名古屋市のデジタル補助金は事前相談が要件|相談先と準備する業務課題
- 公式情報の確認日
- ✓名古屋市の中小企業デジタル活用支援補助金は事前相談が要件で、通常枠・賃上げ枠は新事業支援センターか名古屋商工会議所、ロボット枠は新事業支援センターのみが相談先です。
- ✓2026年度は通常枠・賃上げ枠が6月1日で終了し、ロボット枠も9月30日16時必着で締め切られたため、今は次の公募を待つ時期です。
- ✓相談の前に、困っている業務・今のやり方・担当と時間・困る理由・変えたい姿の5つを、作業の単位で1枚に整理しておくと相談が具体的になります。
1. 名古屋市の中小企業デジタル活用支援補助金と、事前相談という要件
名古屋市(名古屋産業振興公社)の「中小企業デジタル活用支援補助金」は、市内の中小企業がデジタル技術を取り入れて生産性を上げる取り組みを後押しする制度です。枠は通常枠・賃上げ枠・ロボット枠の3つに分かれていて、ロボット枠はロボットの導入が対象です。補助率はどの枠も1/2です。
この補助金でまず押さえておきたいのは、申請の前に「事前相談」を受けることが要件になっている点です。見積を取り、申請書を書き上げてから窓口を探すのでは順番が逆になります。相談を経ていないと申請の条件を満たせないため、補助金を使うかどうか迷っている段階で、どこに相談するのか、相談で何を話すのかを知っておく必要があります。
| 枠 | 上限額・補助率 | 事前相談の相談先 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 100万円・1/2 | 名古屋市新事業支援センターか名古屋商工会議所 |
| 賃上げ枠 | 150万円・1/2 | 名古屋市新事業支援センターか名古屋商工会議所 |
| ロボット枠 | 500万円・1/2 | 名古屋市新事業支援センター(必須) |
枠ごとの上限額と相談先は表のとおりです。賃上げ枠に求められる細かな条件や、対象になる経費の範囲は、年度ごとの募集要項で示されます。この記事の内容は2026年度のものなので、次の公募の要項が出たら、社内の担当者と一緒に読み合わせてから動いてください。
2. 2026年度は通常枠・賃上げ枠とも6月1日で終了
2026年度の受付の状況を確認しておきます。通常枠と賃上げ枠は6月1日で終了しました。ロボット枠も9月30日16時必着が締切で、10月の今はすでに過ぎています。つまり今年度、この補助金で新しく申請できる枠は残っていません。これから使いたい会社は、次の公募を待つことになります。
- 2026年6月1日通常枠・賃上げ枠の受付が終了
- 2026年9月30日16時ロボット枠の締切(必着)
- 2026年10月(いま)次の公募を待つ期間。事前相談に持ち込む業務課題を社内で整理しておく
締切を過ぎたからといって、何もできないわけではありません。通常枠・賃上げ枠は6月1日に終わっており、年度の前半で受付が閉じたことになります。次の公募があったとしても、要項を見てから業務課題を考え始めたのでは、事前相談の予約、導入先への見積の依頼、社内の決裁が締切に間に合わないおそれがあります。公募が出ていない今の時期は、相談に持ち込む材料をつくる時間にあてられます。
3. 相談先の違い:新事業支援センターと名古屋商工会議所
事前相談の相談先は、枠によって違います。通常枠・賃上げ枠は、名古屋市新事業支援センターか名古屋商工会議所のどちらかで相談します。ロボット枠は、名古屋市新事業支援センターでの相談が必須です。ロボット枠を考えているのに商工会議所だけで相談を済ませてしまうと、要件を満たさないことになるため注意が必要です。
- ・通常枠・賃上げ枠を考えている:名古屋市新事業支援センター、または名古屋商工会議所
- ・ロボット枠を考えている:名古屋市新事業支援センターのみ
- ・どの枠にするか決めかねている:ロボットの導入が候補に入るなら、両方の枠を扱う名古屋市新事業支援センターで相談しておくと、相談先を選び直す手間が出にくい
通常枠・賃上げ枠であれば、どちらの窓口を選んでも事前相談の要件は満たせます。ふだんから経営や資金繰りで相談している窓口があれば、会社の事情を一から説明しなくて済むぶん、話を早く本題に進められます。一方で、製造ラインへのロボット導入や、検査工程の自動化のように設備と一体になった取り組みを考えているなら、ロボット枠の相談先である新事業支援センターで、枠選びも含めて相談する方が話が一度で済みます。
4. 事前相談の前に社内で整理しておく5つの業務課題
事前相談は、申請書の書き方を教わる場というより、「何に困っていて、デジタル技術で何を変えたいのか」を相談員と一緒に確かめる場として使うと実りが大きくなります。ここがぼんやりしたままだと、話が「どのソフトを買えばよいか」に流れてしまい、自社に合うかどうかの判断がつかないまま帰ることになります。相談の前に、次の5つを社内で書き出してください。
| 整理する項目 | 書き出す中身 | 製造業・建設業での例 |
|---|---|---|
| 困っている業務 | 手間がかかっている作業の名前 | 受注の入力、日報の集計、見積の作成、安全書類の作成 |
| 今のやり方 | 紙・Excel・FAXなど、使っている道具と流れ | FAXで届いた注文書を見ながら販売管理に打ち直す |
| 担当と時間 | 誰が、週や月にどれくらいの時間をかけているか | 事務の担当者が毎朝、受注の入力にかかりきりになる |
| 困る理由 | ミス・遅れ・残業・特定の人しかできない、など | 打ち間違いで誤出荷が出る、担当者が休むと止まる |
| 変えたい姿 | 導入後に誰の作業がどう変わるか | 注文書を読み取らせ、人は確認だけにする |
業務課題は「作業の単位」で書く
「DXを進めたい」「業務を効率化したい」という言い方では、相談員も答えようがありません。「現場から紙で上がってくる日報を、事務所で毎日Excelに打ち直している」「見積のたびに過去の見積書を棚から探している」のように、誰が、何を見て、どこに入力しているかまで書くと、どんな道具が合いそうか、どの枠の考え方に近いかを相談員が判断しやすくなります。
かかっている時間は社内の実測でよい
担当者の作業時間は、厳密な調査をしなくても構いません。1週間ほど、その作業にかかった時間をメモ用紙に書いてもらえば、相談で話す材料としては足ります。大事なのは「なんとなく大変」ではなく、担当者の名前と、おおよその時間と、困る場面がそろっていることです。
- ・記録してもらう人:その作業をいちばん多く担当している人
- ・記録する中身:作業の名前、始めた時刻と終えた時刻、やり直しや問い合わせが起きたかどうか
- ・記録の期間:月末の締めや繁忙期が入るなら、その時期も含める
浮いた時間を何に回すかを決めておく
賃上げ枠が設けられていることからも分かるように、この補助金は生産性を上げた先の、働く人への還元にもつながる制度です。入力作業が確認だけになったら、その人に何を任せるのか。現場監督の事務作業が減ったら、現場の段取りや若手の指導に時間を回せるのか。経営者として一言で言えるようにしておくと、通常枠と賃上げ枠のどちらを目指すかの相談が具体的になります。
5. 業務課題を1枚にまとめる手順
5つの項目が分かっても、実際に書き出そうとすると、部署ごとに言うことが違ってまとまらないことがよくあります。工場長は段取り替えの記録を、工事部長は日報と写真の整理を、経理は請求書の入力を挙げる、といった具合です。次の流れで進めると、相談に持っていける1枚になります。
- 01困りごとを集める工場長・工事部長・総務や経理の責任者に、手間の多い作業を3つずつ挙げてもらう
- 02作業の流れを書き出す挙がった作業ごとに、どの書類を見て、誰が、どこに入力・転記しているかを順に書く
- 03時間と困る理由を添える担当者のメモをもとに、かかっている時間と、ミスや遅れなど困る場面を書き足す
- 04優先する業務を1つに絞る毎日起きる、ミスが多い、特定の人しかできない、の3つに当てはまるものを先にする
- 05変えたい姿を一文にする「注文書を読み取らせ、人は確認だけにする」のように、導入後の作業を一文で書く
- 061枚にまとめて相談に持っていく優先する業務を上に、ほかの候補を下に並べ、相談員と一緒に見られる形にする
優先する業務を1つに絞るのは、補助金の申請では「何のために、何を入れて、どう変わるのか」の筋が通っていることが求められるからです。困りごとを全部並べたまま相談すると、時間内に話がまとまらず、2回目の相談が必要になることもあります。ほかの候補は捨てるのではなく、次の段階で取り組む業務として1枚の下の方に残しておけば、国や県の制度を検討するときの材料にもなります。
- 「DXを進めたいが、何から手をつければよいか分からない」と切り出す
- 「おすすめのソフトはどれか」から話が始まる
- 部署ごとの困りごとがばらばらで、どれを先にするか決まっていない
- かかっている時間を聞かれても答えられない
- 「FAXの注文書を毎朝、販売管理に打ち直している」と作業の単位で伝える
- 担当者・かかっている時間・ミスの影響を添えて説明できる
- 一番先に変えたい業務が1つに絞られている
- 導入後に浮いた時間を何に回すかまで話せる
6. 次の公募までに確かめておきたい国・県の制度との関係
名古屋市の補助金が次の公募を待っている間も、国や愛知県の制度はそれぞれ別の日程で動いています。業務課題の整理ができていれば、どの制度に当てはまりそうかを比べることもできます。名古屋市内の会社が目にすることの多い制度の、2026年度の状況は次のとおりです。
- ・デジタル化・AI導入補助金(通常枠):事務局に登録されたITツールの導入が対象。1次締切は2026年9月29日17時で、2次以降は事務局の発表を確認。事務局に登録された支援事業者と一緒に申請する
- ・中小企業省力化投資補助金(一般型):業務に合わせてつくる設備・システムが対象。第8回は2026年9月18日に受付が始まり、締切は事務局の発表を確認
- ・愛知県「中小企業デジタル化・DX促進補助金」:2026年度は5月12日で終了。あいち産業DX推進コンソーシアムへの加入が要件
既製のソフトやクラウドサービスを入れるのか、自社の業務に合わせたしくみをつくるのか、ロボットのような設備を入れるのかで、合う制度は変わります。どの道具にするかを先に決めるのではなく、整理した業務課題を出発点にして、制度の対象と見比べる順番で考えると迷いが減ります。同じ取り組みに複数の補助金を重ねて使えるかどうかは制度ごとに決まりがあるため、事前相談の場で確かめておくと安心です。
7. 事前相談に持っていくものと、その場で聞いておくこと
相談の時間は限られています。持っていくものと聞くことを決めておけば、1回の相談で次の一手まで見えてきます。社外の人に見せる資料になるので、取引先の名前や単価など社外に出せない情報は、黒く塗るか見本の値に置き換えてから持っていきます。
持っていくもの
- ・業務課題をまとめた1枚(優先する業務と、ほかの候補)
- ・今使っている帳票やExcelの画面の見本(注文書・日報・点検表など、社外秘を消したもの)
- ・検討している導入の中身と、見積があればその写し
- ・会社の概要(事業内容、従業員数、工場や事業所の場所)
その場で聞いておくこと
- ・自社の取り組みは、通常枠・賃上げ枠・ロボット枠のどれに近いか
- ・次の公募に向けて、要項が出る前から準備しておけること
- ・対象になりそうな経費と、対象になりにくい経費の考え方
- ・国や愛知県の制度と比べたとき、どれから当たるのがよさそうか
相談から戻ったら、言われたことをその日のうちに1枚に書き足しておきます。「優先する業務はこれでよい」「この経費は別の制度の方が合う」といった中身を残しておけば、次の公募の要項が出たときに、相談の内容と照らし合わせてすぐに動けます。担当者が替わっても経緯が分かるよう、1枚は総務や経営企画など決まった場所に保管しておくと引き継ぎにも困りません。
