岐阜・大垣の中小企業がAI導入を進める順番と、使える支援
- 公式情報の確認日
- ✓AIは「書類を読む・探す・下書きする」作業から入れると、効果が見えやすく失敗しにくい
- ✓大垣にあるソフトピアジャパンのアドバイザー派遣に、岐阜市・大垣市の補助を重ねて使える
- ✓しくみの導入には国の補助金、社員の研修には国の助成金と、使い道で制度を分ける
1. 岐阜・大垣の中小企業とAIの使いどころ
岐阜県には、関の刃物や東濃の陶磁器といった地場の産業に加え、金属加工や機械、航空機の部品など、多品種少量のものづくりをする中小の会社が多くあります。岐阜市や大垣市は名古屋から電車で30分ほどの距離にあり、愛知の取引先と日々やりとりをしている会社も少なくありません。
多品種少量のものづくりでは、一品ごとの見積や、図面と仕様書の読み込み、検査の記録づくりに手間がかかります。しかもその多くが、長く勤めてきた特定の社員の経験に頼っています。生成AIをはじめとするAIの技術は、この「書類を読む・探す・下書きする」作業と相性がよく、中小の会社でも、大きな設備投資をせずに取り入れられます。
| 業種 | 手間になりやすい作業 | AIの使いどころ |
|---|---|---|
| 金属加工・刃物 | 一品ごとの見積と、過去の単価の検索 | 過去の見積と図面から似た品を探し、見積の下書きをつくる |
| 航空機・機械の部品 | 図面や仕様書の読み込みと、検査の記録 | 仕様書の要点をまとめ、検査の記録を整える |
| 陶磁器などの地場産業 | 商品の説明や、取引先への案内文づくり | 商品の特徴から、説明文や案内文の下書きをつくる |
| 建設・設備工事 | 安全書類や施工計画書の作成 | 過去の書類をもとに、下書きをつくる |
どの使い方も、AIが仕事を丸ごと代わるのではなく、人が確かめる前の下書きや下調べをAIに任せる形です。最終的な判断は、これまでどおり経験のある社員が行います。その社員が、探す・書き写す・清書するといった作業から離れ、判断に時間を使えるようになることが、AI導入の効果の中心になります。
2. AI導入を進める順番
AIの導入は、道具を選ぶところから始めると失敗しやすくなります。流行りの道具を入れてみたものの、誰も使わなくなった、という話はめずらしくありません。順番は、手間のかかっている作業を洗い出すところから始め、小さく試して効果を確かめてから、社内に広げていきます。
- 01作業の洗い出し書類を読む・探す・下書きする作業を書き出す
- 02題材を1つに絞る効果が見えやすく、失敗しても困らない作業を選ぶ
- 03小さく試す実際の書類を使い、数週間ほど試す
- 04社内のルールづくり入れてよい情報、確かめ方、使う人を決める
- 05広げるしくみに組み込み、研修で使える人を増やす
最初の題材は、効果が見えやすく、AIが間違えても大きな問題にならない作業を選びます。たとえば、過去の見積を探す作業は、見つけた結果を人が確かめるため、AIが的外れな結果を出しても実害がありません。反対に、取引先にそのまま送る書類や、品質の判定そのものをAIに任せるのは、社内で使い慣れてからにします。
3. 小さく試すときの組み立て方
題材が決まったら、本格的に入れる前に、数週間ほど小さく試します。試す目的は、AIがその作業に使えるかどうかを、自社の実際の書類で確かめることです。道具の説明会や見本の画面だけでは、自社の書類でうまく動くかはわかりません。取引先ごとに違う書式や、手書きの書き込み、社内だけで通じる略語など、実際の書類には一般的な見本にない癖があるためです。
- ・試す作業と、試す期間を決める(例:過去の見積の検索を4週間)
- ・試す前に、今のやり方でその作業にかかっている時間を記録しておく
- ・実際に使う担当者を2〜3人に絞り、毎週、使った感想を聞く
- ・AIがうまく扱えなかった書類を集め、原因を確かめる
- ・期間が終わったら、続けるか、やり方を変えるか、やめるかを決める
試した結果、思ったほど手間が減らないこともあります。それは失敗ではなく、本格的に費用をかける前に分かったという成果です。書類の読み取りがうまくいかないなら、読み取る項目を絞る、書類の種類を分けるといった工夫で変わることもあります。試しの段階で、どこまでAIに任せ、どこから人が確かめるかの線引きも決めておくと、本格的に入れるときの設計が楽になります。
4. 大垣にあるソフトピアジャパンのアドバイザー派遣
岐阜県でDXやAIの導入を考えるとき、中心になる支援機関が、大垣市にある公益財団法人ソフトピアジャパンです。県内企業のDXを支える岐阜県DX推進コンソーシアムの中心を担い、中小企業に向けて「スマート経営アドバイザー」を派遣しています。アドバイザーが会社の現場を訪ね、生産性の向上を見すえて、どこにデジタルやAIを使うかを一緒に考える仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 岐阜県内に事業所がある企業 |
| 支援の形 | アドバイザーが現場を訪問。オンラインでの助言にも対応 |
| 会社の負担 | 派遣費用の一部として1人1回あたり1.1万円(税込)を事前に振り込む |
| 所在地 | 岐阜県大垣市加賀野(ソフトピアジャパン) |
AI導入の最初の段階で、社外の目で自社の業務を見てもらえるのは大きな利点です。社内だけで考えると、目の前の困りごとに目が向き、効果の大きい作業を見落とすことがあります。アドバイザーの助言をもとに題材を絞っておけば、その後に開発会社や販売会社へ相談するときも、話が具体的になります。岐阜県の「DX支援策ポータル」では、県や市町村のDXの支援策をまとめて探せるため、あわせて確かめておきます。
5. 岐阜市・大垣市の補助を重ねる
ソフトピアジャパンの支援には、市の補助を重ねて使えるものがあります。岐阜市と大垣市は、アドバイザー派遣の費用の一部を補助しています。岐阜市は、ソフトピアジャパンの「スマート経営実践補助金」を受けた会社への上乗せの補助も設けています。
| 制度 | 実施 | 内容 |
|---|---|---|
| スマート経営アドバイザー派遣支援 | 大垣市 | 市内に事業所がある製造業の中小企業が対象。派遣の経費(税抜)の1/2以内・上限3万円。随時受付で、予算に達し次第終了 |
| スマート経営アドバイザー派遣への補助 | 岐阜市 | アドバイザーを招く経費の一部を市が補助 |
| 中小企業等DX推進補助金(スマート経営実践事業) | 岐阜市 | ソフトピアジャパンのスマート経営実践補助金(2/3以内〈事業者によっては1/2以内〉・上限50万円)を受けた会社に、対象経費のうち75万円を超える部分の1/2以内・上限20万円を上乗せ。申請期限は2027年2月26日 |
| 中小企業等DX推進補助金(DX・IT研修事業) | 岐阜市 | 市内の中小企業等の研修の経費の1/2以内・年度内の上限5万円。申請期限は2027年2月26日 |
岐阜市の上乗せの補助は、システムや機器を入れる費用が対象です。ソフトピアジャパンの補助は上限が50万円のため、対象の経費が75万円を超える部分は、ソフトピアジャパンの補助だけでは補えません。その超えた部分を岐阜市が補う形になっています。岐阜市の会社がAIのしくみを入れる場合、次のような計算になります。
岐阜市の上乗せは、ソフトピアジャパンの補助を受けていることが条件です。そのため、使う順番は、アドバイザーの助言で入れるものを決め、ソフトピアジャパンの補助に申し込み、交付を受けたうえで岐阜市に申請する、という流れになります。岐阜市の申請期限は2027年2月26日ですが、ソフトピアジャパン側の手続きに時間がかかることを見込んで、早めに動き始めます。岐阜市・大垣市以外の市町にも独自の支援がある場合があるため、県のDX支援策ポータルで自社の所在地の制度を確かめておきます。
- ・1. アドバイザーの助言を受け、AIで何を変えるかを決める
- ・2. 入れるしくみの見積を取り、ソフトピアジャパンの補助に申し込む
- ・3. 交付を受けたあと、岐阜市の上乗せの補助を申請する(岐阜市の会社)
6. 国の補助金と、AI研修の助成金
岐阜の会社も、国の制度を同じ条件で使えます。規模の大きいしくみには国の補助金、社員にAIの使い方を身につけてもらう研修には国の助成金と、使い道で制度を分けて考えます。
| 制度 | 向いている使い道 | 主な内容 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 登録された既製のAIツールやITツールの導入 | 5万円〜450万円(業務プロセスの数による)・補助率1/2以内 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 自社の業務に合わせてつくるAIのしくみ | 上限は従業員数により750万円〜8,000万円・中小企業の補助率1/2 |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 業務に直結したAIの研修 | 中小企業は研修経費の75%と、研修中の賃金1人1時間1,000円 |
デジタル化・AI導入補助金は2026年度の1次締切が9月29日で、2次以降の日程は確認した時点で公表されていませんでした。省力化投資補助金の第8回は9月18日に受付が始まり、締切は公表されていませんでした。人材開発支援助成金は2026年度末までの時限措置で、2026年8月の改正により、職務に直接関係しない一般的な研修は対象から外れています。自社の書類を使って業務に直結した内容を学ぶ研修なら、引き続き対象になりえます。岐阜市の会社は、市のDX・IT研修事業の補助(1/2以内・年度内の上限5万円)も確かめておきます。
このほか岐阜県は、2026年度にロボットを導入する前の検証を支える補助金(上限200万円・中小企業は2/3以内)を新しく設け、9月30日まで募集していました。AIの画像認識を使った検査の自動化など、ロボットと組み合わせる取り組みを考えている会社は、次年度の募集を県の公式ページで確かめます。
7. AIを入れるときに気をつけること
AIの導入でつまずくのは、技術よりも使い方の決まりと、社内への広げ方です。試しに使った担当者だけが便利に使い、ほかの社員には広がらない、という形で止まってしまうことがよくあります。
- 道具だけを入れ、使い方は各自に任せる
- 入れてよい情報の決まりがなく、使うのをためらう
- 試した担当者だけが使い、ほかの社員には広がらない
- 自社の書類で、使う場面と手順を決める
- 入れてよい情報と、確かめ方の決まりをつくる
- 研修で使える人を増やし、うまい使い方を共有する
- ・AIが出した結果は、必ず人が確かめてから使う
- ・取引先から預かった情報を入れるときの決まりを、先に決めておく
- ・使い方の見本は、一般的な例ではなく自社の書類でつくる
- ・うまくいった使い方は、手順として残し、社内で共有する
東海DX伴走室は、岐阜・大垣・各務原・多治見をはじめ岐阜県内の会社へ伺い、AIを使う業務の洗い出しから、自社の書類を使った研修、しくみの開発、使い始めてからの手直しまでを一緒に進めています。ソフトピアジャパンのアドバイザーの助言で方針を固め、その後の開発や研修をお手伝いする形もとれます。
