建設現場の日報アプリは自社専用でつくるか既製品か|判断の基準
- ✓日報アプリの選び方は、日報を「書いたあと何に使うか」で決まる
- ✓日報を記録として残すだけなら既製品、工程・原価・請求までつなげたいなら自社専用が候補になる
- ✓どちらを選ぶ場合も、今の日報の項目と、日報を読んでいる人を先に洗い出す
1. 建設現場の日報をアプリにしたい理由
建設現場の日報は、紙やExcelで書いている会社がまだ多い書類です。職長や現場代理人が一日の作業を終えたあとに、作業の内容、人数、使った機械や材料、天候、気づいたことを書き、事務所に届ける。事務所では、その日報を見ながら工程表や出面の集計、原価の管理、協力会社への支払いの確認などに書き写していきます。
日報をアプリにしたいという相談の背景には、書く側と読む側の両方の手間があります。書く側は、現場から事務所に戻ってから書く時間がかかり、写真は別に送る必要がある。読む側は、手書きの文字を読み取り、同じ内容を別の表に何度も書き写す。日報そのものより、日報のあとに続く書き写しの手間が大きいことも少なくありません。
- 現場から事務所に戻ってから書く
- 写真は日報とは別に送る
- 事務所で工程表や集計表に書き写す
- 現場でスマートフォンから入力して送る
- 写真を日報と一緒に送れる
- 入力した内容が集計や台帳にそのまま使われる
2. 既製品と自社専用、それぞれの特徴
日報のアプリには、大きく分けて2つの選び方があります。ひとつは、建設業向けに作られた既製の日報アプリや施工管理アプリを使う方法です。もうひとつは、自社の日報の項目と、その先の業務の流れに合わせて、自社専用のアプリをつくる方法です。どちらがよいかは、会社の規模や業務の流れ、日報をどこまで使いたいかによって変わります。
| 比べる点 | 既製品を使う | 自社専用でつくる |
|---|---|---|
| 使い始めるまで | 契約すればすぐに使い始められる | 業務の整理と開発の期間が必要 |
| 日報の項目 | 用意された項目に自社が合わせる | 今の日報の項目に合わせてつくれる |
| ほかの業務とのつながり | 用意された連携の範囲で使う | 工程表・原価・請求など自社のしくみにつなげられる |
| 費用の出方 | 人数や機能に応じて毎月かかることが多い | 最初の開発費と、その後の保守の費用 |
| 変えたいとき | 提供元の改善を待つ | 自社の都合で直せる(直す費用はかかる) |
既製品の強みは、すぐに使い始められることと、多くの会社で使われてきた画面の使いやすさです。一方で、日報の項目や業務の流れは、用意されたものに自社が合わせることになります。自社専用の強みは、今の日報の項目や、日報のあとに続く業務の流れに合わせてつくれることです。そのかわり、業務の整理と開発に時間と費用がかかります。
ここで見落とされやすいのが、日報アプリの価値は「日報を書く画面」だけでは決まらないという点です。現場の人にとっては入力のしやすさが、事務所の人にとっては入力された内容をどれだけそのまま使えるかが、それぞれの価値になります。既製品と自社専用を比べるときは、書く側と読む側の両方の目で比べる必要があります。書く側の画面だけを見て選ぶと、事務所の書き写しがそのまま残り、アプリにした効果が半分しか出ないことがあります。
3. 既製品が向いている会社
既製品の日報アプリが向いているのは、日報を「記録として残し、共有する」ことが主な目的の会社です。現場の作業内容と写真を事務所や上長がすぐに見られればよく、日報の内容をほかの業務の表に細かく書き写す必要がそれほどない。このような場合、既製品で十分に目的を果たせることが多く、自社専用でつくる理由は薄くなります。
- ・日報の主な目的が、作業の記録と写真の共有である
- ・日報の項目が、一般的な作業日報の形に近い
- ・日報の内容を、ほかの業務の表に細かく書き写していない
- ・まずは紙をなくし、現場からすぐ送れる形にしたい
既製品を選ぶ場合も、契約の前に試用の期間を使い、実際の現場で職長や現場代理人に入力してもらうことが欠かせません。事務所で見て使いやすそうでも、現場で手袋をしたまま入力できるか、電波の弱い場所で送れるか、入力の手間が紙より増えていないかは、現場で試さないと分かりません。試用の期間には、事務所の担当者にも、送られてきた日報をふだんの仕事でどう使うかを試してもらいます。
4. 自社専用でつくるほうがよい会社
自社専用のアプリが候補になるのは、日報を書いたあとの業務の流れが自社独自で、日報の内容をいくつもの表に書き写している会社です。たとえば、日報の出面から協力会社への支払いを確かめ、作業の内容から工程表を更新し、使った材料と機械から現場ごとの原価を集計している。こうした書き写しが事務所の大きな手間になっているなら、日報を入口にして、その先の業務までひとつながりのしくみにする価値があります。
- 01現場で入力作業内容・人数・機械・材料・写真をスマートフォンから送る
- 02上長が確かめる現場代理人や事務所が内容を確かめ、承認する
- 03自動で反映出面の集計、工程表、原価の集計に日報の内容が入る
- 04書類に使う協力会社への支払いの確認や、週報・月報に使う
- ・日報の内容を、工程表・出面・原価・請求など複数の表に書き写している
- ・日報の項目や業務の流れが自社独自で、既製品に合わせると手間が増える
- ・すでに社内の業務システムやExcelの表があり、そこへつなげたい
- ・協力会社の人にも入力してもらう形にしたい
- ・現場ごとの原価を、日報の段階から早めに把握したい
自社専用でつくる場合でも、最初から全部の業務をつなげようとしないことが欠かせません。まずは日報の入力と、書き写しの手間がいちばん大きい1つの業務だけをつなげ、現場で使われることを確かめてから、次の業務へ広げます。小さく始めることで、現場の声を聞きながら画面を直していけます。
5. どちらを選ぶかの判断の基準
既製品か自社専用かで迷ったときは、次の問いに順番に答えていくと、どちらが向いているかが見えてきます。すべての問いに「はい」が並ぶ必要はありません。「はい」が多いほど自社専用が、「いいえ」が多いほど既製品が候補になります。
| 問い | 「はい」なら | 「いいえ」なら |
|---|---|---|
| 日報の内容を、ほかの表に書き写しているか | 自社専用が候補 | 既製品で足りることが多い |
| 日報の項目や業務の流れが自社独自か | 自社専用が候補 | 既製品で足りることが多い |
| つなげたい社内のしくみや表があるか | 自社専用が候補 | 既製品で足りることが多い |
| すぐに紙をなくすことを最優先したいか | 既製品が候補 | つくる時間をとれる |
| 日報の使い方を、この先も変えていきたいか | 自社専用が候補 | 既製品で足りることが多い |
判断に迷う場合は、既製品で始めて、足りない部分が見えてから自社専用を検討するという順番もあります。この場合は、既製品に入れたデータをあとから取り出せるかを、契約の前に確かめておきます。データを取り出せないと、自社専用へ移るときに、過去の日報を引き継げなくなるからです。
- ・既製品に入れた日報や写真を、表や画像の形で取り出せるか
- ・取り出したデータに、日付・現場・入力者などの情報が付いているか
- ・契約をやめたあと、データがいつまで残るか
もうひとつの考え方として、既製品と自社専用を組み合わせる方法もあります。日報の入力と写真の共有は既製品で行い、既製品から取り出した日報のデータを、自社専用の集計や原価管理のしくみに取り込む形です。この場合は、既製品からデータを取り出す手間が毎日発生しないよう、取り出しを自動にできるかどうかがかぎになります。
6. どちらを選ぶ場合も先にやること
既製品を選ぶ場合も、自社専用でつくる場合も、最初にやることは同じです。今の日報の項目を洗い出し、その日報を誰が読み、何に書き写しているかを確かめます。この整理をしないまま選ぶと、既製品では外せない項目が扱えないことに後から気づき、自社専用では使われない機能をつくってしまうことになります。
- ・今の日報の項目を、紙やExcelの書式から書き出す
- ・日報を読んでいる人と、読んだあとに何をしているかを聞く
- ・日報の内容を書き写している表と、書き写しにかかる時間を確かめる
- ・現場で入力する人の端末と、電波の状況を確かめる
- ・日報を何年分、どこに残しておく必要があるかを確かめる
現場で入力する人の声を早い段階で聞くことも欠かせません。アプリにしても、入力が紙より面倒になれば、現場は使ってくれません。入力の項目を減らす、選ぶだけで済む項目を増やす、前日の内容を引き継げるようにするなど、現場の手間を増やさない工夫は、既製品を選ぶときの比べる点にも、自社専用をつくるときの設計の方針にもなります。
7. 導入の進め方と、現場に使ってもらう工夫
どちらを選ぶ場合も、全部の現場で一斉に切り替えるのは避けます。まずは1つか2つの現場で試し、入力の手間や送れない場面、事務所での使い勝手を確かめてから、ほかの現場へ広げます。試す現場は、新しいやり方に前向きな職長や現場代理人がいる現場を選ぶと、つまずいた点を率直に教えてもらえます。
- 最初の段階今の日報の項目、読んでいる人、書き写している表を洗い出す
- 選ぶ・つくる段階既製品を試すか、自社専用の最初の画面をつくる
- 試す段階1つか2つの現場で、紙の日報と並行して使ってもらう
- 広げる段階試した現場の声で画面を直し、ほかの現場へ広げる
- つなげる段階書き写しの手間が大きい業務から、日報の内容を反映させていく
試す段階では、しばらく紙の日報と並行して使ってもらうと、現場も事務所も安心して切り替えられます。ただし、並行の期間が長すぎると、二重に書く手間が現場の不満になります。並行する期間はあらかじめ決めておき、その期間が終わったら紙の日報をやめる、と最初に伝えておきます。
- ・入力の項目は、選ぶだけで済むものを増やし、文字を打つ項目を減らす
- ・前日の内容や、同じ現場の決まった項目を引き継げるようにする
- ・写真は日報の画面から撮ってそのまま送れるようにする
- ・電波の弱い場所でも入力でき、つながったときに送れるようにする
- ・入力を忘れた人に知らせる方法を決めておく
協力会社の職長にも入力してもらう場合は、アカウントの配り方と、見せてよい情報の範囲を決めておく必要があります。自社の社員と同じ画面をそのまま見せると、ほかの協力会社の出面や単価が見えてしまうことがあるからです。既製品ならその設定ができるか、自社専用ならその前提で画面をつくるかを、最初に決めておきます。
東海DX伴走室では、今の日報と業務の流れを整理し、既製品で足りるか、自社専用でつくるべきかの判断から一緒に進めています。自社専用でつくる場合は、日報の入力と写真の送信から始め、工程表や台帳、報告書への反映へと小さく広げていきます。
