生成AI研修に助成金は使える?2026年8月の改正で対象外になった研修と条件
- 人材開発支援助成金 支給要領の改正
- 公式情報の確認日
- ✓職務に直接必要でない一般的な研修は、2026年8月の改正で助成の対象から外れた
- ✓業務に直結した研修なら、中小企業は経費の最大75%が引き続き助成される
- ✓制度は2026年度末で終わる予定。計画届は研修開始の1か月前までに出す
1. 事業展開等リスキリング支援コースとは
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、新しい事業への進出やDXに取り組む会社が、社員に新しい知識や技能を身につけさせるための研修費用を助成する制度です。生成AIを業務に取り入れるための研修も、この制度の対象に含まれてきました。社員向けの研修を外部に頼むと、数十万円から百万円を超える費用がかかることも珍しくありません。その費用の多くを国が負担してくれるため、東海地方の製造業や建設業でも、生成AI研修の費用を抑える手段として使われています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる研修 | 事業展開やDXに伴って必要になる知識・技能を身につける研修 |
| 経費の助成率 | 中小企業は75%、大企業は60% |
| 研修の時間 | 会社の外で行う研修(OFF-JT)で10時間以上 |
| 制度の期間 | 2026年度末までの時限措置 |
この制度は期間が区切られた時限措置で、2026年度末で終わる予定です。研修の計画を立ててから助成金を受け取るまでには数か月かかるため、使うかどうかの判断は早いほど選べる研修の幅が広がります。
- ・助成されるのは研修の経費と、研修を受けている時間の賃金の一部
- ・助成金は研修が終わったあとに支給される後払い
- ・申請書類の作成は社会保険労務士の業務
対象になるのは、雇用保険に加入している事業所と、そこで雇用保険に加入している社員です。パートやアルバイトでも、雇用保険に加入していれば研修の対象にできます。役員や、雇用保険に入っていない人の分は助成されません。研修に誰を参加させるかは、この点を確かめてから決める必要があります。
2. 2026年8月の改正で何が変わったのか
2026年8月3日に支給要領が改正され、助成の対象になる研修の範囲が変わりました。大きな変更は2つです。ひとつは、職務に直接必要でない研修が対象から外れたことです。誰にでも当てはまる一般的な内容の研修は、業務との結びつきを説明できなければ助成を受けられません。もうひとつは、研修の受講が1人あたり1年度に3回まで、そのうちeラーニングは1回までに制限されたことです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象外になった | 職務に直接必要でない研修(一般的な内容の研修など) |
| 回数が制限された | 受講は1人1年度に3回まで、うちeラーニングは1回まで |
| 変わらない | 業務に直結し、要件を満たす研修は引き続き対象 |
改正の背景には、動画を見るだけの研修や、業務との関係が薄い研修にも助成金が使われていたことがあります。これからは「その研修で、社員のどの仕事がどう変わるのか」を計画の段階で説明できることが、助成を受ける前提になります。
3. 対象外になる研修、対象のまま使える研修
同じ「生成AI研修」でも、中身によって扱いが分かれます。たとえば、どの会社にも共通する指示文の書き方だけを学ぶ研修は、職務に直接必要とは言いにくく、対象外と判断される可能性が高くなります。一方で、自社の注文書や日報、見積書を題材にして、実際の業務でAIを使う手順をつくる研修は、業務との結びつきを説明しやすい研修です。
- どの会社にも共通する指示文の書き方だけを学ぶ
- 動画を見るだけで、業務の題材を使わない
- 研修のあとに何をするかが決まっていない
- 自社の注文書・日報・見積書を題材にする
- 部署ごとの作業手順を研修の中でつくる
- 研修のあとに、しくみにする業務を決める
製造業なら、図面や作業標準書の要約、品質記録の整理、協力会社とのやり取りの下書きなどが題材になります。建設業なら、安全書類の作成、施工計画書の下書き、現場写真の整理と報告書づくりなどが考えられます。どの業務の手間を減らすのかを先に決めておくと、計画届に書く内容も具体的になります。
- ・製造業:図面・作業標準書の要約、品質記録の整理、見積の下書き
- ・建設業:安全書類の作成、施工計画書の下書き、現場写真の整理
- ・事務部門:注文書・請求書の読み取り、社内の問い合わせへの回答
事務部門も題材になります。注文書や請求書をAIに読み取らせて表にまとめる作業や、社内でよく聞かれる質問への回答文を下書きする作業は、部署を問わず手間を減らしやすい業務です。研修の対象者を現場と事務の両方にすると、会社全体で使い方がそろいます。
4. 研修費150万円のとき、会社の負担はいくらか
中小企業が経費の75%の助成を受けられた場合、研修費150万円のうち112.5万円が助成され、会社の負担は37.5万円になります。ただし、助成金は研修が終わってから支給されるため、いったんは研修費の全額を支払う必要があります。資金の流れは先に確認しておくと安心です。
経費の助成には、研修の時間に応じた1人あたりの上限があります。参加する人数が少ないと上限にかかり、実際の助成額が75%を下回ることがあります。研修の時間と参加人数は、上限を確かめたうえで決めるのが確実です。
- ・研修費は全額を先に支払い、助成金はあとから受け取る
- ・1人あたりの上限にかからない人数と時間で組む
- ・研修中の賃金の一部も助成の対象になる
5. 申請の流れと期限
申請は、研修を始める前の計画届と、研修が終わったあとの支給申請の2段階です。計画届は研修開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ出す必要があります。研修が終わったら、終了日の翌日から2か月以内に支給申請を行います。
- 01計画届を出す研修開始の1か月前まで
- 02研修を行う合計10時間以上
- 03支給申請研修終了の翌日から2か月以内
- 04助成金の入金審査のあと
制度の終了が近づくと、計画届を出せる期間も短くなります。研修の中身を決め、講師と日程を押さえ、計画届を用意するまでには、少なくとも1か月から2か月を見込んでおく必要があります。
- 9月研修で扱う業務と参加者を決め、講師と内容を相談する
- 10月社会保険労務士と計画届の書類をつくる
- 11月初めまで計画届を労働局に出す(研修開始の1か月前まで)
- 12月〜1月研修を行う(合計10時間以上)
- 終了後2か月以内支給申請を行う
6. 研修の前に社内で決めておくこと
生成AIの研修を始める前に、社内のルールを決めておく必要があります。とくに大事なのは、AIに入力してよい情報と、入力してはいけない情報の線引きです。取引先の名前や図面、社員の個人情報をそのまま入力してよいかどうかは、使うサービスの設定と契約によって変わります。ルールがないまま研修を始めると、便利さを知った社員が判断に迷ったまま使い始めることになります。
- ・会社として使うAIのサービスと、その設定(学習に使われない設定か)
- ・AIに入力してよい情報と、入力してはいけない情報
- ・AIが作った文書を、誰が確かめてから社外に出すか
ルールは細かく作り込むより、1枚の紙にまとめて全員が守れる形にするほうが続きます。研修の最初の回でこのルールを説明し、実際の書類を使う練習の中で「これは入力してよいか」を一緒に確かめていくと、現場に定着しやすくなります。
7. 製造業・建設業で成果につながる研修の組み方
助成金を受けられても、研修のあとに仕事が変わらなければ、かけた時間は戻ってきません。成果につながる研修には共通点があります。題材が自社の書類であること、研修の中で実際に使う手順ができあがること、そして研修のあとに、しくみにする業務が決まっていることです。
- ・最初の回で、社内のルール(入力してよい情報)を決める
- ・部署ごとに、手間のかかる書類を1つずつ持ち寄る
- ・最後の回で、次にしくみにする業務を決める
研修の効果を確かめるには、研修の前に、対象の作業にかかっている時間を測っておくのが確実です。たとえば「注文書1枚の入力に何分かかっているか」を記録しておけば、研修のあとに同じ作業の時間を比べられます。数字で変化が見えると、次にどの業務へ広げるかも決めやすくなります。
研修で見つかった「しくみにしたい業務」は、書類の自動入力や業務システムの作り直しにつなげられます。東海DX伴走室では、研修の計画づくりから、社会保険労務士と連携した助成金の準備、研修後のしくみづくりまでを一緒に進めています。
