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業務システムを外注する前に決めること――見積の比べ方と引き継ぎ

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この記事の要点
  • ✓外注の前に、困りごと・範囲・社内の窓口を決め、依頼の資料にまとめて各社に同じ条件で渡す
  • ✓見積は総額ではなく、含まれる作業・前提・使い始めてからの費用をそろえて比べる
  • ✓ソースコード・仕様書・データの書き出し方を受け取れるかを、契約の前に確かめる

1. 外注でつまずきやすいところ

受注や生産管理、工事の原価管理など、自社の業務に合わせたしくみを社外の開発会社に頼む会社は少なくありません。社内にシステムをつくれる人がいない中小企業にとって、外注は現実的な選択です。ただ、はじめて頼む場合は、何をどう伝えればよいか、出てきた見積が高いのか安いのかがわからないまま進んでしまいがちです。

つまずきは、大きく3つの場面で起きます。依頼の段階では、やりたいことが社内で固まっていないまま相談し、会社ごとに違う前提の見積が出てきて比べられなくなります。開発の段階では、途中で要望が増えて追加の費用がかさみます。使い始めたあとは、直したいところが出ても、つくった会社にしか直せず、費用や対応の早さを選べなくなります。

表1 外注でつまずきやすい場面と、先に決めておくこと
場面起きやすいこと先に決めておくこと
依頼会社ごとに前提が違い、見積を比べられない困りごと・範囲・条件を資料にまとめる
開発途中で要望が増え、追加の費用がかさむ最初に入れる機能と、あとに回す機能
使い始めたあとつくった会社にしか直せない受け取るもの(仕様書・ソースコードなど)
出典:東海DX伴走室編集部の整理

どの場面のつまずきも、開発会社の腕の良し悪しより、頼む側の準備で防げるものがほとんどです。開発会社は、渡された情報と、打ち合わせで聞いた話をもとにしくみを組み立てます。頼む側が何を大事にしているかが伝わっていないと、どれほど腕の良い会社でも、現場の使い方とずれたものができあがります。この記事では、依頼、見積、契約、開発、引き継ぎの順に、頼む側が決めておくことを整理します。

2. 依頼の前に社内で決めること

開発会社に相談する前に、社内で決めておくことは多くありません。ただし、ここが決まっていないと、どの会社に相談しても話が広がり、見積も大きくなります。システムの専門用語で書く必要はなく、ふだんの言葉で書き出せば十分です。

  • ・何に困っているか(どの作業に、誰の、どれくらいの手間がかかっているか)
  • ・しくみに入れる業務の範囲(受注から請求までか、見積だけか)
  • ・使う人と人数(事務所だけか、現場や営業も使うか)
  • ・今使っているExcelやAccess、紙の帳票のうち、残すものと移すもの
  • ・社内の窓口になる担当者と、使い始めたい時期
  • ・かけられる予算のおおよその幅と、補助金を使うかどうか

とくに「何に困っているか」は、機能の一覧よりも先に書きます。機能の一覧から始めると、あれも欲しい、これも欲しいと項目が増え、本当に手間を減らしたい作業が埋もれてしまいます。困りごとから書けば、開発会社のほうから、その困りごとを減らす方法をいくつか提案してもらえます。予算の幅を伝えるのをためらう会社もありますが、幅がわかれば、開発会社は範囲の広さを予算に合わせて提案できます。

3. 依頼の資料に書くこと

社内で決めたことは、依頼の資料にまとめて、相談するすべての会社に同じものを渡します。同じ資料を渡すことで、出てくる見積の前提がそろい、あとで比べやすくなります。資料は何十ページもの仕様書である必要はなく、数ページで足ります。今使っている帳票や画面の写し、Excelの表の見本を添えると、話が早く進みます。

表2 依頼の資料に書く項目
項目書くこと添えるとよいもの
会社と業務の説明何をつくり、誰に売っているか。業務の大まかな流れ業務の流れを書いた図(手書きで可)
困りごとどの作業に、どれくらいの手間がかかっているか今の手順を書いたメモ
範囲しくみに入れる業務と、入れない業務今使っている帳票・Excelの見本
条件使う人数、使う場所、使い始めたい時期社内のパソコンや通信の状況
見積でほしいもの作業の内訳、前提、使い始めてからの費用見積の書式(そろえたい場合)
出典:東海DX伴走室編集部の整理
注意見本として渡す帳票やExcelには、取引先の名前や単価が入っていることがあります。相談の段階では、秘密を守る約束を交わしてから渡すか、名前や金額を伏せた見本を用意します。

資料を渡したあと、開発会社から質問が返ってくることがあります。質問の中身は、その会社がどこまで業務を理解しようとしているかを知る手がかりになります。答えた内容は資料に書き足し、ほかの会社にも同じ情報を渡しておくと、前提がずれません。

4. 見積の比べ方

見積が出そろったら、総額だけを並べて比べないことが肝心です。同じ資料を渡しても、含まれている作業や前提は会社によって違います。ある会社はデータの移行や操作の説明を含めていて、別の会社はそれを別料金にしている、ということはよくあります。総額の安い見積が、あとから追加の費用で逆転することもあります。

表3 見積を比べるときに確かめること
確かめること聞いておく質問
含まれる作業設計・開発・テスト・データの移行・操作の説明は、どこまで含まれるか
前提画面や帳票の数、使う人数など、見積の前提になっている条件は何か
要望が増えたとき開発の途中で要望が増えたら、どう決めて、いくらかかるか
使い始めてからの費用サーバーの費用、保守の費用、手直しの費用はそれぞれいくらか
体制誰が窓口で、誰が開発するか。社外にさらに頼む部分はあるか
受け取るもの仕様書・操作の説明・ソースコードは受け取れるか
出典:東海DX伴走室編集部の整理

使い始めてからの費用は、見積の中でいちばん見落とされやすい項目です。開発の費用は一度きりですが、サーバーや保守の費用は毎月かかり続けます。何年か使う前提で、開発費と月々の費用を足した金額で比べると、会社ごとの違いがはっきりします。見積の説明を聞くときは、窓口の担当者だけでなく、実際に開発する人と話せるかも確かめておくと、進め方の相性がわかります。

  • ・作業の内訳が「一式」だけで、何が含まれるかわからない
  • ・画面や帳票の数など、見積の前提が書かれていない
  • ・データの移行や操作の説明が、含まれるのか別料金なのかがはっきりしない
  • ・月々の費用が書かれていない、または「別途」とだけ書かれている

上のような見積が出てきても、その会社を外す理由にはなりません。質問して内訳を出してもらえば、ほかの会社と同じ物差しで比べられます。内訳の説明を頼んだときの答え方も、開発が始まってからのやりとりを想像する材料になります。

5. 契約で決めておくこと

契約書は開発会社のひな形で出てくることが多く、中身を細かく読まずに押印してしまいがちです。けれども、使い始めてから困ることの多くは、契約で決めていなかったことから起きます。次の点は、契約の前に書面で確かめておきます。判断に迷うところは、顧問の弁護士など専門家に見てもらうと安心です。

  • ・できあがったものの権利(ソースコードを自社で使い続けたり、ほかの会社に直してもらったりできるか)
  • ・検収のしかた(何を確かめたら完成とするか、確かめる期間はどれくらいか)
  • ・不具合の扱い(使い始めてから見つかった不具合を、いつまで無償で直してもらえるか)
  • ・保守の中身(月々の費用で、何をどこまでしてもらえるか)
  • ・契約が終わるときの扱い(データの書き出しと、サーバーの引き渡し)

なかでも、できあがったものの権利と、契約が終わるときの扱いは、あとから変えるのが難しい項目です。権利の扱いによっては、同じしくみを別の会社に直してもらうことができず、開発会社を選び直せなくなります。どちらが良い悪いではなく、自社がどうしたいかを決めてから契約に臨みます。

ポイント開発をいくつかの段階に分け、段階ごとに契約する方法もあります。最初は小さな範囲で頼み、進め方が合うと確かめてから次の段階を頼めば、合わなかったときの負担を抑えられます。

6. 開発中の進め方

契約のあとは、開発会社に任せきりにせず、社内の窓口が節目ごとに確かめます。とくに画面の案は、できあがってから直すより、案の段階で直すほうが手間も費用も少なく済みます。実際に使う現場の人にも画面を見てもらい、使いにくいところを早めに伝えます。

図1 業務システムを外注するときの流れ
  1. 01社内の整理困りごと・範囲・窓口を決め、依頼の資料をつくる
  2. 02相談と見積同じ資料を渡し、前提をそろえて比べる
  3. 03契約権利・検収・保守・終わるときの扱いを確かめる
  4. 04設計と画面の確認現場の人と一緒に画面の案を確かめる
  5. 05開発と移行データを移し、数字を突き合わせる
  6. 06使い始めと引き継ぎ仕様書・操作の説明を受け取り、手直しを続ける

開発の途中で新しい要望が出てきたら、その場で足すのではなく、いったん一覧に書き留めます。使い始めたあとに本当に必要かを見てから足すほうが、費用も期間も抑えられます。最初から全部を入れようとすると、使い始める時期が遅れ、そのあいだは今の手間が続きます。

  • ・画面の案が出たら、実際に使う人に見てもらい、入れにくい項目を伝える
  • ・帳票の見本が出たら、取引先に出すものは書式と数字の並びを確かめる
  • ・テストの段階では、実際の過去のデータで試し、結果を今の帳票と比べる

7. 引き継ぎで受け取るもの

しくみを使い始めるときに、何を受け取っておくかで、数年後の選択肢が変わります。開発会社の担当者が替わったり、会社どうしの取引が終わったりしても、受け取ったものがあれば、別の会社に引き継いで直してもらえます。

図2 引き継ぎで受け取るものの違い
導入前
  • できあがったしくみだけを受け取る
  • 直したいときは、つくった会社に頼むしかない
  • データの書き出し方を知らず、ほかに移せない
導入後
  • 仕様書・操作の説明・ソースコードも受け取る
  • ほかの会社にも、見積を取って直してもらえる
  • データの書き出し方がわかり、いつでも移せる
  • ・仕様書(画面・帳票・計算の決まり・データの項目の説明)
  • ・操作の説明(使う人向けと、管理する人向け)
  • ・ソースコードと、それを動かす手順
  • ・サーバーや各種サービスの契約の情報と、管理用のアカウント
  • ・データの書き出し方

受け取ったものは、社内の決まった場所にまとめて保管し、どこにあるかを窓口の担当者以外にも伝えておきます。管理用のアカウントを開発会社だけが持っている状態だと、サーバーの契約が切れたときに気づけないことがあります。自社の名義で契約しておくと、開発会社を替えるときも手続きが少なく済みます。

8. 補助金を使うときの順番

業務に合わせてつくるしくみには、中小企業省力化投資補助金(一般型)が使える場合があります。上限は従業員数によって750万円から8,000万円で、中小企業の補助率は1/2です。この補助金は、交付の決定より前に契約や発注をしたものは対象になりません。外注の段取りと補助金の段取りの順番を間違えると、補助を受けられなくなります。

図3 補助金を使って外注するときの順番
  1. 1. 社内の整理と見積依頼の資料をつくり、見積を取る(まだ契約しない)
  2. 2. 申請見積をもとに事業計画をつくって申請する
  3. 3. 交付の決定決定の通知を受けてから、契約と発注をする
  4. 4. 開発と支払い開発を進め、決められた期間内に支払いを終える
  5. 5. 実績の報告報告を経て補助金が支払われる。その後も目標の達成状況を報告する
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)」公式ページ(2026年9月25日確認)

第8回の公募は2026年9月18日に受付が始まり、確認した時点で締切は公表されていませんでした。応募の前には、公式ページで最新の公募要領を確かめます。東海DX伴走室では、困りごとの整理と依頼の資料づくりから、補助金に合う計画づくり、開発と移行、使い始めてからの手直しまでを一緒に進めています。仕様書と操作の説明、ソースコードもお渡しするので、ほかの会社に引き継ぐこともできます。

9. よくあるご質問

Q
見積は何社から取ればよいですか?
A
決まりはありませんが、同じ依頼の資料を渡して2〜3社から取ると、前提や作業の範囲の違いが見えやすくなります。
Q
依頼の資料は、専門用語で書かないといけませんか?
A
いいえ。ふだんの言葉で、困りごとと今の手順を書けば十分です。帳票やExcelの見本を添えると伝わりやすくなります。
Q
社内にシステムに詳しい人がいなくても外注できますか?
A
できます。窓口の担当者に求められるのは、システムの知識よりも、業務の流れと現場の困りごとを知っていることです。画面の案を見て、使いやすいかどうかを判断できれば十分です。
Q
開発の途中で要望が増えたらどうなりますか?
A
契約で決めた範囲を超える要望は、追加の費用や期間がかかるのが一般的です。すぐに足さず一覧に書き留め、使い始めてから本当に必要かを見て決めると、費用を抑えられます。
Q
今の開発会社から、別の会社に替えられますか?
A
ソースコードや仕様書を受け取れるかどうかで変わります。まずは今の契約で、何を受け取れるかを確かめます。
編集部
この記事を書いた人
東海DX伴走室編集部
東海4県の製造業・建設業のDXを支援しています。制度の内容は、公開日時点の公的機関の資料をもとにしています。
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