注文書の自動入力はAIでどこまでできる?FAXで読める書類と難しい書類
- 公式情報の確認日
- ✓AIが担うのは「読み取って項目に分ける」まで。確かめて登録するのは人の仕事として残す
- ✓読み取りの出来は、書類の書式よりも、文字のかすれや手書きの量で大きく変わる
- ✓最初は取引先を絞って試し、読み取りの様子を見てから広げるのが確実
1. 注文書の自動入力で、AIが担うところ
毎朝FAXやメールで届く注文書を、販売管理や生産管理の画面へ1件ずつ打ち込む。製造業の受注担当や建設業の事務では、今も多くの会社で続いている作業です。打ち込みそのものは単純でも、件数が多い日は午前中がこの作業で埋まり、担当者が休むと受注の処理が止まってしまいます。取引先ごとに書式が違い、品番や数量の並ぶ位置もばらばらなため、これまでの読み取りソフトでは取引先ごとに設定を作る必要がありました。生成AIを組み込んだ読み取りでは、書式が違っていても「品番」「数量」「納期」といった項目を文脈から見つけられるようになり、自動入力の対象を広げやすくなっています。
- 01書類を受け取るFAX・PDF・メールを1か所に集める
- 02AIが読み取る品番・数量・納期などを項目に分ける
- 03人が確かめる印の付いた箇所だけを見る
- 04システムに登録販売管理・生産管理へ取り込む
ここで大事なのは、AIに最後まで任せきらないことです。数量の桁や納期の日付を1つ読み違えると、そのまま製造や手配に響きます。読み取りと項目分けはAIが行い、人は確かめて「登録」を押す。この役割分担にすると、打ち込む仕事が確かめる仕事に変わり、作業時間を減らしながら誤りも防げます。
- ・AIの役割:読み取り、項目への振り分け、不確かな箇所への印付け
- ・人の役割:印の付いた箇所の確認、登録の判断
- ・システムの役割:確認済みのデータを販売管理・生産管理へ取り込む
2. 読み取りやすい書類、難しい書類
読み取りの出来は、書式の違いよりも、書類そのものの状態で大きく変わります。パソコンで作られてPDFで届く注文書は、文字がはっきりしているため読み取りやすい書類です。一方、FAXを何度も経由してかすれた書類や、手書きで数量を書き足した書類は、読み違いが起きやすくなります。
| 書類の状態 | 読み取り | あらかじめの対策 |
|---|---|---|
| パソコンで作ったPDF | 読み取りやすい | 特になし |
| FAXで届いた印刷の書類 | おおむね読める | FAXを画像で受け取る設定にする |
| かすれ・傾きのあるFAX | 読み違いが起きやすい | 取引先にPDFでの送付を相談する |
| 手書きの書き足しがある書類 | 読み違いが起きやすい | 手書き部分に印が付く設計にする |
難しい書類があるからといって、自動入力をあきらめる必要はありません。取引先の中でPDFで送ってくれるところから始めたり、FAXを紙に印刷せず画像のまま受け取る設定に変えたりするだけでも、読み取りの出来は上がります。紙で受け取って印刷し、それをスキャンし直す流れは、画質を落とす原因になります。
3. 製造業と建設業で、読み取る書類の違い
同じ「書類の自動入力」でも、製造業と建設業では扱う書類の種類が違います。製造業では、取引先から届く注文書のほかに、内示や納期の変更連絡、納品書との突き合わせが加わることが多くあります。品番の体系が取引先ごとに違うため、読み取った品番を自社の品番に置き換える作業も、自動入力の中に組み込むと効果が大きくなります。
- ・製造業:注文書、内示・納期の変更連絡、納品書、取引先ごとの品番の対応表
- ・建設業:注文書と注文請書、請求書、作業員名簿などの安全書類、協力会社から届く見積書
- ・共通:取引先の名前・日付・金額・数量など、必ず確かめたい項目
建設業では、協力会社から集める安全書類の量が多く、現場ごとに同じ内容を何度も書き写す作業が残りがちです。作業員の名前や資格、保険の加入状況といった項目は、一度読み取って台帳にためておけば、次の現場の書類をつくるときに使い回せます。注文書の自動入力から始めて、安全書類へ広げていく順番をとる会社もあります。
4. 読み違いを防ぐのは「確かめる場所がわかる」しくみ
自動入力でいちばん避けたいのは、読み違いに気づかないまま登録してしまうことです。そこで、AIが自信を持てなかった箇所に印を付け、人がその箇所だけを見れば済む画面にします。全部を読み直す必要がなくなるため、確認の手間は大きく減ります。
- 届いた注文書を印刷して、画面の横に置く
- 品番・数量・納期を1件ずつ打ち込む
- 別の人が読み合わせて、打ち間違いを探す
- 読み取った内容と元の書類が並んで表示される
- 印の付いた箇所だけを確かめる
- 確かめたら「登録」を押して終わる
読み合わせの工程がなくなることも、見逃せない変化です。2人で行っていた確認が1人で済むようになれば、受注の処理が担当者の休みで止まることも減ります。直した内容をためておけば、同じ取引先の書類で同じ読み違いが起きにくくなるように調整することもできます。
5. 読み取った品番を、自社の品番に置き換える
製造業の注文書でつまずきやすいのが、品番の置き換えです。取引先は自社の品番で注文してくるため、読み取った品番をそのまま登録しても、社内の生産管理では通じません。これまでは担当者が対応表を見ながら頭の中で置き換えていた作業で、自動入力にするなら、この置き換えもしくみの中に入れる必要があります。
| 持たせるもの | 中身 | 置き換えられないとき |
|---|---|---|
| 取引先ごとの対応表 | 取引先の品番と、自社の品番の組み合わせ | 人が選ぶ画面を出し、選んだ結果を対応表に足す |
| 品名での照合 | 品番が書かれていない注文書のための、品名の表記ゆれの対応 | 候補を並べて、人が選ぶ |
| 単位の換算 | 箱・ケース・個など、取引先ごとに違う単位 | 換算できない単位には印を付ける |
対応表は、最初から完璧につくる必要はありません。置き換えられなかった品番を人が選ぶたびに、その組み合わせを対応表に足していけば、使うほど置き換えられる品番が増えていきます。担当者の頭の中にあった知識が、しくみの中にたまっていく形です。
6. 導入の前に確かめておくこと
自動入力のしくみを入れる前に、社内で確かめておきたいことが3つあります。1つめは、1か月にどのくらいの枚数の注文書が届いているか。2つめは、読み取った内容をどのシステムに入れるか。3つめは、注文書のデータをAIのサービスに送ってよいかという、社内の情報の扱いです。
- ・1か月に届く注文書の枚数と、取引先の数
- ・取り込む先のシステム(販売管理・生産管理・Excelなど)
- ・AIのサービスに送ってよい情報の範囲(学習に使われない設定か)
枚数と取引先の数がわかると、どの取引先から始めると効果が大きいかが見えてきます。取り込む先のシステムが決まっていれば、画面の入れ替えをせずに今のシステムへつなぐ形がとれます。情報の扱いについては、学習に使われない設定の契約を使い、送る範囲を必要なものに絞るのが基本です。
7. 費用と、使える補助金
費用は、読み取る書類の種類と、つなぐシステムによって変わります。読み取りのサービスの利用料は、読み取る枚数に応じて毎月かかるものが多く、初めにつくる確認の画面やシステムへのつなぎ込みの費用とは分けて考える必要があります。登録された既製のツールを使う場合と、自社の書類とシステムに合わせてつくる場合で、使える補助金も分かれます。
| 制度 | 向いている場合 | 補助の額と補助率 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 事務局に登録された既製のツールを使う | 5万〜450万円・1/2以内 |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 自社の書類とシステムに合わせてつくる | 従業員数により750万〜8,000万円・中小企業は1/2 |
既製のツールで足りるか、自社に合わせてつくるべきかは、書類の種類と取り込む先のシステムで決まります。取引先の書式が限られていて、今の販売管理に取り込む口が用意されているなら、既製のツールで十分なこともあります。どちらの制度も、交付の決定より前に契約や発注をしたものは対象になりません。使いたい制度がある場合は、公募の時期から逆算して計画を立てる必要があります。県や市の補助金と組み合わせられる場合もあるため、地域の制度もあわせて確かめておくと安心です。
8. 小さく始める進め方
すべての取引先の注文書を一度に切り替えると、読み取りの様子を見る前に現場が混乱します。書類の多い取引先や、PDFで届く取引先から試し、読み取りの出来と確認の手間を見ながら広げていくのが確実です。
- 1段階目過去の注文書で試し読みをして、読み取りの出来を確かめる
- 2段階目PDFで届く取引先から、実際の受注で使い始める
- 3段階目FAXで届く取引先を、画像での受け取りに切り替えて加える
- 4段階目手書きの多い取引先は、印の付け方を調整してから加える
使い始めてからも、読み違いの多い取引先や項目は見つかります。そのたびに設定を直し、確認の画面を使いやすくしていくことで、自動入力は現場に定着します。東海DX伴走室では、試し読みから、今のシステムへのつなぎ込み、使い始めてからの手直しまでを一緒に進めています。
