FAX受注をやめられない会社の効率化、現実的な3つの進め方
- 公式情報の確認日
- ✓FAXの受注は、自社だけの判断ではやめられない。やめる前に、紙に出さずに受けるところから始める
- ✓取引先を「切り替えられる先」「当面FAXの先」に分け、受け口を取引先ごとに変えていく
- ✓メールやWebでの受注に切り替えると、受け取った注文書をデータのまま保存する決まりがかかる
1. FAXの受注が残り続ける理由
メールやWebでの受発注が広がっても、製造業や建設業ではFAXで注文を受ける会社がまだ少なくありません。受注の担当者は、FAXの機械から出てきた紙を集め、仕分けて、販売管理の画面に打ち込み、控えを綴じる作業を毎日続けています。やめたいと思っていても、やめられない事情は自社の中だけにあるわけではありません。
| どこの事情か | よくある事情 | 進め方の手がかり |
|---|---|---|
| 取引先 | 発注の担当者がFAXに慣れていて、やり方を変えたくない | 取引先の手間が増えない受け口を用意する |
| 取引先 | 取引先の社内のしくみから、FAXで出す流れになっている | 当面はFAXのまま受け、自社の側で手間を減らす |
| 自社 | FAXの紙に書き込みや押印をして、社内で回している | 紙で回している理由を先に整理する |
| 自社 | 受注の担当者しか、取引先ごとの癖を知らない | 取引先ごとの決まりを書き出してしくみに持たせる |
取引先の事情でFAXが残っているなら、自社から「今日からFAXは受けません」とは言えません。一方で、自社の中の事情でFAXの紙が必要になっているなら、それは自社の判断で変えられます。どちらの事情なのかを分けて考えると、手を付けられるところが見えてきます。実際には、1社の取引先の中に両方の事情が混ざっていることもあるため、取引先ごとに書き出してみるのが近道です。
2. いきなりやめると、何が起きるか
取引先に一斉に「これからはWebで発注してください」と頼むと、慣れない取引先の注文が遅れたり、電話での注文が増えたりして、かえって受注の担当者の手間が増えることがあります。注文を出しにくくなった取引先が、ほかの仕入れ先に注文を回してしまうおそれもあります。受注の入り口は売上の入り口でもあるため、変えるときは取引先の手間を先に考える必要があります。
- ・慣れない発注方法で、取引先の注文が遅れる
- ・FAXの代わりに電話の注文が増え、聞き取りの誤りが起きる
- ・発注しにくくなった取引先が、ほかの仕入れ先に注文を回す
- ・受注の担当者が、新しい方法と古い方法の両方を見ることになる
そのため、現実的な進め方は、FAXを残したまま自社の作業を減らすことと、切り替えられる取引先から少しずつ受け口を変えていくことの組み合わせになります。次の3つの進め方は、取引先の協力が要らないものから、協力が要るものの順に並べています。
- 01紙に出さずに受けるFAXを画像のまま受け取り、1か所に集める。取引先の協力は要らない
- 02読み取って入力を減らす届いた画像から注文の内容を読み取り、確かめて登録する
- 03受け口を変えていく切り替えられる取引先から、メールやWebでの受注へ移す
3. 進め方1:FAXを紙に出さずに受ける
まず手を付けやすいのが、FAXを紙に印刷せず、画像のファイルとして受け取る形に変えることです。複合機やFAXのサービスの多くには、受け取ったFAXを印刷せずにフォルダやメールに送る設定があります。取引先から見れば、これまでどおりFAXを送るだけなので、何も変わりません。
- FAXの機械から紙が出てくるのを待ち、取りに行く
- 紙を担当者ごとに仕分けて、机に置く
- 控えをファイルに綴じ、探すときは棚を開ける
- FAXは画像のまま、決めたフォルダに届く
- 取引先ごと・担当者ごとに、画面で振り分ける
- 控えは画像のまま残り、取引先や日付で探せる
紙に出さなくなるだけで、紙を取りに行く、仕分ける、綴じる、探すといった作業がなくなります。受注の担当者が外出していても、画面から届いた注文を確かめられるようになります。FAXの機械の前に人が張り付いている必要もなくなり、受注の仕事を複数の人で分けやすくなります。紙に出してスキャンし直す流れと比べて、画像の質も落ちないため、次の読み取りの出来も良くなります。
紙に書き込みや押印をして社内で回している場合は、その書き込みが何のためにあるかを先に整理します。「受けた」「在庫を確かめた」「手配した」といった進み具合の印であれば、画面の上で状態を切り替える形に置き換えられます。
4. 進め方2:届いたFAXを読み取って、打ち込みを減らす
画像で受け取れるようになったら、次は画像から注文の内容を読み取り、販売管理や生産管理の画面に入れる作業を減らします。生成AIを組み込んだ読み取りでは、取引先ごとに書式が違っていても、品番や数量、納期といった項目を見つけられるようになっています。読み取った内容は人が確かめてから登録する流れにし、読み違いがそのまま手配に響かないようにします。
- ・読み取りに向くもの:パソコンで作った注文書を送ってくる取引先
- ・工夫が要るもの:かすれや傾きが多いFAX、手書きの書き足しが多い注文書
- ・読み取りの前にそろえたいもの:取引先の品番と自社の品番の対応
読み取りのしくみの組み立て方や、読み違いを防ぐ確認の画面については、注文書の自動入力を扱った別の記事で詳しく整理しています。FAXの受注で押さえておきたいのは、読み取りを入れる前に進め方1を済ませておくことです。紙に出してからスキャンし直す流れのままだと、画像の質が落ち、読み取りの出来も下がります。
5. 受けた注文の進み具合を、みんなで見られるようにする
FAXの受注で困りごとになりやすいのが、受けた注文が今どこまで進んでいるかが、受注の担当者にしかわからないことです。紙の注文書が担当者の机にあるうちは、ほかの人は中身も進み具合も見られません。担当者が休んだ日に取引先から納期の問い合わせが来ると、机の上の紙を探すところから始めることになります。
| 状態 | 意味 | 次に動く人 |
|---|---|---|
| 受付 | FAXやメールで注文が届いた | 受注の担当者 |
| 確認済み | 中身を確かめ、販売管理に登録した | 生産や手配の担当者 |
| 手配済み | 材料や外注の手配、生産の予定が決まった | 出荷の担当者 |
| 要確認 | 品番や納期が読めない、在庫が足りないなど、取引先に確かめることがある | 受注の担当者 |
状態を画面で切り替える形にしておけば、受注の担当者でなくても、どの注文がどこで止まっているかが一覧でわかります。取引先からの問い合わせにも、画面を見れば答えられるようになります。「要確認」のまま日が経っている注文に印が出るようにしておくと、確かめ忘れも防げます。この一覧は、あとで受け口がメールやWebに増えたときにも、そのまま全部の注文をまとめる場所として使えます。
6. 進め方3:取引先ごとに、受け口を変えていく
FAXそのものを減らすには、取引先に発注の方法を変えてもらう必要があります。ここで一律に切り替えを頼むのではなく、取引先を、発注の量と切り替えやすさで分けて考えます。取引先ごとに合った受け口を用意すれば、取引先の手間を増やさずに、FAXの枚数を少しずつ減らしていけます。
| 取引先のようす | 合った受け口 | 取引先の手間 |
|---|---|---|
| 社内のしくみから注文書のファイルを出せる | メールでPDFやファイルを受け取る | 送り先をFAXからメールに変えるだけ |
| 発注の量が多く、品目が決まっている | Webの発注画面で、品目と数量を選んでもらう | 最初に使い方を覚えてもらう |
| 発注の量が少なく、FAXに慣れている | 当面はFAXのまま受ける | 変わらない |
| 電話とFAXを組み合わせて発注してくる | FAXのまま受け、電話の内容も画面に残す | 変わらない |
切り替えを頼むときは、取引先にとっての良さを添えると受け入れてもらいやすくなります。たとえば、Webの発注画面なら注文を受けた時点で受付の知らせが届く、在庫や納期の目安がすぐわかる、といった点です。送り先をメールに変えるだけで済む取引先なら、手間はほとんど増えません。反対に、発注の量が少ない取引先にWebの画面を覚えてもらうのは、取引先にとって手間のほうが大きくなりがちです。そうした取引先は無理に切り替えず、FAXのまま受けて自社の側で手間を減らすほうが、お互いにとって負担の少ない形になります。
7. メールやWebに切り替えるときの保存の決まり
FAXからメールやWebでの受注に切り替えると、受け取った注文書の保存の決まりが変わる点にも気をつけます。国税庁の説明では、電子帳簿保存法の「電子取引」は、注文書や見積書などに書かれる取引の情報を電子でやり取りする取引をいい、電子メールの添付ファイルやインターネット上のサイトを通じたやり取りが含まれます。電子取引をした場合は、一定の要件の下で、その情報をデータのまま保存しなければならないとされています。
| 受け口 | 保存の決まりとのかかわり |
|---|---|
| メールの添付ファイル | 電子取引に含まれる。受け取ったデータを、一定の要件の下で保存する |
| インターネット上の発注画面 | 電子取引に含まれる。やり取りした取引の情報を、一定の要件の下で保存する |
| 紙で受け取った書類 | スキャナで読み取り、一定の要件の下でデータの保存に代えることができる(選べる制度) |
メールで受けた注文書を印刷して紙で綴じる流れを続けていると、元のデータの保存が抜けるおそれがあります。受け口を切り替えるときは、受け取ったファイルやデータを決まった場所に残す流れも一緒につくっておきます。FAXの受信をどう扱うかも含めて、保存の要件の細かいところは顧問の税理士と確かめておくのが確実です。
8. 取引先への頼み方と、進める順番
受け口の切り替えは、取引先との関係を大事にしながら、何か月かかけて進めるものです。受注の担当者は取引先ごとの事情をよく知っているため、どの取引先から頼むかは担当者と一緒に決めます。
- 1段階目FAXを画像で受け取る設定にし、届いた注文を1つの画面に集める
- 2段階目届いた画像から注文の内容を読み取り、確かめて登録する流れをつくる
- 3段階目注文書のファイルを出せる取引先に、メールでの送付を頼む
- 4段階目発注の多い取引先に、Webの発注画面を使ってもらう
頼むときは、取引先の発注の担当者が困らないよう、使い方を1枚にまとめて渡し、しばらくはFAXでも受ける期間を設けます。切り替えた取引先の注文が問題なく届くことを確かめてから、次の取引先に広げます。費用は、受け口をいくつ用意するか、今の販売管理とどうつなぐかで変わります。国のデジタル化・AI導入補助金(通常枠)は5万〜450万円・補助率1/2以内、自社に合わせてつくる場合に向く中小企業省力化投資補助金(一般型)は、従業員数により上限750万〜8,000万円・中小企業は1/2です(中小企業基盤整備機構の公式サイト・2026年9月25日確認)。どちらも交付の決定より前の契約や発注は対象になりません。
