工程表をスマホで共有する方法|Excel配布から移る順番と協力会社への伝え方
- ✓古い版が混ざる原因は「配る」運用そのものにあり、最新版の置き場所を1か所に決めて見に来てもらう形に変えると減らせます
- ✓協力会社や職人さんには、開く手間を減らし、スマホで読める範囲に絞った表を用意し、変更は大きさに応じて知らせ方を変えます
- ✓移行は社内での試行から1現場・数社へと広げ、紙やFAXとの並行期間をおいてから配布をやめる順番で進めます
1. 「古い版を見ていた」が起きる仕組み
工程表をExcelでつくり、PDFにしてメールで送る。あるいは印刷してFAXで流す。建設現場でも工場でも、長く続いてきたやり方です。作る側から見れば手慣れた手順ですが、受け取る側では「どれが最新か」が分からなくなりやすい形でもあります。職人さんのスマホには先週のPDFが残り、協力会社の事務所には二日前のFAXが貼られ、現場事務所の壁には今朝刷り直した紙がある。同じ現場に、日付の違う工程表がいくつも並ぶことになります。
版が混ざる原因は、ほとんどが「配る」という形そのものにあります。配った瞬間に、工程表は相手の手元で止まります。こちらで直しても、相手の手元にある分は変わりません。よくある原因を挙げると、次のようになります。
- ・変更のたびに全員へ送り直す手間がかかり、急ぎの変更ほど一部の人にしか届かない
- ・ファイル名が「工程表_最新」「工程表_最新2」のようになり、日付と版の区別がつかない
- ・FAXは文字がつぶれ、細かな日付や工種の色分けが読み取りにくい
- ・職人さんは現場で紙を見ていて、事務所に届いた新しい版を見る機会がない
- ・電話や口頭で伝えた変更が、工程表の本体に反映されないまま残る
結果として段取りの食い違いが起きます。資材の搬入日がずれる、前の工程が終わっていないのに次の業者が来てしまう、逆に準備が整っているのに誰も来ない。そのたびに電話で調整し直す手間が、工程を管理する人の一日を削っていきます。
2. スマホで工程表を共有するやり方の選び方
工程表の共有には、いくつかの段階があります。いきなり専用のしくみを入れなくても、今のExcelを活かしたまま始められる方法もあります。自社の現場の数、協力会社の数、変更の多さで選び分けます。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| クラウドに置いたExcelを閲覧用のリンクで共有する | 協力会社が少なく、まずは今の表のまま始めたい | スマホでは表が小さく見づらい。編集できる人を絞らないと表が崩れる |
| 工程表をPDFにし、決まった1か所に上書きで置く | 紙に近い見た目を残したい。見る人がスマホの操作に不慣れ | 置き場所を1つに固定し、メール添付をやめないと版が混ざる |
| 工程を共有できる既製のアプリやクラウドサービス | 現場の数が多く、日々の変更が多い | 協力会社にも登録やアプリの導入をお願いすることになる |
| 自社の業務に合わせた専用のしくみ | 日報・写真・台帳・発注と工程をつなげたい | つくる前に、誰が何を入力し、誰が何を見るかを決めておく |
どの方法でも共通する条件が一つあります。「最新版はここにある」という場所が1つに決まっていることです。クラウドに置いても、同じ工程表をメールにも添付して送り続ければ、受け取る側には結局2か所の工程表ができてしまいます。共有を始めると決めたら、添付での配布はやめ、送るのは置き場所のリンクだけにそろえます。
迷ったときの目安
- ・協力会社が数社で、変更も週に一度ほどなら、今のExcelのままリンクで共有するところから始める
- ・複数の現場が並行して動き、変更が毎日のように出るなら、工程を共有できるアプリやクラウドサービスを検討する
- ・工程の変更を日報や発注、出来高の管理にまで反映させたいなら、専用のしくみを視野に入れる
最初から完璧な形を選ぶ必要はありません。まず1か所に集める運用に慣れ、足りない点が見えてから次の段階に進めば、使われない道具にお金をかける失敗を避けられます。
3. 協力会社と職人さんに見てもらう工夫
共有の場所をつくっても、見てもらえなければ意味がありません。協力会社や職人さんにとって、元請や発注元の工程表は「取引先の都合で見るもの」です。見る手間が少しでも増えると、結局は電話で「来週どうなってますか」と確認する習慣に戻ってしまいます。
開くまでの手間を減らす
毎回ログインやパスワードの入力が要ると、現場の休憩時間に開く気にはなりません。見るだけの人には閲覧用のリンクを渡し、スマホのホーム画面に置いてもらうところまで、最初の打合せで一緒にやってしまうと定着が早まります。
スマホの画面で読める範囲に絞る
A3で印刷する前提の全体工程表は、スマホではほとんど読めません。拡大と横スクロールを繰り返すうちに、自分の工種がどこか分からなくなります。全体の表はそのまま残し、スマホで見る人向けに、次のような見せ方を加えます。
- ・全体工程とは別に、「今週と来週」だけを切り出した表を用意する
- ・業者ごと・工種ごとに絞り込んだ表を見られるようにする
- ・色分けは種類を少なくし、色の意味を画面の上に書いておく
- ・日付には曜日まで入れ、休工日や搬入日は文字でも書く
- ・表の一番上に「この版の更新日と更新した人」を必ず入れる
最初の案内は顔を合わせる場で
協力会社への案内は、メール一本より、朝礼や工程打合せの場で直接伝えるほうが確実です。見る場所のQRコードを印刷した紙を一枚渡し、その場でスマホをかざして開いてもらいます。親方や職長に見てもらえれば、その下の職人さんには口頭でも伝わります。全員に一度に使ってもらおうとせず、段取りを決める立場の人から押さえていきます。
4. 工程を変えたときの知らせ方を決めておく
共有の場所を1つにしても、変更があったことに気づいてもらえなければ、相手は前に見た内容を覚えたまま動きます。「直したから見ておいてくれるはず」では伝わりません。変更をどう知らせるかを、あらかじめ手順として決めておきます。
- 01変更を決める誰が決めたか、どの工程が何日動くかを工程の担当者が確かめる
- 02本体を直す共有している工程表を1か所だけ直し、更新日と更新した人を書き込む
- 03変更点を短く知らせる影響のある業者にだけ「何が・いつからいつへ」を一行で送る
- 04受け取りを確かめる既読や返信で確かめ、反応がない相手には電話を入れる
- 05履歴に残す変更の理由と日時を記録し、後から経緯をたどれるようにする
すべての変更を同じ重さで知らせると、受け取る側は通知に慣れてしまい、大事な連絡を見落とします。変更の大きさで知らせ方を分けておくと、相手も「電話が来たら大きな変更だ」と分かるようになります。
| 変更の大きさ | 例 | 知らせ方 |
|---|---|---|
| 小さい | 同じ週の中で作業の順番が入れ替わる | 工程表を直し、関係する業者にメッセージで一行知らせる |
| 中くらい | ある工種の開始が数日ずれる | メッセージに加え、翌朝の朝礼や打合せで口頭でも伝える |
| 大きい | 天候や設計変更、設備の不具合で全体の日程が動く | 関係者全員に連絡し、電話で受け取りを確かめる。必要なら打合せを開く |
5. Excel配布から移る順番
全現場・全業者を一度に切り替えると、慣れない人が多く、問い合わせ対応で担当者の手が止まります。社内から始め、付き合いの長い協力会社で試し、見づらい点を直してから広げる順番で進めます。下の期間はあくまで目安で、現場の数や工期に合わせて伸び縮みさせます。
- 1〜2週目最新版を置く場所を1つに決め、社内の工事担当・工場の担当者だけで共有を試す
- 3〜4週目1つの現場または1つの製造ラインを選び、付き合いの長い協力会社数社に見てもらう
- 2か月目見づらい点や知らせ方を直す。紙・FAXでの配布は並行して続ける
- 3か月目対象の現場を広げ、FAXでの配布は希望する相手だけに絞る
- 4か月目以降日報や発注とのつながりを見直し、必要ならアプリや専用のしくみを検討する
並行して紙やFAXを続ける間は、紙の側にも「共有している工程表の何日版か」を必ず書き入れます。紙と画面で内容が違ったときに、どちらが新しいかをその場で判断できるようにするためです。並行期間を決めずに続けると、二重の手間だけが残るので、終わりの時期も最初に決めておきます。
- Excelを直すたびにPDFにして、協力会社ごとにメールで送り直す
- FAXが届いたか、読めたかを電話で確かめる
- 現場の壁に貼った紙を刷り直して貼り替える
- 食い違いが起きると「どの版を見ていましたか」の聞き取りから始める
- 共有している工程表を1か所直すだけで、見る人全員の画面が変わる
- 影響のある業者にだけ、リンク付きで変更点を一行知らせる
- 現場に貼る紙は、決めた曜日に最新版を刷るだけになる
- 変更の履歴で、いつ誰が何を変えたかをすぐ確かめられる
6. 移行でつまずきやすいところと手当て
共有を始めてから出てくる困りごとは、どの会社でも似ています。あらかじめ手当てを決めておくと、途中で「やっぱりFAXのほうが楽だ」と元に戻ることを防げます。
- ・編集できる人が多すぎて表が崩れる:直す人を工程の担当者に絞り、ほかの人は閲覧だけにする
- ・協力会社のスマホで開けない:最初の打合せでその場で開いてもらい、開けない相手には当面紙で補う
- ・現場ごとにExcelの作り方がばらばら:共有を始める前に、列の並びや色の意味をそろえた型を1つつくる
- ・FAXをやめたい業者とやめたくない業者が混ざる:FAXは希望する相手だけに残し、その場合も共有版の日付を明記する
- ・担当者が休むと更新が止まる:直せる人を二人にし、直し方と知らせ方の手順を一枚にまとめる
- ・変更を見たかどうか分からない:大きな変更だけは返信か電話で受け取りを確かめる決まりにする
7. 自社で次に取りかかること
工程表の共有は、道具を選ぶ前に、今の配り方を棚卸しするところから始まります。次の順に手を付けると、特別な道具がなくても来週から動き出せます。
- ・今使っている工程表のファイルと、それを配っている相手・配り方を書き出す
- ・最新版を置く場所を1つ決め、表の一番上に更新日と更新した人を入れる
- ・単価や社内メモを外した閲覧用のシートをつくる
- ・試しに使う現場と、協力してくれそうな業者を一つ二つ選ぶ
- ・変更を知らせる文面の型と、変更の大きさごとの知らせ方を決める
- ・紙・FAXとの並行期間の終わりを決め、関係者に伝える
しばらく運用すると、「日報で進み具合が分かれば工程表を自動で直せるのに」「写真と工程を結び付けたい」といった次の要望が現場から出てきます。そうした声が出てから、アプリや専用のしくみを検討すれば、実際の使い方に合った選び方ができます。
