工事写真の整理と写真台帳づくりを減らすしくみ|撮る段階から決めること
- ✓工事写真の整理に時間がかかるのは、撮ったあとに「どの工種・どの箇所の写真か」を思い出して仕分けているから
- ✓撮る段階で工種・箇所・撮影の項目を選べるようにすると、仕分けと写真台帳づくりの大半が要らなくなる
- ✓公共工事では発注者の撮影・整理の基準に合わせる。しくみは基準を確かめてから決める
1. 工事写真の整理に時間がかかる理由
工事写真は、工事が進んだことや、見えなくなる部分が決められたとおりに施工されたことを示す大事な記録です。着工前、施工中、完成の各段階で、工種ごと、箇所ごとに写真を撮り、あとから確かめられる形で残します。撮る枚数は工事の規模に応じて増え、工期の長い工事では膨大な数になります。
整理に時間がかかる一番の理由は、撮ったあとに「この写真は、どの工種の、どの箇所の、何を示す写真か」を思い出して仕分けていることです。現場ではデジタルカメラやスマートフォンで撮り、事務所に戻ってからパソコンに取り込み、1枚ずつ見ながらフォルダに分け、写真台帳に貼り付けて説明を書く。撮った本人でなければ分からない写真も多く、仕分けが撮った人に集中しがちです。
- 01現場で撮る黒板を入れて撮るが、撮った写真はカメラやスマートフォンにたまっていく
- 02取り込む事務所に戻ってからパソコンに取り込む
- 03仕分ける1枚ずつ見て、工種・箇所ごとにフォルダに分ける
- 04台帳をつくる写真を台帳に貼り付け、説明を書き込む
2. 写真台帳づくりで手間がかかる作業
写真台帳は、工事写真を決まった順番に並べ、写真ごとに工種や撮影箇所、撮影日、説明を添えた書類です。発注者に提出するものや、社内の記録として残すものがあります。台帳づくりの手間は、写真を並べる作業そのものより、写真ごとの説明を書き、順番をそろえ、抜けている写真がないかを確かめる作業にあります。
| 作業 | 手間がかかる理由 |
|---|---|
| 写真の仕分け | 撮ったあとに、工種・箇所・段階を思い出して分けている |
| 説明の書き込み | 写真ごとに、工種・箇所・撮影の内容を手で書いている |
| 順番のそろえ | 決まった順番に並べ替え、ページに収まるよう調整している |
| 抜けの確かめ | 撮るべき写真が撮れているかを、台帳をつくる段階で初めて確かめている |
| 撮り直しの手配 | 抜けに気づいたときには、施工が進んで撮れないことがある |
とくに気をつけたいのが「抜けの確かめ」です。台帳をつくる段階で撮るべき写真が足りないと気づいても、その部分がすでに埋め戻されたり、仕上げで隠れたりしていれば、撮り直すことはできません。台帳づくりの手間を減らすことは、撮り忘れを防ぐことにもつながります。
- ・仕分けと説明の書き込みが、撮った本人に集中している
- ・台帳づくりが工事の終盤や月末にまとめて発生している
- ・撮り忘れに気づくのが、台帳をつくる段階になっている
- ・同じ写真を、台帳・日報・報告書にそれぞれ貼り直している
こうした状態は、現場の担当者が現場の仕事を終えてから、事務所で遅くまで写真の整理をする原因になります。写真の整理は、工事の品質そのものを高める作業ではないにもかかわらず、現場の担当者の時間を大きく使っている。この時間を減らせれば、現場の担当者は施工の管理や安全の確認に時間を回せるようになります。
3. 撮る段階で決めておく3つのこと
整理と台帳づくりを減らすには、撮る段階で次の3つを決めておきます。どの工種・箇所の写真を撮るかの一覧、写真ごとに残す情報、撮った写真の置き場所です。この3つが決まっていれば、撮った写真は撮った時点で仕分けが済み、あとは台帳の形に並べるだけになります。
- ・撮る写真の一覧:工事ごとに、工種・箇所・段階ごとに撮るべき写真を先に並べておく
- ・写真ごとに残す情報:工種・箇所・段階・撮影日・撮影者を、撮るときに選ぶ
- ・写真の置き場所:撮った写真が、工事ごと・工種ごとの決まった場所に自動で入るようにする
撮る写真の一覧は、施工計画や発注者の基準をもとに、工事の初めにつくります。一覧があれば、現場では一覧の中から今撮る項目を選んで撮るだけで済み、撮り終わった項目と、まだ撮っていない項目がひと目で分かります。撮り忘れにも、台帳をつくる前の段階で気づけるようになります。
4. 整理と台帳づくりを減らすしくみ
撮る段階で決めた3つのことを、スマートフォンのアプリで行えるようにすると、整理と台帳づくりの大半を自動にできます。現場ではアプリで撮る項目を選んで撮り、写真は工種・箇所などの情報と一緒に、決まった置き場所へ送られる。事務所では、送られてきた写真と情報から、台帳の形に並べた下書きがつくられる。人がやるのは、下書きを確かめて直すことだけになります。
- 撮ったあとに、工種・箇所を思い出して仕分ける
- 台帳に写真を貼り、説明を手で書く
- 台帳をつくる段階で撮り忘れに気づく
- 撮るときに工種・箇所を選び、写真と一緒に残す
- 写真と情報から、台帳の下書きが自動でつくられる
- 撮る写真の一覧で、撮り忘れにその場で気づける
しくみにするときは、写真の情報を黒板だけに頼らないことが大切な考え方になります。黒板は写真の中に情報を写し込むもので、人が見れば分かりますが、しくみが読み取るのは簡単ではありません。撮るときにアプリで選んだ工種や箇所の情報を、写真のデータと一緒に残しておくと、仕分けや台帳の並べ替えをしくみが自動で行えます。
- ・撮る写真の一覧をアプリに入れ、現場では項目を選んで撮る
- ・写真は工種・箇所・段階・撮影日の情報と一緒に送られる
- ・送られた写真から、台帳の形に並べた下書きがつくられる
- ・撮り終わっていない項目が一覧で分かり、撮り忘れに気づける
- ・事務所では、下書きの説明と写真の取り違えがないかだけを確かめる
5. 公共工事と民間工事で気をつけること
公共工事の工事写真には、発注者が定める撮影と整理の基準があります。写真の編集を認めない決まりや、提出するデータの形式、写真に付ける情報の書き方が定められていることがあり、発注者によっては写真が編集されていないことを確かめられる形を求める場合もあります。しくみをつくるときは、写真そのものを加工しないこと、発注者の求める形式で出力できることを前提にします。
| 確かめること | 公共工事 | 民間工事 |
|---|---|---|
| 撮影の項目と頻度 | 発注者の基準に合わせる | 施主との取り決めと社内の基準に合わせる |
| 写真の編集 | 認められないことがある。写真は加工しない | 取り決めを確かめる。原則は加工しない |
| 提出の形式 | 発注者の定める形式で出力する | 施主と決めた形式で出力する |
| 台帳の様式 | 発注者の様式があればそれに合わせる | 社内の様式か、施主の求める様式 |
民間工事では、公共工事ほど細かい基準がないことも多い一方で、施主から完成後に写真を求められることがあります。社内の基準として、公共工事に近い形で撮る写真の一覧をつくっておくと、工事の種類を問わず同じしくみで整理できます。
6. 写真の保管と、あとから探せる形にしておくこと
工事写真は、台帳を提出したら役目が終わるわけではありません。完成後に不具合の問い合わせがあったとき、見えなくなった部分がどう施工されていたかを確かめるのは写真です。似た工事の見積や施工計画を立てるときに、過去の現場の写真を見返すこともあります。ところが、写真が担当者のパソコンや個人のスマートフォン、持ち運びの記録媒体に散らばっていると、必要なときに探し出せません。
| 決めること | 中身の例 |
|---|---|
| 保管の場所 | 会社として管理する置き場所に集め、個人の端末に残さない |
| フォルダの分け方 | 工事ごと、工種ごとの決まった分け方にそろえる |
| 写真に付ける情報 | 工事名・工種・箇所・段階・撮影日・撮影者 |
| 見られる人の範囲 | 自社の担当者、協力会社、施主のそれぞれに見せてよい範囲 |
| 残しておく期間 | 発注者の求めや社内の決まりに合わせて決める |
撮る段階で工種や箇所の情報を写真と一緒に残しておけば、保管の場所でも同じ情報で探せます。「この工事の、この工種の、施工中の写真」を条件で絞り込めるようにしておくと、担当者が替わったあとでも、必要な写真にすぐたどり着けます。撮る段階の工夫は、整理と台帳づくりを減らすだけでなく、写真を会社の資産として使い続けるための土台にもなります。
7. 導入の進め方と、現場に使ってもらう工夫
写真のしくみも、全部の現場で一斉に始めるのではなく、1つか2つの現場で試してから広げます。試す現場では、撮る写真の一覧をつくる手間、現場でアプリを使う手間、事務所で下書きを確かめる手間を、それぞれ確かめます。撮る側の手間が増えると、現場は元のやり方に戻ってしまうため、選ぶ項目は必要なものに絞ります。
- 最初の段階今の写真の撮り方と台帳づくりの手順、かかっている時間を洗い出す
- 一覧をつくる段階試す工事で、発注者の基準をもとに撮る写真の一覧をつくる
- 試す段階1つか2つの現場で、アプリで撮って送る形を試す
- 広げる段階試した現場の声で項目と画面を直し、ほかの現場へ広げる
撮る写真の一覧は、工事ごとに一からつくると手間がかかります。工種ごとの一覧を部品のように用意しておき、工事の内容に合わせて組み合わせる形にすると、一覧づくりの手間も減らせます。過去の工事の一覧を下敷きにできるようにしておくと、似た工事では一覧づくりがほとんど要らなくなります。一覧は現場の声を聞いて少しずつ直し、会社の標準として育てていきます。
8. 日報や報告書とつなげると、さらに手間が減る
工事写真は、日報や週報、月報、是正の報告などにも使われます。写真のしくみを日報のアプリとつなげると、日報と一緒に送った写真が、そのまま写真台帳にも報告書にも使えるようになります。同じ写真を何度も選び直して貼り付ける手間がなくなり、写真と日報の日付や内容の食い違いも起きにくくなります。
- ・日報と一緒に送った写真を、写真台帳にもそのまま使う
- ・週報や月報の写真を、撮った写真の中から自動で選んで並べる
- ・是正の指摘と、是正前・是正後の写真を組にして残す
つなげる順番は、手間の大きいところからが基本です。写真台帳づくりにいちばん時間がかかっているなら、まず撮る写真の一覧と台帳の下書きを整え、そのあとで日報や報告書へ広げます。日報の写真を毎日選び直す手間が大きいなら、日報のアプリと写真を先につなげます。どの順番がよいかは、今の手順ごとにかかっている時間を測ると決めやすくなります。一度にすべてをつなげようとせず、1つずつ効果を確かめながら進めると、現場の負担も増えません。
東海DX伴走室では、今の写真の撮り方と台帳づくりの手順を整理し、撮る写真の一覧づくりから、スマートフォンで撮って送るしくみ、台帳や報告書への反映までを一緒に進めています。公共工事の場合は、発注者の基準を確かめたうえで、求められる形式で出力できる形にします。
