はじめに
システムの要件を話し合っていると、部署ごとの要望が正面からぶつかる場面が必ず訪れます。現場は入力の手間を減らしたい。管理部門は記録を細かく残したい。情報システム部門は、作り込みを減らして保守しやすくしたい。どれも、それぞれの立場から見れば正しい要望です。
このとき、どちらの言い分が正しいかを議論し始めると、話はまず前に進みません。必要なのは、ぶつかっている中身を整理し、決められる形に変えることです。
ぶつかっているのは「要望」ではなく「前提」
要望どうしがぶつかって見えるとき、その奥では、たいてい前提がずれています。たとえば「入力項目を減らしたい」と「記録を細かく残したい」は、一見すると両立しません。しかし話を聞いていくと、記録が必要なのは一部の工程だけだった、ということがよくあります。
まずは、それぞれの要望について「なぜそれが必要なのか」「それがないと何が困るのか」を聞き取り、要望の裏にある目的と前提を書き出します。前提をそろえるだけで、対立そのものが消えることも少なくありません。
論点を「決められる問い」に言い換える
前提をそろえても残る対立は、選ぶべき問いとして言い換えます。「AさんとBさんのどちらが正しいか」ではなく、「この工程では、入力の手間と記録の細かさのどちらを優先するか」という形です。
問いの形にすると、選択肢と、それぞれを選んだときの影響を並べて示せるようになります。感情の対立が、判断の材料の話に変わります。
対立を解くのではなく、決められる問いに変える。それが論点の整理です。
判断の基準を、先にそろえておく
選択肢が並んでも、何を基準に選ぶかが決まっていなければ、議論は振り出しに戻ります。費用、業務への影響、導入までの期間、将来の拡張のしやすさ。プロジェクトとして何を重く見るのかを、論点を議論する前にそろえておくことが大切です。
- それぞれの要望の目的と、ないと困る理由を書き出したか
- 対立を「どちらを優先するか」という問いに言い換えたか
- 選択肢ごとの影響(費用・業務・期間)を並べたか
- 判断の基準と、決める人が決まっているか
決めたことを、記録に残す
最後に、何を、誰が、どの基準で決めたのかを記録に残します。記録がないと、後から別の人が同じ論点を持ち出したときに、また一から議論することになります。
部署間の対立は、プロジェクトがうまくいっていない兆しではなく、関係者が真剣に向き合っている証でもあります。整理の手順を持っておくことで、その熱量を前に進む力に変えられます。
