はじめに
「要件定義は3か月の予定だったのに、半年たっても終わらない」。大手企業のITプロジェクトで、よく伺うお悩みです。打ち合わせは毎週開かれ、資料も増えていく。それでも、要件が固まらない。
こうしたプロジェクトの多くは、技術ではなく進め方でつまずいています。ここでは、特に多い3つの原因を整理します。
原因1 目的と範囲が、言葉になっていない
「生産管理システムを刷新する」という目標はあっても、何のために、どこまでを変えるのかが、関係者のあいだでそろっていないことがあります。ある人は在庫の削減を、別の人は帳票の電子化を思い浮かべている。この状態で要望を集めると、話は広がる一方です。
目的と範囲は、1枚の紙に書ける程度の言葉にして、経営層を含めた関係者で合意しておく必要があります。「今回はやらないこと」を書いておくのも有効です。
原因2 決める人と、決め方が決まっていない
部署ごとの要望がぶつかったとき、誰が、どの場で、何を基準に決めるのか。これが決まっていないと、議論は毎回振り出しに戻ります。決めたはずのことが、別の会議で覆ることもあります。
論点ごとに決める人を決め、決める場(たとえばステアリングコミッティ)と判断の基準を、あらかじめ定めておくこと。会議の数を増やすより、こちらのほうがずっと効きます。
要件定義が長引くのは、話し合いが足りないからではなく、決め方が決まっていないから。
原因3 「要望」と「要件」が混ざっている
現場から集めた要望の一覧は、そのままでは要件ではありません。要望には、同じことを別の言葉で言っているもの、今の業務のやり方を前提にしたもの、費用に見合わないものが混ざっています。
要望の裏にある困りごとを確かめ、業務のあるべき姿に照らして、システムに求めることへ置き換える。この整理を飛ばして要望をすべて仕様に入れようとすると、要件はいつまでも膨らみ続けます。
- プロジェクトの目的を、関係者が同じ言葉で説明できない
- 要望の一覧が、会議のたびに増えている
- 「それは別の会議で決めます」が続いている
- 要件定義書の中身を、ベンダー以外の人が説明できない
立て直すときの、最初の一歩
止まりかけた要件定義を立て直すとき、私たちはまず、目的と範囲、決める人と決め方を1枚に書き出すところから始めます。そのうえで、集まった要望を困りごとの単位にまとめ直し、決めるべき論点を絞り込みます。
大がかりに見えますが、多くの場合、これだけで議論の向きが変わります。要件定義が長引いていると感じたら、まずはこの3つの点を見直してみてください。
