月目部署で使う指示文を共有のファイルにまとめ、Excelの関数相談にも広げる
  3. 3か月目規程・手順書の最新版を集め、定型質問の回答案づくりを始める
  4. 4か月目以降使った作業と確認にかかった手間を振り返り、続ける作業と止める作業を決める

指示文は個人のメモにとどめず、部署の共有フォルダに「議事録用」「通知文用」「回答案用」「Excel相談用」と分けて置いておくと、担当が替わっても同じやり方で続けられます。うまくいかなかった指示文も、なぜだめだったかを一行添えて残しておくと、次の人が同じところでつまずきません。

  • ・去年出した社内通知の文面一式
  • ・直近の会議の文字起こし(人事の会議以外)
  • ・規程・手順書の最新版と、よく来る質問の一覧
  • ・入力してよい情報・いけない情報を書いた一枚の紙
ポイント上の四つは、最初の1週間で集めておく材料です。材料がそろっていれば、生成AIに渡す資料に迷わず、試した結果を部署内で比べることもできます。

8. よくあるご質問

Q
経理の仕訳を生成AIに決めてもらってもよいですか。
A
仕訳・勘定科目・税区分の確定は任せないでください。生成AIはもっともらしい誤りを書くことがあります。使うのは「この支出はどんな考え方で科目を選ぶか」の説明までにとどめ、確定は経理担当が行い、迷う場合は税理士に確認してください。
Q
無料で使える生成AIを総務で使ってもかまいませんか。
A
入力した内容がどう扱われるか(学習に使われるかどうか)を確かめたうえで、会社として使ってよい環境を決めてください。決めた環境以外には、社員の個人情報や取引条件を入れないルールを文書にしておきます。
Q
議事録の要約は、文字起こしがなくてもできますか。
A
手書きのメモや箇条書きのメモを入力して、議事録の形に整えることはできます。ただし、メモに無い発言は補えません。文字起こしでもメモでも、決定事項・期限・金額は元の記録と照らしてから配布してください。
Q
総務・経理向けの生成AI研修に助成金は使えますか。
A
厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、DXなどに伴う業務に直結した研修が対象で、中小企業は研修経費の75%が助成されます。ただし2026年8月3日以降に出す計画届からは、職務に間接的に必要な内容や職種を問わない共通の内容は対象外です。自社の書類や手順を使った、職務に直接関係する内容に組む必要があります。計画届は研修開始の6か月前から1か月前までに提出し、制度は2026年度末までの時限措置です。申請は社会保険労務士に相談してください。
編集部
この記事を書いた人
東海DX伴走室編集部
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